足立と七瀬、オレと俺の物語。
あさぎ いろ
終業式の次の日
夏休みの初日…
俺は教室に忘れ物をした事を思い出し、部活前に寄ってみることに。
鍵が閉まっているかも…と思ったのに、自分の教室の扉は開いていて、難なく中に入ると、外の暑さと違い、少し冷んやりとした教室が気持ちいい。
窓が一箇所だけ開いていた。
風に煽られるようにカーテンがなびいていて、俺はそれに誘われるように、その席へと座った。
汗が垂れ落ちる頬に、心地良い風を受け、カーテンが揺れるのを見ていたら…
深夜までゲームをやっていたせいなのか、もの凄い眠気がやってくる。
どうしようもない睡魔に襲われ…
そのまま机に伏せた。
何かが、俺の髪を
風?カーテンかな?
なんて思っていたら、トントン、優しく机を叩かれて、現実へと戻ってくる。
ゆるゆると瞼を開くと、目の前には、殆ど話した事のないクラスメイトの足立がいた。
前の席に身体を預けて、切れ長の美しい瞳でこちらを見ていた。
美麗なクラスメイトは、口開く
「そこ、オレの席なんだけど…」
慌てて起き上がった俺は
「ごめ、勝手に寝ちゃって」
立ち上がりながら謝ると足立と目が合った。
夢から抜けきらない頭で、ぼんやり美しい瞳を見つめてしまう。
「オレの席に座ってるから、俺の事……す……なのか?と」
突風に煽られたカーテンが俺と足立の空間を断然した。
後半が聞き取れず
「なに?ん?」
キョトンとする俺と…
耳に若干の赤みがさす足立
「いや、俺の勘違い…じゃあ、明日の試合頑張ってな」
ありがとう、俺、補欠だけど...な。って言いかけた時には、もう、廊下を駆けていく足音がした。
俺は再び足立の席に座り顔を伏せる。
閉じようとする瞼に抗う事を諦め、思考も手放した。
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