ーージュウニーー
第26話
「萌香さん、今日は助かりましたわ。ココでですが、静かに調査の進捗具合を報告してもいいですか?」
早朝四時十五分、ジュンは萌香と一緒に更衣室の中へ入る。
「いいですけど……、私はまだ何もわかっていません」
「聞いてください。私はおんぷさんの存在を知りませんでしたが、思い返せば、私はこの目でおんぷさんという人物をたびたび目撃していたのです。おんぷさんはツインテールで健康的な体格をしていましたわね。おんぷさんを最後に見たのはあおいさんが引退をすると言い、帰っていった時の事です。あおいさんは店を出てからおんぷさんと会っていたのです。でもなぜおんぷさんが? と思うはずです。そう、おんぷさんは誘拐などされていない。あおいさんも誘拐されたなどとキイチさんは焦っていましたが、あおいさんもまた誘拐などされていないのです。おんぷさんとあおいさんは今一緒に居ると私は見ています」
「え? 誘拐事件じゃないのですか?」
「そうです、自作自演と言う線を考えますわ。メッセージカードは誰が作っているのかは定かではないですけどね。ですが……」
「ん?」
「ここからが重要です。あおいさんのメッセージカードにバレンタインという単語がありましたよね。覚えていますか?」
「何となく……」
「バレンタインと言えば、チョコレート、チョコと言えば……、これは麻薬の隠語なのです。まだまだ先のバレンタインが待てなかったなんて今の時期おかしいことですので、これは薬が欲しくてたまらなかった。という解釈が出来ますのよ。これは、誰かがメイド達の心理を薬物で操り、マインドコントロールしているなどと考えられますのよ」
萌香は薬物と言う言葉を聞いてピクリと反応した。
「薬物、ですか……」
萌香は幸崎と使った、チョコソースというものを思い出してゆく。
「萌香さん、何か知っているのですか?」
「……ええと」
萌香は曖昧にチョコソースの存在を説明した。
「そうですわ、きっとそのちょこそーす? とかいう薬が事件と関係あるはずですわ」
ジュンが納得したように言う。
その時、萌香は私もおんぷとあおいのように消えるべき対象となってしまうのだろう、と悟ったのである。
「私もうだめかもしれません。私も近いうち、あおいさんたちと同様、誘拐されたこととなり、存在をくらまさないといけなくなるんだと思います。これは私が消えたくないといくら思っても、自分自身で姿を消すのだろうと思うんです」
「何を急にへんなことを」
「だって、私はもう使っちゃいましたので、チョコソースと言う薬。後戻りが出来ないんです」
ジュンは口をぽかんと開けて絶句する。
「な、なにを、そんな、萌香さんが……おかしいですわ」
「本当、可笑しいですよね、このまま薬物に溺れてしまうのは怖いのですが、今、また求めだしているんです。本当、気が狂いそうです」
「萌香さん、どうか正気を。私は萌香さんを助けますわ。そうだ、そうですわ。萌香さんの身体にGPSを付けてもいいですか?」
心配を通り越す目で萌香を見つめて、何かできることがないかとジュンは必死に考えだした。
「そんなことが何になるのです?」
「萌香さんをおとりにするのです。おとりにするだけです。萌香さん、いいですか? 薬物は危険なものよ。片足は踏み入れてしまったかもしれませんが、決してハマることはないように、気を引き締めてくださいね。自我を持ってください」
ジュンが警告をし、自分の腕につけていた時計を萌香に渡した。
「これはGPS機能が付いている時計よ。私は家にある懐中時計を久しぶりに使おうと思っていますので、気にせず使ってくださって大丈夫ですわ。GPS機能が付いている以上なくすこともないと思いますのでね」
推理で頭が敏感になっていたジュンは、なんとか萌香を安心させようと冷静を保ち続けた。
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