第60話 嬉しいお知らせ
4人ともかろうじて生きているために、レオンの勝利が決定し、三牙狼の勝利が確定した。
レオンは入場口には戻らず、脱ぎ捨てた服を拾うとそのまま私たちのいる特別閲覧席へと合流する。
「レオンお疲れ様!」
「ん」
レオンはいつもの調子で軽く返事をすると、空いている席へドカッと腰掛けた。
レオンはジャンやジェイミの様に抱きついたりはしてくれない。だから私はジェイミの抱擁からスッと抜け出すと、会場の死角で猫へと変身し、レオンの膝に飛び乗った。
「あー、さくらレオンには自分から行くのー!?」
ジェイミがぷくーっと頬を膨らませる。
「こりゃもう既にあそこはデキてんな……」
と、ジャン。
レオンはそんな2人もお構いなしに、小さく微笑みながら私の顔を撫で回してくれた。
冷凍魚が担架に乗って撤退していったところで、実況が再び始まった。
『さぁ、黒狼の牙が勝ったら宣伝してほしいことがあると言われていたので、ここで宣伝をさせてもらうぞ!』
え、なになに? 会場も少しざわついた後、帰ろうとしていた人たちも足を止め、実況の言葉に耳を傾けた。
『来月、王都ライヴィリアの地上層Aエリア内にて、カフェ“
わぁーっと会場中が大歓声に包まれる。
「もうオープンの段取り組んでたの!? っていうかお店の名前!」
私はレオンの膝の上で人間になってそう叫ぶ。私の魔力の反応を見て咄嗟に壁になったジェイミとジャンにより、一般の人には見られてないはず……。
「あはは、古代語で“桜”って言う意味なんだって。ビックリさせようと思って黙ってた」
ルシオはそう言ってニッコリと微笑む。
『更に! カフェ店内で流れるBGMは全て有名アーティスト“リュカ”が提供! 彼の天使の歌声や奏でるピアノの音色に酔いしれろぉ!』
キャーッと会場中が黄色い歓声に包まれる。
「きゃぁぁ! うっそ、マジ!?」
漏れなく私もその歓声に混じる。
『更に更に! カフェ“Cherry Blossom”には読書スペースを完備! “リュカ先生”のヒット小説からまだ連載中の小説まで読み放題! その場で購入も可能だ!』
「きゃぁぁぁっ!」
「さくら……あはは、ありがと」
大興奮する私を見て、リュカは照れてはにかんでいた。
一方でジェイミ、ジャンは何やら落ち込んでいる。
「俺らすげー頑張ったのに……」
「さくらの声援、リュカに全部持っていかれた~!」
「うっ、ごめん……でも、2人とも、レオンも、本当にありがとう」
リュカはそう言って申し訳なさそうに頭を下げた。
「ん」
レオンはそう短く返事をすると、自分の膝に乗っている私のお腹へ腕を回し、私の頭へ顎を乗せた。
「へぇ、もう降りろって言わねぇんだな……」
マルクス様がニヤニヤしながらそうボソッと呟いた。
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