妹が義妹になるとき
十晴
第1話 超可愛い自慢の妹だ。
これは、
突然だが自己紹介から入らせてもらおう、俺の名前は
ちょっと、なにジロジロ見てんの?」
……見ての通り嫌われてます、これはただの反抗期だと信じたいな、これでも話せるだけましなんだぜ?二年くらい前は全くと行ってもいいほどに口聞いてくれなかったからな、それから考えたらこれでも大分良いってもんだぜ。
ちょっと傷つきながらも花に返答する。
「別に、そんなことより急がないと学校遅刻するぞ」
「いちいち言わなくてもわかってるから」
やれやれ……と言いながら自分の準備をする。そして二人で家を出た、すると母さんが「いってらっしゃ~い」と言いながら見送る、これがうちの日常だった。
登校中の電車内、多少気まずいがとりあえず話しかけてみる。
「えーと、学校は慣れたか?」
「別に、どうでもいいでしょ」
「はい」
さっきも言ったんだが、花は多分反抗期だ、それも俺にだけ。父さん母さんには普通なのに、なぜか俺にだけ冷たい。たまに無視してくるしやっぱり嫌われてるのかなぁ……。
「それとさ、その…….学校では話しかけないでね。それと教室にも来ないで」
「え、なんで?」
「その……友達に見られたくないから」
なんか酷いこと言われた、兄妹と思われたくないってレベルのこと言われた気がする。
「え、ああ……わかった。気を付ける」
「じゃあ、そういうことで」
家に帰り夕飯の後、父さんは珍しく暗いペースで話し始めた。
「二人とも、ちょっとそこ座って?」
「実は父さん転勤することになったんだ。」
「転勤!? マジかよ……」
最初に来たのは驚き、そして動揺と焦りだった。
「うん、それでね、結構遠いところだから一緒に行くか残るかを選んで欲しいんだ」
「いや急すぎんだろ、ちなみにどこなの?引っ越すってことはまあまあ遠いだろうし関西とか? まさか北海道?」
「ん? ああ、イタリア」
「「イタリア!!??」」
思わず花とハモってしまった。結構遠いって言っても国内だと思うじゃん、まさかそんなに離れてるとは思わないじゃん。
「いやいや国外かよ。それで?いつから向こうに行くんだよ」
「まあ……日曜日かな?」
「えっっっと、それはいつの日曜日? まさかとは思うけど次のじゃ……」
「次のだね」
「ふザッっっっっけんな!! 早すぎだろ! なんでもっと早く言わないんだよ!?」
花も首を縦にギャン振りしている。本当に信じられない。
「えっと……サプライズ?」
そう答えた父さんの顔にはさっきまあった暗い表情は一切無くなっている。この野郎完全にふざけてやがる。
「要らんわそんなん、えっと今日が木曜日だから……って三日後じゃねえか!」
この親は色々大丈夫かと心配になってしまう。だって普通いないだろ、三日前まで海外に転勤することを言わない親なんてよ。
「ちなみにどのくらいの期間なの?」
「詳しくは分からないけどだいたい二、三年くらいだとは……」
「まあ海外なら妥当だわな、むしろ短いくらいか」
流石に海外だし数年は覚悟していた。だからこそあんなに驚いたわけだし。
「まあだいたいだし、正月とかは帰ってくる予定だから」
いやだからって急すぎないか?
「てことは一緒に行くんだったら高校は転校しなきゃってこと?」
と、花。いや転校どころじゃないよ、国が違うんだから。
「そういうことだな、それも踏まえて一緒に来るか決めてほしい」
父さんが答えると花ははっきりと答えた。
「じゃあ残る! さすがに数週間もたってないのに転校なんてやだから」
「俺も残るよ、英語ならともかくイタリア語は話せないし、なにより花を一人残しては行けないし」
「そうか……じゃあわかった、二人とも家をたのんだぞ」
「たのんだぞって、母さんもいるんだしそんな大袈裟な……」
「いや母さんもイタリア行くぞ?」
「噓でしょ!?」
「残念ながら本当だ」
「いやなんでだよ、母さん専業主婦だろ」
「いや聞いたら一緒に行きたいって言うから」
「は?どういうことだよ。母さん?」
「だって海外よ? 行きたいじゃない」
「適当すぎだろ」
「ま、そういうことだから。二人ってことになっちゃうけど大丈夫?」
まじかよ、てことはこの家に花と二人暮らしってことか?そんなの……………………
最っ高じゃねえか! この超超超絶美少女である妹と! 少なくとも数年間は二人暮らしって!! 夢か? これは夢なのか!?
ここは興奮を抑えてあくまで冷静に返す。
「俺はそれでもいいぞ、勿論花がいいならだけど」
「私もまあ、兄貴がいいなら……」
あら意外。花のことだから『兄貴と二人きりならやだ!』とか言われるとおもってたのに。まあそれ以上にイタリアが嫌なのだろう。知らぬ土地と兄と二人暮らしを天秤にかけた結果俺が勝ったのだ。すなわち俺はイタリアよりは嫌われていないということに……ってなにと比べてるんだ俺は。
「じゃあ決まりだな、まあこれから二日間ちょっと忙しくなるかもしれないがそこんとこよろしくな」
「まあいいけど、てかイタリアまでの準備がたった三日で足りるのか?」
「そのことなら心配ないよ、だいたい二週間前からこつこつ準備をしてきたから」
「確信犯じゃねえか!」
「だから言っただろ、サプライズだって。どう?驚いた?」
まるでいたずらに成功した子供みたいな目で聞いてくる父さんに二人で怒鳴る。
「「ふざけんな!」」
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