第29話 乱召喚
「おい、だいたい分かった。帰るぞ」
レオンはジェイミにそう言うと、スタスタと歩き出す。
「うん、二人とも行こう」
「「はい」」
村へと戻る道中で、ジェイミがレオンに尋ねる。
「で、どうだったの? 何が目的だった? ってかさくらまさかこん中にいる?」
ジェイミはレオンのコートのもっこりした部分を見つめていた。
「目的は、召喚という行為に快楽を得るためだ。つまりほぼ無意味な乱召喚ってことになる」
「マジ? 最悪なやつらだね。でもさ、召喚って、相当腕のある魔道士じゃないとできないんだよね? そんな腕を持ちながら、なんでそんなことしてんのかな」
「主犯は隣国ガルラのウェルマーとかいう貴族だ。ガルラ城の魔道士を3人金で釣ってそいつらにやらせてるって感じだな。城に仕える実力のある魔道士3人でやれば召喚もできんだろ」
「うわ、ガルラ王国のやつらか……やりそうだね……」
「ガルラの貴族は自分が1番偉いと思ってる勘違い野郎ばっかだからな。だからさくら、あいつらが何を言おうと全部真に受けなくていい。本当に馬鹿なのは、間違いなくあいつらの方だ」
レオン、私が落ち込んでること気付いてたんだ……。そっか、だから無理やりコートから出したりとかもしないんだ。
「にゃ~……」
ありがとうの意を込めて、そう鳴いてみる。
「さくら、そっか、異世界人に対して何か悪口言われちゃったんだね……うわ~、マルクス様に見てくるだけって念を押されてなかったら……間違いなくボコってたかも……」
「誤って殺しちまうと……この国では相当の理由があっても手続きが面倒だからな。牢屋にでも入れて国側で対処したいんだろ」
「そうだね~……」
⸺⸺ラナンの村⸺⸺
「よぉ、お前らお疲れ!」
村に戻ると、たくさんの馬車と一緒にマルクス様と虎丸さんが既に村に着いていた。
「もう来てたのか……はえぇな。やっぱ虎丸に頼んで正解だったか」
レオンがそう言うと、虎丸さんは軽く会釈をした。
「あれ、さくらは?」
そんなマルクス様の言葉に、私はレオンのコートから顔だけをひょこっと出す。
「にゃぁ~」
「おぉ、立派にペットしてんなぁ!」
「なんと……そんな所に入るのか……」
嬉しそうに言うマルクス様に対し、虎丸さんはなぜか顔を赤らめていた。
そしてレオンが、見た一部始終をマルクス様やラナン村長へと報告をする。
「あぁ~、ガルラの野郎かぁ……ったく人の国で好き勝手しやがって……」
マルクス様は苦い顔をする。なんだろう、そのガルラ王国はそんなヤバイやつしかいない国なのか。
「捕えるか?」
と、虎丸さん。
「んだな……けど、貴族だと地位によってはガルラ側が返せって言ってくるかもしんねぇから、そうするとガルラ側で裁くことになる。場合によってはお咎め無しかもな」
「もう殺して埋めちゃおうよ」
と、ジェイミ。意外に物騒なこと言うね!?
「それができちゃえば苦労しねぇんだって」
「だよね~……」
ここで私はあることを思いつき、レオンのコートから這い出ると、人間へと戻った。
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