第51話 灰かぶりの末っ子王子
⸺⸺黒狼の牙 アジトの庭⸺⸺
いつも静かなアジトの庭は、ジュージューと良い音を立て、良い匂いを辺りに撒き散らし、
「おい猫娘、そんなキノコばかりではなく肉を食え肉を」
カーサ国王はそう言って私のお皿にお肉をドサッと置く。
「お肉も十分食べてるんですけど……」
私はそのお肉をそのまま隣のレオンのお皿へと1枚ずつ移動させていく。
レオンは無言で入れられたお肉を口に運んでいた。
「カーサ国王はお肉を焼くのがお上手ですわね」
と、ビクトリア王妃。
「いつもはもっと分厚い肉しか焼いておらんので、ちゃんと焼けているか心配でしたが、ビクトリア王妃がそうおっしゃられるなら問題ありませんな」
カーサ国王はそう言って焼けたお肉をビクトリア王妃とメルキオル国王のお皿へと乗せた。
「やや、私にまでお気遣いいただきありがとうございます」
と、メルキオル国王。
「まだまだ焼きますのでどんどん食べてください」
カーサ国王はそう言って豪快に笑っていた。
「はぁ、一時はどうなることかと思ったけど、何とか丸く収まってくれて良かったぜ……」
マルクス様はそう言って脱力しながらお肉を頬張っていた。
何この光景。王様たちが大学生の友達みたいにBBQ楽しんでるんだけど……。
カーサ国王は自国に新しい制度を取り入れると言って、勉強のためにこの王都へとしばらく滞在することとなった。
エルセイジ夫妻ともすっかり和解して、彼らもお城で寝泊まりしてくれるようになったのはちょっと助かっている。
⸺⸺
私たち黒狼の牙と王様たちがBBQを楽しんでいると、またもやマルクス様を悩ませる新たな火種がこのアジトへとやってきてしまった。
「あー、あの弱虫マジでいんじゃん!」
「やだホントだー。相変わらず弱そう!」
その馬鹿にした様な声に私たちが顔を向けると、そこには魚の種族であるクラニオ族の若い男女5人がアホ面で立っていた。
「うわ……最悪……何でバレたの……」
と、リュカ。
ん? リュカの知り合い? 家族ではないよね……だって全然似てない。リュカはアイドル顔のイケメンだけど……あの人たちはこう言っちゃ悪いけど、全員不細工だ。あの5人はその不細工感がそっくりだから、多分兄弟だと思う。
「何でバレたか分かんないんだって、可哀想~」
と、甲高い声で馬鹿にしたように言う魚女。
「俺は優しいから教えてやるよ弱虫小魚。この前のコロシアムの記事に載ってた写真に、お前のアホ面が写ってたんだよ」
すごい偉そうな態度の魚男がそう言う。アホ面はあなた方では?
「マジか……はぁ……マジで最悪……。で、何しに来たんですか、兄さん、姉さん」
と、リュカ。
「兄さん、姉さん!?」
声を揃えて驚く一同。
「何って、可愛い可愛い末っ子の弟くんを可愛がりに来たんだろ?」
魚男の一人がそう答える。
「全然似てなくね?」
と、ジャン。
「似てないというか……不細工?」
と、ジェイミ。ヤバいこっちサイドがまた煽り始めた。
「はぁ!? なんなのあの犬っころ私たちが不細工ですって!?」
「ラメール王国イチの
「ラメール王国の顔面レベル低すぎだろ」
レオンが即ツッコミを入れる。
「ムキーッ! 何なのあいつ……ちょ、ちょっとだけイケメンじゃない……」
レオンはちょっとじゃなくて超絶イケメンですけど?
「お願いします、帰ってください……」
リュカがみんなの一歩前へ出てそう言う。その彼の身体はブルブルと震えていた。
それに対し魚男3人の中で一番怖そうな顔の人がこう言い返す。
「ざけんじゃねぇ! 汚れた血の一番下のクズが偉そうに俺らに指図すんじゃねぇぞ!?」
「ひぃっ……」
キュッと縮こまるリュカ。
次に偉そうな態度の魚男がこう言う。
「相変わらず弱虫君は直ってないんだなぁ? ってことは今もろくに戦いもしないで毎日お遊戯のお歌にお絵描きに妄想かぁ? とんだ居候だなぁ?」
「……っ」
は? その瞬間、私の中で何かがブチ切れる音がした。
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