【完結】5年振りに再会した幼馴染みとの生活は甘すぎる
柊なのは
1章 幼馴染みとの同居生活
第1話 幼馴染みとの生活
「たく、プリンが食べたいな」
夕食に食べるロールキャベツを作っているとリビングから声が聞こえてきた。
現在時刻は、午後5時。夕食前にプリンを食べさせるわけにはいかない。
「夕食前だから駄目。食べるなら夕食後にな」
「む~」
ここから彼女のことは見えないが、おそらくリスのように頬を膨らませているだろう。そんな顔をしてもプリンを食べていいとは言わないが。
俺、
一人暮らしの予定だったが、ある事情により幼馴染みである
彩花とは、高校生1年の春、5年振りに再会。小さい頃はいつも一緒にいて、彼女と再会できてとても嬉しい。まさか同居するのは思ってなかったけど。
出来上がったロールキャベツを最後に皿に乗せ、両手で持ってテーブルへ運ぶ。
その姿を見た彩花は、ソファでダラダラと寝転がっていたが、バッと起き上がり、手伝いに来てくれた。
キッチンからコップ、お箸と持ってきてくれると彩花は、俺の目の前に来てニコニコと微笑む。
(甘え上手なんだよなぁ、ほんと)
手伝ってくれてありがとうとお礼を言って、彼女の頭を優しく撫でると彩花は、表情をふにゃりと緩ませた。
「たく、今日はロールキャベツなんだね。私、ロールキャベツ大好き」
「それは良かった」
自分に向けて大好きと言われた気がして、少しドキッとしてしまった。彩花の笑顔は、破壊力凄いからなぁ。
同居をすることが決まってから俺と彩花は、いくつかルールを決めた。朝食は、彩花が作り、夕食は、俺が作るということ。洗濯物をするときは、一緒にやることなど。
ちなみに俺と彼女は付き合っていない。それなのに同居とかほんと駄目だろお母さん……。
俺と彩花は、向かい合わせに座り、夕食を一緒に食べる。彩花は、幸せそうに食べてくれるのでこちらとしては作りがいがある。
「お腹いっぱい……ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
食べ終えると彼女はすぐに食器を台所へ運び、冷蔵庫を開ける。俺も遅れて、食器を運ぶと彩花は冷蔵庫の前で背伸びをしていた。
(あ~、プリン買って俺が1番上に置いたから取れないんだ)
持っている食器を水に付けてから、俺は彼女の代わりにプリンを取ってあげた。
「はい、どうぞ」
「! あ、ありがと、たく」
彼女は驚き、ブロンドの髪がふわりと揺れる。俺からプリンを受け取り、スプーンを持ってからソファへ座りに行った。
(距離近いからビックリしたのかな)
洗い物は毎日交互にやっていて今日は、俺がやる日なので、2人分洗う。
洗い物を終え、彼女がいるリビングへ移動し、プリンを美味しそうに食べる彩花の隣に座った。
「たくも食べる?」
「ううん、お腹いっぱいだから。ところで、俺の名前、匠なんだけど……」
昔から彼女にたくと呼ばれているが、本当の名前を覚えられていないんじゃないかと思い、そう言うと彼女は俺の肩にトサッともたれ掛かってきた。
「昔からたくって呼んでるから変えるつもりはないよ。たくじゃイヤ?」
俺の顔をじっと見つめてくる彼女。綺麗な瞳で見つめられ、目がそらせない。
「別にイヤじゃないよ。ただ……」
「たくみくん」
「!」
「ふふっ、ちゃんと覚えてるよ?」
彩花は、俺の心を呼んだのか下の名前を呼び、ふふっと小さく笑う。
そして食べ終えたのかプリンの容器を持ってキッチンへ行ってしまった。
あの距離にあの上目遣いはズルすぎる。彼女が一旦離れて、今、1人になれて良かった。近くにいられたら今、ドキドキしまくっていることが彩花にバレてしまうところだった。
彼女が戻ってくる前に平常心にならなければと思い、深呼吸していると後ろからバッと抱きつかれた。
「たーく!」
「!」
平常心を保てると思った矢先、後ろから抱きつかれるというまさかの展開に俺は、またドキドキし始める。
後ろからハグされるなんて予想してなかった。完全に油断していた。
「びっくりした」
「ごめん、抱きつきたくなって……(雑誌で後ろからハグしたら相手はドキドキするって書いてあったけど、驚かせちゃった)」
「いや、大丈夫だよ。お風呂溜めるけど、先に入る?」
「うん、入る。すぐに入れるよう服持ってくるね」
俺から離れた彩花は、そう言って自分の寝室へと行った。
その間、自分は、お風呂を溜めるボタンを押してからテレビゲームをすることに。
30分ほど友達と通信ゲームをやり、少し休憩しているとお風呂上がりの彩花に名前を呼ばれた。
「たく、お風呂……ゲーム? 私もやりたい」
お風呂上がりの彼女は、そう言って俺の隣に座った。こんなことを言ったらキモいかもしれないが、彼女からいい匂いがする。
「ん、なら交代。俺はお風呂入ってるから好きなゲームやってていいよ」
「やったっ、お風呂いってらっしゃい」
可愛らしい天使のような笑みで見送られ、お風呂に入ることにする。
そして数分後。お風呂から出てくると彩花はコテンとソファに倒れていた。
大丈夫だろうかと彼女に近づくと彩花は、すうすうと寝息を立てて寝ていた。
「風邪引くぞ……」
近くにあった毛布を彼女の体にかけ、手に持っていたコントローラーをそっと回収する。
彼女が、ゲームをやっていたら眠くなって寝てしまうのはいつものことだ。
俺が寝るまではここで寝かせて寝る時は、声をかけよう。
(小さい頃と変わらない。けど、変わったところもあるんだよな……)
例えば容姿。小さい頃も可愛かったが、今は、さらに可愛く見えて、そして美人。
なので学校で彼女は、性格の良さ、容姿の良さからかなりモテている。
彩花が誰を好きになろうと自由なんだが、俺はあまりモテてほしくない気持ちがある。モテたら俺ではなく彩花は、他の男子を見るかもしれないから。
(あれ、これ、何か独占欲湧いてね……)
あることに気付くと寝ていた彩花が、うっすらと目を開けて俺の手を握ってきた。
「たく、あったかい……」
「……温かいのは彩花だと───っ!」
握られた手を彩花は、自分の頬へピトッと当てた。
「あったかいのは、たくだよ……。ふにゅ~、気持ちいい」
手をガシッと掴まれたため、振りほどこうにも振りほどけない。
彼女と同居を始めて6ヶ月。まだまだこの甘々な生活になれません。
★他の作品を読んで予告をご存知の方は大変お待たせしました。幼馴染みラブコメです。甘々にしたつもりですので、よろしくお願いします。
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