幻を夢見たい
「音!おかえりなさい。学校はどうだった?」
「いい感じ。合唱部もあるし、ここにしてよかった。」
「あらそう。私の急な異動で転校になっちゃったけれど、楽しいなら、よかったわ。」
母は、私が吹奏楽を続けていることを知らない。社会科教員の母と、法律家の父の間に生まれた私。人一倍ルールには厳しい家庭だ。特に法律に。
吹奏楽を続けているなんて知られたら、命の一つや二つでは済まないかもしれない。
「晩御飯、まだかかりそうだから、宿題でもしてなさい。」
「はーい。」
自分の部屋に入って、カバンを投げ出す。
「宿題ねぇ…。」
牡丹高校に宿題は無い。とんでもない進学校で、自分で勉強するか勉強しなくても分かってしまうタイプの人かしかいないこの学校に、宿題は必要ないのだ。
ちなみに私は一夜漬けと短期記憶のプロである。
「…日記、書くか。」
高校生になったら書こうと思っていた日記。毎日書けないし、それは日記と呼べるのかも分かんないけど、何か節目になるようなことや大きなことがあったら書こうかなとか思ってる。お母さんがよく私の部屋を片付けて、ついでにノートを見ていることもあるから、日記見られないか、ちょっと心配…。
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8月29日
今日は牡丹高校に入学して初めての日。
担任の先生もクラスメイトもいい人だった。
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私の、隠語だらけの日記。私にしか意味は分からない。
…ふふっ。なんか秘密結社とかみたいで面白いな。
それにしても、美希先輩の、ふぃあんま…?ってやつカッコよかったな。私もいつか…。私がやるならなんだろう。水属性って言ってたし、イルカとかクジラとか出てきたりするのかな。それとも噴水?いや、波の可能性もある。
そんな妄想を繰り広げながら、いつしか私は眠りについていた。
「─、──。─と──よ」
…あと、5分…
「───。─。ねぇ─。」
…うーん…
「音!ご飯よ!起きなさい!食べないの!?」
「うわぁ!?びっくりしたぁ…。もう少し落ち着いて起こしてよ…。」
「起こしてたわよ!もう5分あんたを起こし続けてるこっちの身にもなってよ!」
5分!?私よく寝たな…。
「ほらご飯よ。どっかの誰かが寝こけてるから、冷めちゃってるかも。」
「はーい。ごめんなさーい。」
「まったくもう……。」
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