第24話 本
図書館から借りてきた本に、1冊借りた覚えのない本が混じっていた。
図書館に電話すると、そんな本は蔵書にないし、貸出記録にも残っていないという。
――何だろう?
気味が悪かったので、僕はその本を開きもせずに、ごみの日に出してしまった。
ところが学校から帰ってみると、机の上にその本が置いてある。
本当に怖くなって、僕はその本を庭で燃やしてしまった。
ホッとして部屋に戻ったら、また本が机の上に置いてあった。
――どうしたらいいんだろう?
困り果てた僕は、本を学校に持って行き、親友のタカヒロに相談することにした。
「それじゃあ、俺がその本を預かってやるよ」
僕の話を聞いたタカヒロは、笑いながらそう言って、その本を家に持ち帰った。
次の日タカヒロは学校に来なかった。
具合が悪いのかな――と思って電話してみたが、何度掛けても繋がらない。
不審に思いながら家に帰ったら、あの本が机の上に置いてあった。
――もしかしたら、読むまで本はなくならないのかな。
そう思った僕は、恐る恐る本を開いてみた。
中身は絵本で、ページの上に挿絵があり、したに文が書かれているタイプだった。
読み進んで見ると、村が怪物に襲われる物語のようだ。
不思議だったのは、挿絵の登場人物が、ところどころ人型のまま空白になっていることだった。
――変な本だな。
そう思いながら読み進んで行き、あるページまで来た時、僕はページを繰る手を止める。
怪物に襲われ、後ろから斧で頭を割られている村人の顔が、タカヒロそっくりだったからだ。
そっくりと言うよりも、タカヒロそのものだった。
僕は慌ててページを捲る。
次のページも、村人が怪物に襲われるシーンだった。
しかし今まさに怪物に腕を掴まれ、斧で叩かれようとしている人物の絵が空白だった。
首を捻りながらページを捲った時、周囲の世界が変わった。
そこがどこなのか、僕にはすぐに理解できた。
本の中の怪物に、腕を掴まれていたからだ。
怪物は大きな口を開けて、血走った目で僕を見ていた。
右手で血まみれの斧を振り上げている。
僕は本の中の登場人物になってしまったのだ。
タカヒロもそうなのだろう。
そして誰かがページを捲ると、僕はこの怪物に殺されるのだ。
それは、この本が読まれる限り、ずっと続くのだろう。
そして本は、次の挿絵の人物を求めて旅立って行った。
了
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