対面

騎士団本部がざわつく

2日連続で英雄達揃って動くのだから驚いている


「騎士団長に副団長とあの人って確か」

「浮塚葉一、彼も英雄の1人だ。噂によると予知の異能者だとか」

「予知の異能者!?」

「あそこに居るのはゼラさんと新人ちゃんか。英雄3人に異能騎士2人って強い魔物を倒しにでも行くのか?」

「昨日の今日で何が?」

「あのダンジョン確か封鎖されてるって聞いたな。攻略してないならなんかあったんじゃね?」

「まさか負けたとか?」

「有り得るかもな」


根も葉もない噂が流れる

人はこういう噂が好きだ。事実であるかではなく面白ければそれが広がる

騎士達には殆ど情報が流れていない

だからこそ変な噂が立っているのだろう

葉一が噂をしている騎士達を睨みつける

睨まれた騎士はビクッと身を震わせて黙り仕事に戻っていく

他の騎士も仕事に戻っていく


「面倒だ」

「仕方あるまい、配信は途切れダンジョンは攻略されていない。そうなれば噂が流れるのは避けられん」

「一般の方々にもこの噂が流れたら」

「もう手遅れだと思うよ。妙な動きをする人たちも居るかもしれないだけど彼らは警察に任せる」


本部を出て守護隊の基地へ向かう

向かっている最中に辺りを封鎖している守護隊員に会う


「お疲れ様です。ルナルールスと隊長が待っています」

「退避は終わっているか?」

「既に完了しています。この中に一般人は誰も残っていません」

「分かった。そのまま封鎖を頼む」

「はっ」


静か、緊張感で空気が張り詰めているように感じる

この先に人語を介する魔物が居る

一歩封鎖区域に足を踏み入れると悪寒が走る

(やばいな)

5人はそのまま基地へ向かう

近付く事に空気が重く感じる

進む足が遅くなる

英雄達は勿論、夢も恐れてはいない


「ゼラさん大丈夫ですか?」

「あぁ何とか大丈夫」

「空気が変わりましたね。この先に居るんですよね」

「普通の騎士なら最悪動けない程度には張り詰めている。一触即発状態じゃねぇのか?」

「かもしれないな」


基地につきゆっくり扉を開き中に入る

2人が待つ部屋に入るとルナルールスが音に気づいて振り返る


「あっ、ちゃんと全員来たんだ〜」


外の緊張感と一転して呑気にお菓子を食べている

(凄いほのぼのとしてる!?)

外との空気感の違いに驚く

恋歌は茶を飲んでいる

部屋の中はほのぼのとしている


「全員分席あるからどうぞ〜」

「私は見回りしてくる」


恋歌は部屋を出る

残った全員が着席する

ルナルールスの近くにはレイと葉一が座る


「それで何用だ?」


レイが呼んだ理由を聞く


「不戦の協定について」

「条件の追加か?」

「そうだよ。それで魔物側のルールを適用したい」

「魔物側のルール?」

「互いに損がないルールだよ。単純に互いに条件を1つずつ提示する、そしてどちらかがそれは無理って拒否したら互いのその条件は不成立、互いに条件を呑めば成立、勿論拒否されなかった条件であれば何度も提示するのは有り」

「えぇっとつまり……」

「要するに成立する条件は必ず同じ数になるって事、確かにそのルールに損は無い」

「成程です」


(ただこちらの通したい条件を通すなら相手の条件を呑まないとならない)

条件次第では損にはならず互いに利がある

しかし、条件次第では多少の不利を呑まないとならなくなる

(相手に通したい条件があれば多少の無理なら通せる)


「そしてここからは新しいルール、そちらが条件を提示する際は1人ずつ回す事、相談は禁止」

「それではこちらに不利だ」


夢とゼラの2人には相手に出す予定の条件を知らせていない


「代わりにこちらは一度出した条件は拒否されなくても二度の提示は禁止」

「そちらが提示予定の条件は何個だ?」

「5個」

「丁度1週か」

「そうだよ。順番は相談していいよ」


(順番、騎士団長達が条件を出したいんだから僕たちが先か? それとも後か)

相談するにしても順番に差程意味は無い


「私から時計回りで良い」

「それじゃ条件を出そう〜、丁度ここに紙とか言う物があるから」


紙に互いの提示した条件を書く

そして全員に見えるところに出す

1つ目の条件

ルナルールスの条件は協力関係の申し出(資源交換)

レイの条件は異能で魔物を集めない事

(協力関係を求めても異能を封じる事を嫌がるからこれは拒否かな)


「異能の使用ではなく?」

「魔物を集めない事だ」

「ならこっちは良いよ。正直余り集める必要が無くなったし」


異能が強化された事で自分でも戦えるようになった

その上集めるなであって魔物を支配する事は出来る

魔物を集められないとしても不戦協定がある限り問題は無い


「協力関係とはなんだ? 資源交換と書いてあるが資源を使うのか?」

「うん、ちょっと資源とか欲しいかな〜って」

「何に使う気だ?」

「今はまだ考えていない! ただこちらからは私のダンジョンで取れる鉱石や魔石を幾つか交換で渡す」

「悪くない」

「資源はそう多くないぞ」


ダンジョンにある鉱石は武器や防具に使える

魔石はエネルギーとして使っている為手に入るなら幾らでも欲しい

しかし、都市が持つ資源は余り多くない

土地の一部を奪還出来れば増えるが


「今すぐである必要は無いよ」

「なら良い」

「互いに条件を呑むから成立、それじゃ次」

「わ、私です」


レイの隣に座っているのは夢であった

夢に紙とペンが渡される


「相談は無しだからねぇ」


(僕も考えないとな……何かあるかな)


「時間ください」

「それじゃ10分」


夢は考える

(ここで適当な条件で流すのは有りだけどそれだとここで重要な条件を相手が出てきた場合無理になる。わかっててやったのかな。ならこれかな)

紙に書いて出す

ルナルールスの提示した条件はダンジョンの保護

夢が提示した条件は土地奪還の協力


「土地奪還の協力かぁ」

「これは貴女にもメリットがあります」

「どんな?」

「先程資源が欲しいと言いましたが限られた土地ではその資源の確保は難しい。ただ貴女が協力して土地の一部の奪還に成功すれば確保出来る資源が増えその結果資源交換を行えます」

「成程、確かにそれはメリット」

「それに特に損は無いですよね?」

「そうだね〜、魔物同士も殺し合うから人類側に手を貸しても特に問題は無いかなぁ」

「もし奪還出来ればダンジョンのある区域の保護も容易に出来ます」

「そうだな、今の状況で保護するには魔物による危険がある。だが奪還出来ればその危険性無く保護が出来る」

「成程、悪くないねー。それじゃ成立?」


夢はレイを見る

レイは夢を一瞥して頷く


「あぁ、成立だ」

「良い提案だ、奪還出来れば土地と資源の確保が出来る」

「それじゃ次」

「僕か。時間貰いたい」

「10分ね〜」


ゼラは考え始める

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