第8話

後日、僕はネットの鍵屋さんにスペアキーを注文した。ただうちに配達されたら困るので、宅急便営業所のセンター止めで注文した。幸い高校に行く途中に宅急便の営業所があったので助かった。注文から一週間後、僕は学校の帰りに営業所により代金引換で決済して荷物を受け取った。そして中身を確認して領収書と鍵屋のロゴがプリントされたプチプチつき封筒はコンビニ前のごみ箱に捨てた。うちに帰った僕は机の引き出しの奥に鍵を隠して、あとは実行日を待つだけだった。しかし実行日が来ないままに忙しい年末年始が過ぎてしまい、また学校が始まった。一向に成績が上向かない僕は三年のクラスを私立文系クラスの最終希望届を出した。また祖父に暴力を受けるのかなと恐怖を感じながら。だから僕は祖父にはクラスについて何も言わなかった。そんなある日、祖父が祖母と二月に日帰りのバスツアーに行くと言いだした。僕はこの日が一大チャンスと思い当日体調が悪いと噓をつき学校を休もうと考えた。たとえ、僕が体調不良でも祖父は絶対バスツアーに行くし、父も出勤する。母も僕には興味ないので無視して平気で買い物に行くだろう。この日しかないと僕は決心した。僕が教師とその教え子との子供という罪がより深いものになるか、否か? あの写真を見て以来、なんとなく想像はしていたけど、父が矢早さんを教師という権力で黙らせて母を奪った。果たしてそれが真実なのか? 僕は初めて逃げずに現実に立ち向かおうとしていた。

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