第27話 ブレイブソウル解放
日曜に油断してゴブリンに負けて、火曜日にキノコに勝ってはしゃぐ人。
ダサい。
ダサいはダサいが俺のここ数日のダサさに比べたら最後勝ってる分で今日はチャラだ。
むしろ人生初の殺し合いに勝利して脳内麻薬出まくっているのか、最高に清々しい。
俺はあえて女子3人組とは目を合わせず勝利の余韻に浸る。
「わっ!? 明松くん血、鼻血出てるよ!」
しかし、相馬さんの声で脳内麻薬は消し飛んだ。
「え!? うわ!」
「あー上向いちゃだめ下向いて下!」
「え? 下向いたらよけいグフェッ、ゴパァ」
最終的に口から鼻血を吐いてめっちゃパニクったので今日もダサかったです。
「鼻血が出たら鼻をつまんでしばらくうつむくの、傷が広がったりするから鼻にティッシュ詰めたりしてもだめ、わかった?」
どうにか俺を落ち着かせた相馬さんは念押ししながら座り込んで鼻をつまんでうつむく俺にハンカチを差し出してくる。
「はい、すいません、あの汚しちゃ悪いんで、乾いたらトイレとかで顔洗って帰るんで」
なぜ、自分の血と言うのは見るとこんなにもテンションが下がるのだろう。
「あ、私、除菌ティッシュもって……ますけど」
ショートカットの女子が俺との距離感を図りかねる感じでポケットから除菌ティッシュを出してくれる。
なぜ、人の優しさと言う奴は自分のダサさと混ざると痛みに変わるのだろう。
「ああ、すいませんじゃあ1枚だけ」
小綺麗なハンカチより消耗品を分けて貰う方がまだ心が痛まない。
俺は手刀を切って除菌ティッシュを1枚受け取る。
除菌ティッシュはアルコールが少し香る程度でほぼ乾いていた。
「ああー、ごめんなさいカサカサのしか無くって」
「いえいえいえ、すいません大丈夫です」
俺がカサカサの除菌ティッシュでなんとか手に付いた血を拭っている間気まずい沈黙が流れる。
「あ、さっき俺が戦ったキノコ倒すとレベル上がるみたいです、三池さんえっと日曜日のツアーの時の職員さんが触るなって言ってた派手なキノコ」
一か八か有益な情報を与え気まずい空気をどうにかしたかった。
「は、はあ、はい」
上手くいかなかった。
そりゃそうだ、これじゃあ危ないって言われてた事をやって怪我したと説明しただけだ。
しかも、なぜ俺はショートカットの女子を見てわざわざ言ったのだろう余計気まずくなった。
しかし。
「派手って、他のより大きいやつ? それとも光の強さ? このあたりにまだある?」
最強を目指す女、青葉チカゲには響いた様で興奮気味に食いついてくれた。
「大きくて強く光ってて腕みたいに左右に小さいキノコ生えてて…………」
「ありがとう探してくる」
青葉は凄くうれしそうにダンジョンの奥に走り出す。
そしてこの場には血だらけの俺と青葉を心配そうに目で追いかける相馬さんと俺と目を合わせない様にしているショートカットの女子だけが残った。
また気まずい時間が流れる。
「明松くん鼻血止まった?」
「ああ、はい止まりました」
「しばらく、えーと家に帰るまで極力鼻を強くかまない様にね」
「はい、気をつけます」
相馬さんが気まずい空気をどうにかしようとしてくれたのは分かったが、それに対する小粋な返答なんて俺は持っていない。
とりあえず俺は立ち上がる、いつまでも座り込んでいるから相馬さんも離れ辛いのだろう。
急に立ったせいか鼻血を流し過ぎたせいかは分からないが少しめまいがする、しかしできるだけそれを気取られない様に肩を回して元気そうに振る舞う。
「あの、本当にもう大丈夫なんでえっとあのー、2人ともお好きな様に、ね」
とにかく俺はこの集まりを解散したい、その一心で言葉を紡ぐ。
「俺はもう帰りますんで――」
「ブレイブソーーウル!!」
これ以上恥をかかないよう細心の注意を払って帰ろうとしたが、洞窟の奥から封印されたはずのスキルが聞こえて、気づけば俺は洞窟の奥に走り出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます