第9話 不思議
☆
不思議な人だ。
お姉ちゃん以外にこういう人も居るのだなこの世の中には。
そう思いながら私は横田くんを見る。
横田春樹...か。
私は目線を戻しながら包丁で野菜を切っていく。
「...横田くん」
「ああ。どうした?」
「...私は貴方を不思議な人間として見ている。これはおかしな事ですか?」
何を変な事を聞いているのか私は。
思いながら考え込む。
だが横田くんは悩むかと思ったが意外とすんなり答えた。
「そうだな。俺は頭がおかしいから分からない部分もあるが。お前の世界は正解だよ」という感じでだ。
私は「!」となりながら横田くんを見る。
「...俺は難しい事は分からない。だけどお前の不思議は正解だよ」
「...つまり?」
「俺は変な人間だよ。...不思議って言っても過言じゃないって事だ。天水。お前は...お前らしい道を歩んで俺みたいになるなよ」
「それは違います」
予想外の答えだったのか横田くんは「!?」となる。
私は胸に手を添える。
もどかしい気持ちを伝えた。
「そんな訳無いです」という気持ちを、だ。
「...私は貴方をおかしな人として見ています。だけど貴方を蔑視する為にそういう事を言ったのではありません。それは誤解しないで下さい。貴方は暖かい陽だまりの様な存在の人間。そういう意味で言いました」
「...意外だな。お前からそんな事を聞けるとは」
「私は貴方を蔑視もしていませんし貴方を見下している訳じゃ無いです。...ただ貴方は本当に不思議な人です。まるでお姉ちゃんみたいに」
そんな言葉を言いながら私は横田くんを見る。
そして野菜を切って調理していく。
豚肉に...お野菜。
そう思っていると横田くんが「...俺にとっちゃお前も不思議な人間だよ」と横田くんが言ってきた。
それは嫌味だろうか。
「...俺はな。...お前の様な可憐な人間は初めて見たよ」
「...横田くん...」
「...まるで俺の心に花が咲いた様なそんな感じだな」
「それは女性への告白に使えそうですね」
「...そうだな。まあな」
私は横田くんを見ながら少しだけクスッと笑う。
それから横田くんを見ていると横田くんはテレビを点けてくれた。
ワイドショーがあっている。
それも男女の恋愛の事で、だが。
下らない。
「...お前はモテそうだよな。天水」
「何度もお見合いさせられました。...逃げる前は」
「...ああ。すまない。墓穴をまた掘ったな...」
「いえ。私は下らない、えげつないと思っているだけです。身体目当ての...外道な連中ばかりでしたから」
「...」
横田くんはチャンネルを変えた。
そして今度はニュースを観始める。
それは...ギャンブル依存症の話だった。
私はそのニュースを観ながらハッとする。
確か横田くんは。
「横田くん。大丈夫ですかこのニュース。確か...」
「...まあ大丈夫だよ。俺はもう絶縁しているから」
「それなら良いんですけど」
「...俺言ったっけ?その事」
「多分ですが聞きました」
そんな会話をしながら私は料理をする。
それから私は横田くんの前にオムライスを出した。
お野菜とか、お味噌汁とか。
すると横田くんは「...相変わらず上手だよな」と呟く。
私はその言葉に「褒めてもらって嬉しいです」と笑顔になった。
「...お前に旦那さんが出来たら...さぞ嬉しいだろうな」
「...出来ませんね。多分」
「そっか」
そして私は「じゃあ食べましょうか」と言いながら手を合わせる。
それからテレビを消してからそのまま食べ始めた。
横田くんは目の前の半熟のオムライスなどを見てから感激して食べていた。
私は苦笑いを浮かべながら匙を持つ。
「...横田くん」
「...何だ?」
「...あくまで...風の噂です。...横田くんって浮気されたんですか」
「...ああ。その事か。...確かにな。屑に浮気されたよ。友人に取られた」
「本当ですか」
「...全て事実だな。...そして俺は落ち込んでいる。そんな感じだよ」
「酷いですね。鬼畜でしょうか」
そう言いながら私は静かに怒りが湧く。
すると横田くんは「気にしないで。お前には関係が無いから。イライラしても仕方が無い」と言ってくる。
私はその言葉に考える仕草をする。
それから私は横田くんを見る。
「横田くん。貴方はこのままで居るのですか?」
「そうだな。何も出来んしな」
「...許せないですよね?大丈夫ですか?」
「所詮屑は屑だ。だからもう諦めたってのもある」
「...そうですか」
私は胸に何かつっかえる感情がある。
だけど横田くんがそう言うなら私は何も言わない。
そう考えながら私は話題を変える事にした。
「横田くん。今度、お食事の買い出しに行きます」
「...ああ。気を付けてな」
「何を言っているんですか。貴方も行きますよ」
「ぶぁ!?お前...それは...」
「一緒にお夕食の好きな食材を選ばないといけないでしょう」
「...し、しかし」
横田くんは考え込む。
それからジッと見ている私の視線に懲りたのか「わ、わかったよ」と返事をした。
私は「それで良いんです」と返事をする。
気分転換だ。
そう思いながら予定を頭で組んだ。
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