椿

岩田へいきち

椿


「椿生きていたのか?」



「生きていたのかって、何よ。今頃現れて。生きてるに決まってるじゃない。私が植物だからって何年私を待たせてるのよ。今まで何してたのよ? 浩(ヒロシ)が私の周りに杉やヒノキを植えてから何年経ってると思うの? もう50年よ。ほっとくにしても酷すぎるわ。何とか生きてるわ。浩が私の周りには近くに杉を植えなかったから生き延びられたんだけどね。私の周りは、檜木(ヒノキ)にしてもらったのも助かったわ。杉の木も檜木もどんどん大きくなるし、私が受けれる太陽の光は、どんどん少なくなって息苦しいぐらいだった。やっと、去年何本かカットされて、息苦しくなくなって生き返ったの。あの頃の浩って小学生だったよね。12歳?ってことは、今は、62歳か? けっこうおじちゃんね。実はね、浩が私の花の蜜を吸いにきてた頃ね。私は、62歳。田んぼの端に植って生き始めてたんだけどまだまた子どもで、人間で言うとちょうど12歳ぐらいで浩と同じぐらいだったから楽しかった。もう、あれから50年経っちゃったから私は、112歳ね。私は、まだまだ生きるからまた遊びに来て。また50年も先になったら私はまだ若いけど、浩、生きてる? だめね。じゃ。また直ぐに会いに来て」



「う〜ん、来れるかな? 今、椿って女の子と仲良くなってる」



終わり



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椿 岩田へいきち @iwatahei

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