私がネトゲで堕ちるまで

No name

第1話プロローグ

「審査通るかなぁ〜?」

スマホの画面には胸の谷間を最大限に強調したきわどいポーズの私が映っている。


「この間アップした水着の写真は審査通らなかったからなぁ・・・」

オーディションなどに応募しようとしてるわけではない。

今ハマっているソシャゲ(ソーシャルゲーム)のアイコン写真だ。

公序良俗?に反する写真は審査が通らず使えないのだ。



人は見た目が9割という言葉があるがソシャゲの世界では見た目は10割

アイコン写真で全ての印象が決まる。

自撮りを繰り返し最高の映りの写真を選び、さらに肌加工などで補正値を上げて武装されたとっておきの写真が審査落ちになるダメージは計り知れない。


今回の写真も厳選されたとっておきの写真だ。

審査中の文字が消えるのを待つ間に緊張した少し震えてしまう指でデイリーミッションをこなしていく。


デイリーミッションが8割くらい終わった頃に『審査中』の文字が消えていた。


「よしっ」

私は早速アイコンを変更。

新しいアイコンをお披露目するべく全体チャットを流す。

このゲームには『世界チャット』と呼ばれるサーバー全体に発言を流せるチャットがある。


「おはよう世界のみんな」

夜中にも関わらず、今ログインしたと言わんばかりの挨拶をする。

世界チャットからおはようの返答が多々ある。

それだけでも承認欲求が満たされ私の心は歓喜の声を上げている


「初めまして!!アイコンめっちゃ可愛いですね!フレンドになってください」

秘密チャットと言われる1:1でやり取りができる個別チャットが送られてきた。


ソシャゲをやったことがない人の為に説明しておこう。

ソシャゲは基本、人との交流ありきのゲームだ。

一人でもできなくはないが、コミュニティに入る方が報酬も多く有利にゲームを進められる。

また、そこで人間関係ができるとゲームを辞めにくくなり、自分の存在価値を高める為に強くなろうと課金する人も出てくる。

ゲームのプロバイダーも、そのあたりを良くわかっていてゲーム内のイベントはコミュニティ単位のものが多い。

今までのソシャゲはコミュニケーション機能が弱く、他のプレイヤーと細かくやり取りをする手段があまりなかったが、このゲームはチャット機能に特化している。


「フレンドおk!申請してくださ〜い」

承認欲求の塊である私は常にチヤホヤされたい。

チヤホヤされていないと不安になってしまうのだ。

幼い頃に親に捨てられ施設で育った生活環境がそうさせるのだと思うがそんな事は今となってはどうでもいい。

単純にチヤホヤされるのが快感なのだ。


そんな私だが、今回のこのゲームは実に7年ぶりのネット界復帰なのだ。

理由は過去にハマっていたネトゲ(ネットゲーム)にある。

そこで私は不特定多数の人と仲良くなり、有名なランカー(総合ランキング上位者)がたくさん所属するギルドに入った事がきっかけでゲームの中に居場所ができた。

孤独で寂しかった私の心はゲームで満たされていった。


どんどんゲームにハマり夢中になる。

リアル(現実)が不要になっていきゲーム廃人となっていく。

そしてギルドを仕切っていたギルドマスターに私はガチ恋をしてしまう。


当時私にはリアルで付き合っていた彼氏がいたのにも関わらず私はギルドマスターの彼を好きになってしまい、リアルの彼氏とは無理矢理理由を作って一方的に別れを告げて、私はゲームの中の彼に夢中になった。


日々ボイチャ(ボイスチャット。通話みたいな機能)やオフ会を繰り返すようになり、最終的にはオフ会に参加している不特定多数のギルドメンバーとセックスをするように彼に強要されたり、ボイチャ中にオナニーをしろと命令されるようになりその動画がたくさん流出してしまう。

まるでアダルトビデオを自作しているかのようにいろんな動画を撮られ、販売サイトなどでも売られてしまうような始末だ。

私はみんなの欲求を受け止めるための性奴隷になってしまいやりたい放題。

逃げたくてもネトゲの世界という自分の居場所を捨てて逃げることもできずにされるがままの状態だった。


そんな騒動もあったが私はついに逃げる決意をして身内に相談した。

話は拗れたがなんとか解決して私はネトゲから姿を消した。

私のえっちな動画は少しずつ忘れられていきネットから消えていく。

大人しくそのままネットから消えてしまえばいいのだが私にはそれができない。

チヤホヤされる快感が忘れられないのだ。


でもあんな思いをするのは2度とごめんだ。

自分への戒めのためにも私の体験をここに残しておくことにする。

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