第47話 誇り高き鬼族の家系

「ん~、とても美味しいです!」

 シャーロットは幸せそうにクレープを頬張っている。

「でしょ、でしょ? こっちの味も美味しいから、一口どうぞ」

「よろしいのですか? さくら、ありがとうございます! んん、イチゴが濃いですね!」


 あれからエルセイジ夫妻とシャーロットはせっかくなのでしばらくブライリアント城へ滞在することとなった。

 私はシャーロットともすっかり打ち解け、今は2人で王都に遊びに出ている。


「あ、そろそろお買い物して帰らなきゃ。そうだ、シャーロットもうちで晩ご飯食べていきなよ。ルシオの作るご飯は絶品だよ」

「はい! ぜひお邪魔させていただきます!」


 ルシオに頼まれていた材料を買い、2人でアジトへと向かう。

 すると、アジトの前でその噂のルシオが背の高いオーガ族の男性と揉めていた。

「いつまでそんなくだらない事をしているつもりだ! オーガの男として恥ずかしくないのか!?」

「ごめんなさい……父さん……」

「いいから国に帰って真面目に武器の扱いを学べ! そんなことでは後継者争いの時にすぐに兄弟に殺されるぞ!」

「俺は……兄さんたちと殺し合いなんてしたくないよ……!」

「誇り高きオーガの王家の人間がいつまでそんな甘いことを言っているんだ!」

 ルシオのお父さんはそう言って嫌がる彼をズルズルと引きずり始めた。


「や、やめてください!」

 私は思わず飛び出し、ルシオとお父さんの間へと割り込む。


「何だ貴様は? む、その耳……一体どこの種族だ……?」

「さくら!? 来ちゃだめだ! 俺のことはいいから……」

 と、ルシオ。

「私はルシオの家族です! 彼嫌がってるじゃないですか! 手、離してください!」

「そ、そうですよう! 乱暴はやめてくださいまし!」

 シャーロットもそう言って間へと入ってくる。


「なっ……ルシオ貴様! こんな非力そうな種族のそれも女に守られて恥ずかしくないのか!? 邪魔だ、どけ!」

「「きゃぁっ!」」

 私とシャーロットはお父さんの勢い良く振り払った腕に、2人一気に飛ばされてしまう。


 そんな私たちを、遠くで見つけて駆けつけたレオンとジェイミが受け止めてくれた。

「あいつ……何?」

 ジェイミがシャーロットを地面に下ろし、ルシオのお父さんをキッと睨む。

「ジェイミだめだよ、あの人はルシオのお父さんで……」

 私が必死にジェイミを制止すると、彼は前を指差し、私に見るように促した。


「てめぇ、死ぬ覚悟はできてんだろうな?」

「あわわ、レオンいつの間に!?」

 レオンは今の今まで私のことを抱きとめていたはずなのに、気付けばルシオのお父さんの喉元に大剣を突き付けていた。


「ほぅ、貴様はヒュナム族ながら中々出来るやつのようだ」

 お父さんも喉元に大剣を突き付けられているのに全く動じない。

「ルシオの父親だろうが、国王だろうが関係ねぇ。もう一度聞く、死ぬ覚悟は出来てんだろうな」

「全く同じ質問を返そう。貴様こそ誇り高き鬼族の王家に口出しをしておいて、死ぬ覚悟は出来ているのであろうな」

 2人の間にバチバチと火花が飛ぶ。


 その一触即発の激ヤバの空気を吹き飛ばしたのは、当事者のルシオだった。

「2人ともやめて! 俺、国帰るから……! だから父さん……これ以上俺の家族に乱暴しないで……」

「ふん……分かればいいのだ。偽りの家族ごっこの非力な種族共がよってたかって王家の出来損ないを庇いやがって……」


 その時、更に1人ハントから帰宅する。

「聞捨てならんな。魔力底辺の脳筋種族が」

 クロードだ。

「何だと……?」

 うわ、お父さん絶対今、血管何本か逝ったよねってくらいブチ切れてる。


「脳筋野郎の仕来りに従い、貴様に決闘を申し込もう。誇り高き賢者の末裔まつえいが、貴様のスポンジの脳へ少しばかりの魔力を入れてやるとしよう」

 クロード煽り過ぎでは!?


「貴様……オーガの決闘の意味を分かって言っているのであろうな?」

「分かっている。どちらかが死ぬまで殺し合い、買った方は負けた方の全てを手に入れる。実に単純で野蛮な古い仕来りだ」

 ええ!? 殺し合いするの!? だから煽り過ぎなんだって!


 え、どどどどうしよう……!? パニックになっていると、ある人物がこの場へと駆けつけた。

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