いよいよ始まりましたわ!
「チームジャパン、スターターピッチャー、リキ、マエムーラ!!」
「「リーキ!リーキ!リーキ!リーキ!」」
1回表アメリカの攻撃。まずは日本の選手達が守備位置へと散っていき、前村君の名前が呼ばれると、スタンドからは大拍手。そして、シャーロットではお馴染みとなっている、リーキコール。
ちょっと照れ臭そうにマウンドへ上がった前村君は、浦野君から真っ白なボールを受け取り、足場を確かめた。
投球練習を終えて、帽子の鍔をしばらくの間触りながら目を閉じる。2秒、3秒。次に目を開けると、機敏な動きで滑り止めに手を置き、プレートに足を合わせた。
「さあ、いよいよプレーボール。アメリカの1番バッターはザカレアJr.です。左バッターボックスに入ります。アトランタに所属する不動のトップバッター、前村とは12打数5安打とよく打っています。初球。……ストレート、振っていってファウルになりました。152キロです」
「初球からいいボールじゃないですかねえ。バッターもある程度ストレートと予測した中で押し込んでいますからねえ」
「2球目は外に外れました。平行カウントになりまして3球目。打って、バックネットを超えていきます。これもファウルボール。追い込みました。落とすボールを使ってくるのか」
「こういう試合。だいたい最初のバッターの打球が新井のところに行くのがお約束ですからねえ」
「そうですね。決めるか、前村。……低め、スプリット!上手く打ちました!フライになりました!やはりレフトに打球が飛ぶ!ラインに向かって新井が走る!守備範囲でした!1アウト!日本のファンからも大きな拍手が巻き起こります」
「バティセカン。センターフィールダー。バーンズ!!」
滑り止めのスプレーをポイッと投げ捨てて、バーンズが打席に向かう中、どっちのファンやねん!と、言ってしまいたくなるくらいの声援がグラウンドを包んだ。
肩周りをストレッチするようにグリンと、いつもよりカラフルなバットを回した後、素振りをする。
打席に入り、足場を作ってバットを構え、前村君の投じた初球を豪快に空振り。
それだけでスタンドからは、眩しいくらいにフラッシュが焚かれ、どよめきが起こる。
「アメリカ代表は2番にバーンズを入れてきました。打率3割3分5厘、ホームラン52本、打点148。ホームラン、打点の2冠、今年はシーズンMVPも受賞しまして、メジャー最強打者と謡われているバッター。シャーロットウイングス。新井、平柳、そして前村の同僚、世界一のメンバーであります」
「大原さん、今年のシャーロットはやはり、この選手あってこそでしたよね」
「去年、一昨年もね。ホームラン争いを演じるくらいの打力はありましたけど、打率が3割3分という確実性が備わったことがさらにバッター凄みが増しましたよね」
「それはやはり平柳、新井という1、2番の存在があったからこそでしょうか」
「そういうことですねえ。2人とも出塁率が4割をゆうに超えていますから。昨年までのシャーロットは、ランナーを置いて中軸に打順を回すことがなかなか出来ませんでしたのでね。今年はそれが存分に噛み合ったチームになりましたよ」
「その強力打線を引っ張ったのが、打席のバーンズ。しかし、ここは1ー2。追い込まれました。スプリット!強いスイング!平柳が飛び付いてグラブを弾きました!それでも尚、勢いのある打球がレフト前に抜けていきます!バーンズが前村からヒットを放っていきました!」
グラブの先を掠めた打球が俺のところまで。
ドンピシャのタイミングで飛び込んだ平柳君が地面に突っ伏したまま、悔しそうに人工芝を叩いた。そして、立ち上がりながら、前村君にごめんと手で合図した。
本当にバカンスを途中で切り上げてきたスイングかよ。シーズン中よりも鋭いんじゃないの?
今の打球速度が180キロだったことがバックスクリーンに表示され、またスタンドがどよめいた。
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