騎士団本部

翌日、騎士団本部へ向かう


「騎士団長は今会議室に居ます」

「会議室? 会議中ですか?」

「はい、会議終了時間は30分後ですね」


(タイミング悪いな。まぁ30分程度なら良いか)


「分かりました」


本部に入り内部を散歩して時間を潰す


「おっ、ゼラ退院したのか」


適当に歩いていたら見覚えのある男性を見つける

相手も気づいて声を掛けてくる

前回の作戦の指揮官を担当していた異能騎士だ


「昨日退院したよ。ただ暫くは異能使用禁止」

「そうか安静にしろよ。てかよくあれに勝てたな」

「ギリギリだったけどね。魔物の等級分かった?」

「あぁ、奴の等級は3級だ」

「へぇ3級か」


(強かったけど3級とはね)

3級ダンジョンは人類の限界値とも言われている

そこの中ボスクラスの単独撃破は記録に残っている限りだと2名のみ

そもそも単独で挑むケースが少ないと言う理由もあるがそれを抜きにしても世界で数人程度


「3級の中ボスクラスを単独撃破なんて異能騎士の中でも英雄クラスくらいしか出来ない。ここ最近騎士団内はその話で持ち切りだ」

「まぁ彼ら英雄達には遠く及ばないけどね。ちょっと強さがおかしい」

「それは同感だ。同じ異能者なのに差があり過ぎる」


英雄と呼ばれる人々は皆強力な異能を持つ

騎士団長や天音も英雄と呼ばれている


「そういや今日は珍しく騎士団に来てるが何かあるのか?」

「騎士団長に呼ばれてね。人気者は大変だよ」

「確かにお前は人気者だな。同僚がショーが中止になったって嘆いてたぜ」

「安静にしないと麻酔ぶっ刺すと脅されてね」

「なんだそりゃ怖ぇな」

「相原さん今日の見回りのルートの確認を」

「あぁ、分かった。それじゃゼラまたな」

「仕事がんばれ〜」


相原と呼ばれた異能騎士は騎士と話ながら立ち去る

(もう少し時間あるけどもう向かうかな)

時間を確認して執務室に向かう

騎士達は慌ただしくしている

執務室に着きノックするが返事は無い


「流石に居ないか」


中に入る

殺風景な部屋、誰も居ない

棚を確認するが興味を引く本は無い


「暇……そういえばなんの写真入ってるんだろ。バレないよね」


慎重に写真立てを手に取り入っている写真を確認する

9人の人物が写っている集合写真


「半分以上知らないけどこの4人は英雄と呼ばれている人達だ」


ゼラが知っている4人は今では英雄と呼ばれている人々

皆若い

まだ顔に傷が無い時の騎士団長レイの姿

幼さが残る天音

他2名も今とはかなり違う印象を受ける

大災厄以前から探索者として活動していた当時の写真だろう


「この人達も探索者?」

「1人は違う」


後ろに騎士団長が居た

入ってきた音に全く気づかなかった


「この5人について聞いても大丈夫ですかね?」

「構わん。別に隠してはいないからな。1人は見覚えが無いだけで知っているはずだ。騎士団が使っている特殊な薬の製造者だ。現在行方不明になっているがな」


写真立てをゼラから取り1人の少女に指を差す

一番小柄な少女、写真が苦手なのか少し嫌がっているように見える


「薬あぁ、秘薬の……行方不明?」

「そうだ、そして3人は大災厄で死んでいる」

「大災厄で……」


刀を持った少女を指差す


「戦死した1人が彼女で彼女は私と同じグループの仲間だった。私の隣にいる子は大災厄以降に探索者を辞めた私の相棒だ」


騎士団長の隣でピースしている少女


「探索者を辞めた?」

「大災厄で色々とあってな」


指を動かし騎士団長の隣にいる男性と男性と天音の肩に腕を乗せてる元気そうな女性を指差す


「この2人は天音のグループメンバーで2人とも戦死した」


この9人は大災厄当時最前線で戦っていたメンバー

そして3人が戦死し1人は探索者を辞めた

この写真は大災厄が起こる数年前の写真


「人類最強の異能者と言う言葉を聞いた事ないか」

「それって貴女の2つ名じゃ」


騎士団長は人類最強の異能者と呼ばれている

その名の通り圧倒的な異能を持つ


「今はそうだが本来は彼が持っていた名だ」


(彼が?)

平凡な顔立ちの男性、見た目は強そうには見えない

本当に人類最強の異能者の2つ名を持っていたのなら相当強い異能者だったのだろう


「話は終わりだ。本題に入ろう」

「何の要件で呼んだんですか? 報酬?」

「いや違う。ゼラお前は今戦えるか?」

「今の僕は余り戦力にはなりません。異能を酷使したせいか暫くは」

「そうか」

「また何かあったんですか?」

「あぁ、昨日城壁の近くでダンジョンが確認された。そして魔物がそのダンジョンに集まっている」

「集まる? 前回の作戦のように?」

「そうだ。外の魔物がダンジョン内部に入っていくのを見回りをしていた騎士が確認した」

「外の魔物が? ダンジョンの中からではなく?」

「見てもらった方が早いな」


タブレットを取り出して手馴れた操作で動画を再生する

見回りしていた騎士が取った映像が流れる

そこには言っていた通り外の魔物、地上を徘徊していた魔物がダンジョンの中に入っていく姿が確認出来る


「……こう言った事は前からありました?」


首を横に振る


「いや、初めて起きた現象だ」

「規模がどのくらいか分かりませんよね」

「ダンジョンが出来てからまだそれほど時間が経っていないから多くとも前回の作戦ほどでは無いと考えている」

「それで僕に攻略を?」

「あぁ、しかし、万全で無いなら仕方がない」

「他の異能騎士を?」

「いや、今回は私と天音と葉一が出る。他の異能騎士では足手纏いになる」

「なっ、そんなに難易度が?」

「たとえ弱い魔物でも大群になれば脅威となる。ダンジョンに詳しい我々が向かうのが良いと言う判断だ」


探索者は数多のダンジョンに潜っていた経験者達

ダンジョン攻略において探索者以上の適任は居ない


「僕は元々要らなかったんじゃ」

「戦力は多い方が良い。ダンジョンは何が起きるか分からないからな」

「それで攻略はいつ」

「私が動けるのが明日以降になる。作戦開始は明日の朝8時、全く面倒だ」

「急いだ方が」

「わかっている。しかし、政府の連中が口出しをしてきてな。無視はできん」

「成程」


騎士団は政府機関ではない

あくまで元探索者が立ち上げた組織でしかない

自衛隊や警察は居るが多くの異能者を抱える騎士団より戦力が少ない

その上、騎士団は政府の指示には従わず独自に動いている

余り良い印象は持たれていない

(明日までに治れば……いや無理か)


「今回は僕の役目は無いですね」

「参加出来そうなら防衛に参加してくれ」

「分かりました」

「恋歌を含めた守護隊が待機しているから参加するなら恋歌に聞いてくれ」

「分かりました」

「話は終わりだ。報酬は事前に送ってあるから確認してくれ」

「失礼します」


部屋を出る

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