厄介な異能

「それじゃ2人で?」

「そう」

「時間を稼ぐのは余裕、相手はこっちに近寄れないから」

「倒すのが問題」

「君のそれ本気?」

「私のは周囲を巻き込むから味方が居ると使えない」

「成程」


2人は攻撃し続ける

氷を放ち糸を放つ

魔物の足を凍らせる、連携して砕くまでの一瞬に複数の糸を叩き込む

(これなら)

命中すると確信する

糸が当たる瞬間に氷を砕き切り糸に当たるよりも早く後ろに飛び退いて高く飛び上がる


「うそー、今の避ける!?」

「デタラメ過ぎる……」


一瞬よりも短い時間で反応して避け切った

異常なまでの反射神経と身体能力を持つ魔物

(恋歌さんと同じ異能? それも真髄に……いや確か同じ異能の魔物は倒しているって話だから)


「真髄に至ってるのは確実なんだけど……」

「貴女も至ってますよね?」

「私のは〜元々私が戦闘出来るタイプの異能じゃないし〜あくまで強化されたのは糸だけだから……」


魔物を操る異能の糸が強化されたが身体能力は強化されていない

元々ルナルールス本人は戦闘が強い魔物では無い

糸を放つ

魔物は糸を避けて接近してくる

氷の礫を飛ばすがダメージは無い、礫を無視して突っ込んでくる

ルナルールスは防御用の糸を周囲に張り巡らせる

しかし、防御用に張り巡らせた糸には隙間が存在する

その隙間を拳が通る

ギリギリ、ルナルールスに当たる

次の糸を出そうにも拳が早く間に合わない

魔物の拳とルナルールスの間に氷が割り込む

氷にヒビが入るが貫かれていない

氷の塊を胴体に叩き込む


「騎士団長達の攻撃は防げたよね?」

「あ、あの2人は……こんな早くない! 見えない糸を躱して攻撃も出来ないだろうし……」

「身体強化にしても透明な糸を見えるなんて」


(そもそも身体能力の延長で透明な糸が見えるようになるのかな。そもそもあの糸は物体として存在して……はいるか切れるから物体を認識する目……目の能力にしては身体能力が高い)

全く相手の異能が分からない


「身体能力系の異能の真髄なら……目もワンチャン?」

「確かに目も身体、身体能力強化の延長線と言っても納得は出来るけど……目じゃなくて耳や他の器官? いや防御用の糸の位置も分かってた」


ひたすら攻撃を仕掛ける

魔物も接近して攻撃を仕掛けてくる

埒が明かないと考えたのだろうか、それともルナルールスの弱点に気付いたのか

氷の壁を展開して拳を防ぐ

氷の壁にヒビが入る

氷の壁で視界を阻む事で魔物からは2人の動きは見えない

壁越しに糸を放つ、氷を切り裂いて糸が襲いかかる

視界外からの攻撃、完全に見えない

しかし魔物は糸による攻撃を躱す


「えぇ……うそー」

「目じゃない? 耳? それとも別の異能?」

「今のも躱されるの〜無理じゃない?」

「いざとなれば巻き込んででも倒す」


何重にも氷の壁を展開する

魔物は拳を振るい氷の壁を殴り破壊していく

その都度壁を展開するがジリジリと近付いてきている


「私全力で逃げる」

「まぁ一応他の手もあるけど」

「その手は時間かかる?」

「結構かかるから1人で時間稼いでもらう事になる」

「あの子は?」

「まぁ近接戦なら時間稼げるとは思うけど機を伺ってるから」


ゼラは物陰で静かにその時を待つ

気配も無く元々居なかったかのように感じる程に静寂に溶けきっている

攻撃に巻き込まれないように距離を取っている


「あの子どこ?」

「さぁ、本気で潜んだら私も見つけられない」

「このレベルの潜伏は魔物にも居ないけど、と言うか居場所分からないと巻き込みそう。元々戦闘してたってタイプ?」

「適当に切らなければ巻き込まれないような位置に居ると思う。むしろ戦闘からかけ離れた生活してたって話は聞いたよ。それより」

「はーい」


両手を振るい糸を放つ

氷の壁を切り裂いて魔物に襲いかかるが魔物は糸を回避する

そこに氷塊を叩き込む

手で掴み氷塊を砕こうと力を入れた瞬間何かに気付いたかのように砕くのを辞めて氷塊を投げつける

氷の壁を展開して防ぐ


「力持ち〜」

「気付かれた」

「?」

「仕込みがバレた。あれは砕いたら発動する罠だからあの時点だと気づけないはず」

「直感が強いとか?」

「直感……もう少し試す」


仕込みを入れた氷の壁を含めて複数の氷の壁を展開する

魔物は拳を振るい破壊して進む

そして仕込みを入れた氷の壁を殴る、ヒビを入れてもう一撃を振りかぶった時魔物の動きが止まる

だがすぐに殴り破壊する

破壊した事で内部に仕込んでいた瓦礫が魔物を襲う

しかし分かっていたかのように魔物は瓦礫を殴り躱す


「今の」

「間違いなく仕込みに気付いてた」


攻撃を叩き込み後退させる


「見えたって事?」

「いや、それならその前に気付くはず……攻撃の寸前で気付いたから限定的な異能?」


(なんだろう。やっぱり未来視?)


「仕方ない。時間稼いで」

「……了解〜魔物使っていいよね?」

「稼げるなら」

「まぁ使わないよりは」


範囲内に居る事前に操っていた近くに待機していた魔物を連れてくる


「いけぇ!」


操ってる魔物をけしかける

謎の魔物は次から次へと襲いかかってくる魔物を容易く蹴散らす

素早い魔物を操って突進させる

攻撃をギリギリで躱して噛み付くが歯が通らない

捕まり握り潰される

力が強い魔物で殴り掛かるが殴り返され倒される


「これ時間稼げないなぁ。ヘルプ」

「一つは壁を展開出来るけど」

「それじゃ微々たる物なんだけど〜」

「それ以上は更に時間かかるから」

「意味無いかぁ」


糸を何度も魔物に放つ

魔物は攻撃を躱して接近する

素早く地を蹴り駆ける


「来るな!」


拳が当たらないように少し離れた場所に糸を張り巡らせる

糸の隙間に拳を通してもギリギリ届かない距離

糸の隙間から素早く拳を振るうが届かない


「時間を稼ぐなら攻撃する必要ないか」


ルナルールスは一つ閃き悪い笑みを浮かべる


「何か思い付いた?」

「良い手が思いついた! 糸には一切触れない、それって〜」


手を振るって糸を放つ

魔物は拳を引っ込めて糸を躱す

魔物が下がった後、すぐに使える糸の殆どを防御用に張り巡らせる

隙間を減らす


「拳が通る隙間を無くせば攻撃出来ないって事だよね」


隙間が減った事で拳は通る隙間が無くなる

ルナルールスが異能で操っている魔物をけしかけて攻撃を仕掛ける

攻撃を躱し殴り飛ばし一蹴する

ルナルールスが操ってる魔物も決して弱い魔物では無い

だが差があり過ぎる


「これなら時間稼げる」

「確かにあの魔物の攻撃手段は拳、他の攻撃手段が無ければこの防御の突破は難しい」

「いつまで通じるか分からないから早く〜」

「言われずとも急いでる」


時間をかけて炎の異能の魔物と戦った時に使った氷のゴーレムを作る

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る