そして今日も、音は舞う
風花こおり
序章 その音がいつか
輝く楽器、響き渡る音色。
私の青春は、ブラスバンド無しでは語れない。
0.03秒。音が審査員の耳に届くまでの時間。私はそのたった一瞬にすべてをかけていた。
音楽は、私のすべてだったから。
来る日も来る日も音を鳴らし続けた、世界で一つの、私の相棒。
同じ型はあっても、私はこの子じゃないと吹けない。吹きたくない。
私の息が、振動が、心が。この子と合わさって響きあう。
この感覚はきっと、この子でしか味わえないから。
ずっとずーっと、私の相棒でいてね。
そう言ったのは、たしか中学1年生の時だっけ。
そこから私はずっと、この子とともに音楽を歩んできた。
中学二年生、初めてのコンクール。厳しい練習に涙がでても、そっと見守ってくれたね。優しい音で励ましてくれる日もあった。笑うのも泣くのも、全部一緒だったね。
中学三年生、一番上という責任に、押しつぶされそうだった。後輩への責任から指導に熱が入って、空回りした私に静かに寄り添ってくれた。中学最後のコンクール。後輩より同期より、この子に一番、ありがとうとごめんなさいを言った。
中学でたくさんお世話になったこの子。高校でもきっと、一緒に音楽を奏でるんだと、コンクールに出るんだと、そう思ってた。でも、そんな予想は外れた。
牡丹学園、吹奏楽部の新入生こと、私、
私は今―――――――。
楽器を片手に、宙を舞っています。
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