第48話 決闘の取り決め
「ちょ、タンマタンマ……! ふぅ……なんとか間に合ったか……!?」
ここでマルクス様が息を切らしながらこの場へと駆けつけた。
後ろからエルセイジ夫妻もこちらへと走ってきている。
「パシリの国王を召喚したぜ」
ジャンがそう言って上空から私の隣へふわっと降り立った。
「ジャン!? 飛行禁止だよ?」
「誰にも見られねぇくらいのスピードで飛んだから大丈夫だ」
彼はそう言ってニッと笑った。
「そういう問題なの!? でも、そのおかげで一番来てほしい人に来てもらえたかも……」
「だろ? ちなみにリュカもあの辺で隠れて見てるからな」
そう言ってジャンが指差す方を見ると、バレたと観念したのか、リュカがひょこっと顔を出してこちらへ合流した。
「さくら、シャーロット嬢……ごめん。レオンとジェイミがものすごいスピードで走っていくのを見たから、僕が行ってもしょうがないと思って……隠れちゃってた」
リュカはそう言ってペコッと頭を下げた。
「あはは、リュカ割と早い段階からいたんだね……」
これで全員集合だ。
マルクス様がクロードから軽く事情を聞いたところで、ルシオのお父さんが口を開く。
「貴殿はブライリアント国王陛下だな。俺はベルセルク王国の国王、カーサ・ベルセルクである。挨拶もせずこちらへ参り、無礼なのは承知だ。だが家族の問題を抱えておる
「彼、クロードはエルセイジ王国と我が国の親善大使であり、家族だけの問題ではなくなっておりますので、ここはこの国の仕来りに従ってはいただけないでしょうか」
と、マルクス様。
「ほぅ、お聞きしよう」
「ありがとうございます。この国での殺し合いは原則禁止です。正式に決闘をする場合、コロシアムを会場とし、正式な審判を導入しての模擬戦となります。勝敗は死ではなく、舞台上から落ちる場外、若しくは戦闘継続不能と審判が判断した場合に決着が着きます。決着後に関しては、そちらで自由に決めていただいて結構です」
「仕方がない。ならばその方式でそこのエルフと決着をつけるとしよう。万一俺が負けたらエルセイジ王国へ我が領土を全て差し出し俺は自害するとしよう」
「そんな遠い領土など要らん。貴様が負けた場合、ルシオからは手を引き、今後一切関わらないと約束してもらおう。私が負けた場合は、私を奴隷にでも何でもしてルシオと共に国に連れて帰るがいい」
「ほう、エルフの奴隷か。いいだろう毎日拷問をしてやろう。決闘日の取り決めはブライリアント国王陛下へお任せしよう」
「……承知しました。では明日の午後13時より、コロシアムで開催しますので、ベルセルク国王はどうか我が城にご滞在いただけますようよろしくお願い致します」
「それは願ってもいないことだ。お言葉に甘えて世話になるとしよう」
⸺⸺
夜。結局シャーロットだけではなく、エルセイジ夫妻もアジトへ押し掛けて来る事態となった。
あんな国王のいる城には滞在したくないとのことで、ご両親とも息子や種族を散々に言われ、かなりご立腹のようだった。
「クロード……みんなも……俺のためにごめん……」
ルシオはせっかく頑張って作ったご飯も一口も喉を通らないようだった。
「ルシオは国から逃げてきたのですか?」
と、ビクトリア王妃。
「はい……。俺もクロードと同じ第三王子です。ですが、あなた方のお国のように平和ではなく、全部で10人いる兄弟で殺し合いをして勝ち残った者が次の国王となります。俺はそれが嫌で……この国に逃げ込みました。そしてマルクス陛下を頼り、このクランを紹介してもらったんです」
「そうでしたか……こんなにも心優しい子が可哀想に……。クロードなら心配いりません。国を出る前から、エルセイジ王国最強の黒魔道士です。やられたりはしませんよ」
「ビクトリア王妃……ありがとうございます」
そうお礼を言い泣き出したルシオを、みんなで一生懸命になだめた。
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