それはひどいですわ。
ショー君がビクトリーズに加入となった瞬間、その界隈のファンはついに念願叶ったと歓喜。
日本代表でもバリバリ投げているピッチャーが地元愛もあり入団となれば、盛り上がらないはずがなかった。
球団創設9年目で初のリーグ優勝したものの、俺が居なくなった2年間はまたしても連続の最下位。
とはいえ、近年の混戦色が強い東日本リーグの中で、首位と9、5ゲーム差。3位とは4ゲーム差。5位とは1、5ゲーム差の最下位でしたから、初期の頃までの絶望感は存在していない。
後は投打の軸になり得る人間が1人ずつと、頼りになる助っ人マンが来てくれれば……。
それがビクトリーズファンの願い。他球団からも魅力的なアプローチがあったみたいだが、あねりんが子供を生んだばかりというのを含めて。
自身が大阪に渡って数年後にすれ違うようにして生まれた日本で1番新しい地元のNPA球団に加入するというのは理想的な構図だったのではないだろうか。
「新井さんと同じところの建築屋さんに頼んで家を建てました!!」
という話も合わせて聞いたくらいだったから。
ビクトリーズとしては、今オフ最大のFA目玉の買い付けに成功しましたから、後はメジャー帰りのあいつだけ。
というところだったのだが……。
俺の方が検査に引っ掛かちまいまして。
少し前に電話してきた父親と同じセリフを口にしなければならないとは。
父親は会社の健康診断で、あんまり良くない数値が2つほど出てしまったから、会社のガイドラインに従い検査入院をしなくてはならない。
一方わたくしは、ビクトリーズ球団の新加入選手契約ガイドラインEXハイパーというのに、引っ掛かってしまいまして。
こちらにもガイドラインがあるんですよ。契約した病院での規定のメディカルチェックをパスしないと契約を結べないという。
分かりやすいところだと、肘とか肩とか。膝とか腰とかね。
助っ人マンと契約してから、肘に損傷が見つかってまともに働けませんでしたということにならないように。
普通の場合は全然大丈夫なんですけどね。故障歴とか夜の店の通い歴とか今の時代は全部調べられますから。
そういうのに引っ掛かりそうな選手は、はじめからパスされてしまいますので。
しかし私の場合は目ですので、まだちょっと速いボールがボヤけて見えてしまう感覚がアウトだったみたいで。
問題がなければ12月末までに入団会見をやる予定がお流れになってしまいましたから。
自分で場所を確保してトレーニングしながら、とりあえず春まで様子を見る形になってしまいました。
ですから、その隙にというわけではないが、アメリカで払わなければならない税金とかもありますから。
ボヤボヤしていると、アメリカの地から解き放たれたみのりんのラーメン代が圧迫して、カズちゃんのオムツ代がなくなってしまいますから、わたくしは働きましたよ。
ツインリンクもてぎに繰り出して、新型のイカルガカーを乗り回したり、あんこう寿司の半被を着て、ヘイらっしゃい!とニコニコしたり、オリジナルどんぶりを考えたり。
その間にも、色んな眼科の先生のところを訊ねては、過去の似た患者さんの話や事例を教えてもらったり、様々な治療法を試してみたり。
とりあえず、ブルーベリーを食っても意味はないというのは学んだ。
双子ちゃんが1年前にちょっとだけお世話になった文月芸術大学附属小学校に無事編入出来たりもした。
新井家、柴ちゃん家、桃ちゃん家、酒屋家、岸田家、などなどで乗り込んだショー君の新築記念パーティー的なやつは、もう宇宙怪獣襲来!というくらいの賑やかさでしたわね。
そんなこんなしている間に、春ですよ。
そして………。
ビシュッ!
ズバンッ!!
「空振り三振!!埼玉ブルーライトレオンズ細見、ビクトリーズ相手に、開幕戦でノーヒットノーランを達成しましたー!!」
ええーっ!!
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