あいさつさん

やはり

第1章 今

4月11日

 私は15歳の高校生、秋寧あきやすひろ。4月9日に入学してきたばっかり。1人称は「私」だが、中身はれっきとした男だ。さっそくだが、高校へ進学して一番最初に気づいたことがある。それは、アルバイトができるようになったことだ。幸いうちの高校はバイトが禁止じゃなかった。だから高校生になってはじめにしたことは、そう「バイトの面接」。馬鹿みたいに思えるが、私は金が無い、しっかりと親にも学校にも許可は取っている。面接日は4月12日。面接落ちないかとか、いらない妄想しちゃって眠れなかった。

 翌日……面接だ。応募したのは近くのコンビニ「ローセブマート」。比較的落ちにくいとは聞いていた。でももう不安でいっぱいだった。その日の授業なんか全く持ってわからなかった。黒板を全く取れていなかったから、隠れて写真を取った。放課後、部活も特にやっていない私は、すぐにバイトの面接へむかった。面接場所につくと、そこには店長らしき人がレジで立っていた。

「あ、君がうちに応募した子だね?オーケー、じゃ早速始めよう。」

私とその店長らしき人は、そのまま裏へ入っていった。店長らしき人は比留木ひるき孝宏たかひろというらしい。優しくてとても温厚な人だ。面接が始まった。聞かれることは、ほとんどみんなが言っているようなことばかり。自己紹介や志望動機、自己PRや長所と短所。至って普通な面接だった。ただ、一つ意味がよくわからない質問があった。

「うちのバイトの子で、神咒かみのあいちゃんっていう女の子がいたんだけど……その子、なぜかわかんないけど、うちのバイト入ってから様子がおかしくて、お客さんにって言ったらしくてほかにも、誰もいないところを向いてっていうことがあって、その子バイト辞めちゃったんだ。」

何を言っている。全く持って意味がわからない。そんな怪奇現象のようなこと起きるわけ無いだろうに。そう思っていた。でも、次の話を聞いた瞬間、鳥肌がたった。

「それで、その子の親から2ヶ月後に連絡があってその内容が、「うちの娘が死にました。ありがとうございました。」っていう。で、もしそういうことがあったらすぐ僕に報告してね。」

……え?死んだ?そんな、ありえない。動揺を隠し、わかったと返事をし、その面接は終わらせた。まさか、死んだ?え?なんで?もし私もおんなじようになっちゃったらどうすればいいの?そんな想造をして、もしなってしまったときの妄想もしちゃって。動揺と不安で押し潰れそうだった。

 昨日の面接先からの電話があった。合格だって。嬉しいという感情もあったが、あそこで働くのかという不安感や恐怖感もあった。ただ、そんなの少し経てば忘れるだろうと、気にせず、平凡な一日を過ごした。

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