偵察

城門に向かうと夢が待っていた

夢はゼラに気づき手を振る


「早いね」

「ちょっと先に用事を済ませていたので、協力者は魔物エリアの境界線付近で待機してます」

「境界線付近に1人で? それは危なくない?」

「危険ですが大丈夫ですよ。強いですから」


(そこまで強い人……誰だろ)

夢の案内で協力者の待つ場所へ向かう


「今回の偵察については騎士団長から聞いてます」

「付近の魔物についてだけじゃないのか?」

「はい、魔物だけでなく地形の確認もです。城壁を築く際に邪魔になるような瓦礫や建物、崩れた道路などがあったら危険ですから」


夢は配信用のカメラを持っている

偵察隊は確認した場所の写真や映像を撮る

写真に残せば異変があった際に後で確認して気付ける

他にも形として残しておく事で何かしら異常事態が起きても写真や映像を残せるようになどの複数の理由で採用されている


「確かに地形の再確認は必要だね。確か数年前に殲滅エリアを決める時に確認したとは聞いているけど今もその姿とは限らない」

「はい、今でも魔物が暴れていますから異能や攻撃による地形の変動があってもおかしくないです」

「夢が戦った魔物は?」

「あの魔物が地形変動させたかは分からないですがまぁ可能なくらいの異能出力はあったと思います」


強い魔物となるとコンクリートを砕いたり瓦礫を粉々にする事がある

そう言った魔物が暴れていた場合、前回確認した時とは変わっている恐れがある

今回は周囲の魔物、地形の再確認

重要な任務である


「この辺に居るはずですが……」


周りを見渡して協力者を探す

見つからない

ゼラも協力して探すが人は見当たらない


「人っ子一人居ないね」

「あ、あれぇ? この辺で待機してるように言ったのに……誰かに見られたら不味い」

「?」

「あっ、いえなんでも……自由人ですから先に行ってるかもしれないです」

「連絡は取れない?」

「協力者は通信機持ってないので無理ですね」

「自力で探すしかないかぁ」


付近を探す

廃ビルの近くを通る

すると上から小さな瓦礫が転がってくる

(ビルの朽ちた破片か)

上を向くと灰色のローブを身につけた人物を見つける

通信機を使って夢に連絡する


「協力者は灰色のローブ付けてる?」

「はい、付けてます」

「なら見つけた」

「何処ですか?」

「廃ビルの屋上」


いつ崩れてもおかしくない程ボロボロのビルの上で見下ろしている

夢が合流する


「あんな所に……危ないよー」


夢が声を掛けると飛び降りる

ビルを蹴って綺麗に着地する


「これ壊していい〜?」

「その声」

「まぁ危険だから壊していいけど……巻き込まないで」

「はーい」


両手を振るう

廃ビルが切り刻まれる

(切り刻まれた……)

瓦礫は夢とゼラの付近には落ちない

瓦礫が大きな音を立てて地面に落ちる


「見覚えのある顔」


灰色のローブの人物はフードを外す

ゼラは目を見開き夢を見る


「協力者です」

「な……え……いやえぇ」


ルナルールスに視線を戻す


「ちゃんと協定を無視する事はしないから安心して欲しい」

「いやでも……これは流石に」

「その子が〜私に〜頼んできたんだよ? ちなみに最初はアルセスに」


再び夢を見る

夢はとんでもない事をしている

バレたら間違いなく説教どころでは済まないような事をしている

(今のうちに逃げた方がいいかなこれは)

このまま偵察をしてもしバレたら共犯として捕まる

逃げようにも天音の鎖からは逃れられない


「バレなければ大丈夫です。それにちゃんと確認しましたよ事情を知っている者なら良いですかって」

「奪還作戦は知ってるか」

「知ってるよ〜協定の時に言ってたから」


不戦の協定の条件決めの時に少しだがその話は出ていた

事情を知っている存在ではある

だがこれはレイも想定していない事


「そもそもどうやって話をしたんだ?」

「ダンジョンの入口で氷を作って魔物に見せたら最下層に案内されて」

「まさかこんなやり方をするなんて思わなかったよ〜。それで偵察するんでしょー」

「うん、それじゃ行こう」

「僕は帰りたいかなぁ……これはバレたら不味いって絶対」

「でもちゃんと条件に合う実力者ですよ?」

「他の人でも良かったと思うんだけど? 守護隊の人とか」

「でも安全ですよ? 騎士団長と戦えるくらい強いですから」

「安全だよ〜」

「それはそうだけど……」


強さは理解している、実力に不満は無い


「それに〜もう君も共犯でしょ〜?」

「今ならまだ出頭して無罪訴えれば……」

「それにこれは土地奪還の協力の一環って言い訳出来るから大丈夫だよ〜」

「土地奪還の協力の一環?」

「そう、この任務って奪還作戦に必要な事でしょ〜」

「そうだけど」

「だから私が偵察隊を守るのはおかしくないと思うよー? それにこちらから善意を支払う事で信頼を得られる」


ルナルールスには参加するメリットがある

互いに裏切られるリスクがある今行動で信頼を勝ち取りに行く事は後々自らの利益と成り得る


「まぁバレたら吊し上げられるのは私なので大丈夫ですよ」

「分かった」

「それでは行きましょう」

「私は近付いてきた魔物を切ればいいんだよね?」

「そう」


魔物エリアに入り偵察予定の場所へ向かう

すぐに魔物が襲いかかってくる

ゼラは異能を発動させて剣を構える


「その必要は無いよ」


ルナルールスが前に立ち両手を振るう

先程の廃ビルのように魔物が切り刻まれる

どうやって攻撃したのか全く分からない


「全く見えない。早い? それとも」

「恐らく糸ですね」

「あれ? 知ってるの?」

「いや、あくまで予想」

「糸? そうか、魔物を操る糸か」


真髄は異能の延長線にある力を引き出す

魔物を操る異能者の場合、魔物を操るために使っていた糸そのものが強化される


「正解! 凄いね〜、そう魔物を操る糸が強化されて今じゃ色んな物切れる」


ルナルールスは思わず拍手する

攻撃は2回しか見せていない、情報を持っていたとはいえそれをすぐに結び付けた


「それは厄介」

「不戦の協定を結んだ理由が分かった」

「あの2人なら勝てたと思うよ〜。ただ私に勝てたとしても都市は滅んでたけど」

「厄介過ぎる。あの魔物の大群も強かったし」


あのままでは押し切られていた


「まぁ気にしないでいいよ〜、それでまだ?」

「この辺りで始める」

「それじゃ周囲の警戒してるね〜」

「見た感じ特に地形が変動した形跡は無い」

「そうですね」


ルナルールスが少し離れた場所で周りを見渡す

夢はカメラを起動する

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