第29話 バレリーナ

チアキはバレエが何よりも大好きだった。

3歳の頃からバレエを習っていて、キャリアは10年以上になる。


チアキの夢は、将来世界的なバレエ団に入団し、プリマドンナになることだった。

そのための努力を惜しんだことはない。

厳しい練習にも、歯を食いしばって耐えてきた。


しかし最近、彼女はとても悩んでいた。

ピルエット(体を片脚で支え、それを軸に、そのままの位置で独楽のように体を回転させる技術)がどうしても上手く踊れないのだ。


理由は分かっていた。

回っているうちに眩暈がするのだ。

子供の頃はそうでもなかったが、最近はピルエットを踊っているうちに、どうしても足元がふらついてしまう。


視点を1点に固定すること。

顔を意識して固定すること。

先生からも指導を受けて、理屈は分かっているのだが、どうしても上手くいかない。


顔を固定する。

顔を固定する。

――そうだ、首を回さなければいいんだ!


チアキは首を回さずに、1回転してみた。

――できた!

チアキは嬉しくなって、何度もくるくる回った。


回っているうちに、首が捻じれてどんどん細くなっていく。

ぷちっ。

チアキの首はちぎれて床に落ちた。

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