第28話
五日が経ってもまだ雨は降り続いていて止むことはなかった。
「幸崎さんがライチちゃんと一緒にソースを飲んだって言ってたんだけど、もしかしたらライチちゃんはあっち側へ行っちゃったのかな」
あっち側と言うのは、警察さえも入れない無法地帯のことだ。
「私はいつも断っていて飲んだことがないけど、飲んでしまったのなら、わからないね」
「それなら私、悪いことを教えちゃったのかなぁ」
マイとメロが話をしているところをジュンはこっそり目撃し、二人に声を掛けた。
「ライチさんに何か教えたのですか?」
「えっとお……メグリちゃん、今の聞いちゃってたんだ」
マイがジュンの顔を見て、歯切れ悪く言う。
だが、ジュンはマイの目を射抜くように真剣な視線を送り、返事を待った。
マイは罪悪感に苛まれ、諦めて話すことにした。
「少し前なんだけどね、ライチちゃんにパパ活というのを勧めたんだ」
「パパ活って、あの身売りに近い行為ですか?」
「ぶっちゃけそうだよね、でもご飯だけの時もあるし、お小遣いが貰える楽で簡単なことだと思ってライチちゃんに私のパパを紹介したんだよ」
メロは余り喋らず、マイだけが喋っていた。
「そういう事ですか」
ジュンは理解した。
「うん、でもよく考えたらこれってかなり危険なのかもしれないね。そろそろ怖くなってきたし、私たちもキリよく辞めようかなぁ、なんて思っちゃうね」
「その方が身のためですわ。でもこんなこと言っておいてなんですけどお願いがあります。マイさん、萌香さんに紹介した人物を私にも教ええてくださります?」
「どうして? メグリちゃんは事件を解決させようとでもしているの?」
マイが不思議そうにジュンを見る。
「ライチさんは私の友人ですのでどうにか助けたいのです」
納得したマイは直ぐに幸崎の情報をジュンに教えた。
ジュンは去り際、マイとメロに忠告をした。
「余計なお世話かもしれませんが、お二人はココを清く辞めた方がよろしいかと思いますわ。そして暫くはアキハバラからも離れておいた方がいいでしょう。ココではもう既に三人もののメイド達が誘拐というていで姿を晦ましているのですから、恐らくここは時すでに遅し、標的になっているのでしょう。まあ、それじゃないにしてもココは正真正銘違法店ですので、そもそも慣れてしまってはいけないところなのですよ。よく考えた方がよろしいかと」
マイとメロは顔を見合わせて暫く黙る。
パパ活なんかしていた二人だが、本心はまだまだ素直でいい学生であり、ジュンの忠告を素直に受け止め、帰っていったのだ。
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