第25話 老婆
毎朝の日課のランニング。
家から1kmほどの所にあるグラウンドを10周して帰るのが、自分に課したノルマだ。
僕は趣味で社会人のフットサルチームに所属していて、体力の維持のために毎朝こうしてランニングを欠かさない。
その日もいつものグラウンドに着くと、反時計回りに一定のペースで走り始めた。
1周まわったところで、グラウンドの外周に設けられた遊歩道を、前方から歩いて来る人が見えた。
すれ違いざまに見ると、杖をついた老婆だった。
かなりの高齢のようで、よちよちと少しずつ進んでいる。
2周目にすれ違った時も、さっきの場所からさほど進んでいないようだった。
相変わらずよちよちと、少しずつ前に進んでいる。
頭にすっぽりかぶり物をしているので、はっきりと見えなかったが、髪は全体にグレーで、黒髪はあまり残っていないようだ。
3周目。
相変わらずよちよちと歩いている。
――こんなだと、毎日の生活が大変だろうな。
すれ違いざまに、ちらりと見ると、髪が全体に白くなって、さっき見た時より顔のしわが増えているようだ。
――見間違いか?
4周目。
老婆が杖をついたまま、立ち止まっている。
――疲れたのかな?
そう思いながら近づいた僕は、老婆を見て立ち竦んでしまった。
立ったまま白骨化していたからだ。
了
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