17時頃、殲滅作戦の行われる区域に1人の女性が来ていた

整備されていないボロボロな道を歩く

城壁外はほぼ整備されていない

騎士団によって封鎖されている

数人の騎士が待機している


「騎士……行動早い」

「ここは立ち入り禁止です」

「私探索者」


騎士団に所属していない魔物を狩る者は騎士ではなく探索者と呼ばれている

騎士団に入っているか入っていないかの違いでしかない


「すみませんが探索者でもお通しは出来ません」

「仕方ない」

「ご理解頂き感謝します」


騎士と揉めると面倒事になる

それは避けたい女性は立ち去る振りをして騎士の視界の外へ行き走る

騎士が居ないところを探して中に侵入する

まだ作戦時間じゃないので中には騎士が居ない

完全に区域を囲む事はできない

魔物が湧いていて危険な上、魔物が集まっている範囲は不明

城壁に近い一定範囲を通行止めにするくらいしか出来ない

周りを見渡してカメラが無いことを確認すると


「カメラ無い」


騎士団の戦いは基本的に配信される

まだ時間では無いためカメラは配置されていない

目の前を魔物が通る

刀を抜いて突っ込む

まだ魔物は気付いていない

素早く接近して無防備な腹に刀を振るう

魔物は気付かず切り裂かれる

切られた魔物は消滅して魔石と呼ばれる物体を落とす

魔物を倒すと落とす石、落とさない個体も居る

魔石は魔物の本体もしくは心臓と言われている

探索者は今も昔もこの魔石を集めて金に変えていた

昔は魔石の研究のためやコレクターが集める物

今は魔石を利用したエネルギー回収の為


「小さい」


魔石はと大きさと透明度で価値が変わる

価値だけでなく魔物の強さも変わり強い魔物ほど大きく透き通っている


「魔物群れ居ない」


(嘘……無い)

この区域に魔物が集まっているという情報を得た、狩る為に来たが魔物の数は特に増えた印象は無い

信じられる筋からの情報、嘘だとは考えづらい

実際騎士が動いている以上この区域で何かがあるのは間違いないが特に異常は見当たらない


「異能騎士数人ってそんなに規模やばいのか?」


数人の騎士が会話をしながら近づいてくる

(不味い)

咄嗟に近くの空き家に隠れる


「規模は大きくないそうですが念の為にと」

「今回誰が来るんだ?」

「他には4名、健一さん、慎太郎さん、慎二さんとゼラさんです」

「異能騎士5人……それにあの手品師も来るのか。ますます分からねぇな」

「ゼラさんって強いんですか?」

「騎士団所属なのは知ってますが戦っている姿は見た事ないです」


ゼラは騎士団所属だが本職は手品師

騎士団から依頼がないとほとんど動かない

その為偶然作戦で一緒になった騎士でも無いとその実力を知らない


「強ぇよ。異能騎士の中でも強い部類に入る」

「あの人の異能知っているんですか?」

「剣を作り出す異能と聞いたな。本人は異能について触れないから正確な事は分からないが大量の剣を生み出して攻撃するらしい」

「なんですかそのでたらめな異能は」

「まぁ騎士団長みたいな異能もあるから驚きはしないな。それにゼラは騎士団長が認めてる実力者だ。戦力としては問題ない」

「騎士団長は別格ですしね」

「それなら安心ですね」


(異能騎士5人……変)

異能騎士とは異能を持つ騎士の事で通常の騎士より数が少ない

魔物の集団とは言え貴重な戦力である異能騎士を5人も派遣するのは普通では無い

騎士が通り過ぎたのを確認して出る


「困った」


騎士が近くに居ると自由には動けない

この場所は今探索者も立ち入り禁止になっている

見つかれば面倒事になる

騎士が進んだ方向と反対方向に行く

せめて情報が正しいかの確認だけはするつもりで暫く騎士の動きに気をつけながら周りを確認する


「魔物」


接敵する

今回は魔物も女性に気づいている

魔物の数は2体

刀を抜いて突っ込む

魔物の姿は四足の獣型、黒いモヤに包まれていて正確な姿は分からない

魔物の1体が口を大きく開けて噛み付いてくる

急停止して待ち構える

大きく開けた口目掛けて素早く刀を振るう

口を閉じる前に口の中に刀身を入れて勢いよく振るう

口が裂けそのまま後頭部まで両断する


「次」


2体目をロックオンする

振り切った刀の向きを変えて地を蹴る

魔物は飛びかかり爪を立てて襲いかかる

爪による攻撃を刀で受けて振るい魔物を弾く

そして振り切る前手を止め突きを繰り出す

弾かれた魔物は回避が出来ず刀が突き刺さる

魔物は消滅して魔石を落とす

回収する


「おぉ、凄いな。弱い魔物とは言えここまで容易くとは」


拍手と声が聞こえる

振り返ると騎士が立っていた

先程会話をしていた異能騎士だ


「誰」

「異能騎士の1人で名前は」

「興味無い」

「そうか、今夜ここで騎士団が作戦を行うから今日の探索はやめて欲しい。少し問題が起きていてな」

「質問」

「答えられる範囲なら」

「魔物群れ真実?」

「真実だ。こちらも質問するが騎士団員しか知らない情報をどうやって知った?」


声音が変わる

今夜の殲滅作戦は騎士団員の中でも作戦に参加する者か騎士団上層部しか知らない情報

それを騎士団所属でも無い人物が知っている


「秘密」

「まぁ問い詰める気は無い。君は悪人では無い。ただ騎士団に口の軽い者が居るのは困るな」

「疑問」

「疑問? あぁ悪人では無いと思うのは少し君の事を知っているからだ。君は夜で間違いないだろ? 白髪に銀と金の目を持つ人物なんて1人しか知らない」

「…………」

「警戒しなくていい。騎士の中じゃ結構有名人なんだよ。そしてここは君の活動区域、遭遇する可能性はあったからね」

「武運祈る」


夜は一言言い残して区域を離れる


「何かあったんですか?」

「いや? 何もそれより状況はどうだった?」

「それが規模は想定より大きそうです」

「未だに増えています」

「……これは作戦開始時間を早めた方がいいな。連絡するか」


騎士達は行動をする

静かに城壁内の住民に気付かれないように

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