とりあえずはなんとかなりましたね。

初球、真ん中低め。バーンズの得意なゾーンであったが、ボールの上っ面を叩いてしまい、ショート正面に打球が飛び、これ以上ないゲッツーコース。



天を仰ぐようにしながら1塁ベースを駆け抜けたバーンズ、ホームインしたザムと一緒に、ベンチへ戻る。



「ちょっと力んだかい、バーンズ」


「ソーリー、トキ。君のデッドボールを生かせなかったよ」


「ははっ、気にするな。また満塁にするから次は取り返せよ。ザム君はナイスチャンスメイクだね」


「どうも。また家族でうちのキャンプ場に来てくれよ」





なんて会話をしていたら、また満塁のチャンスを迎えたシャーロットチーム。



1アウトからザム君が出塁し、平柳君がセンター前、俺もライト前に落ちるテキサスヒットで続いて満塁となった。



そしておバーンズ。




カンッ!



そしておんなじ。



低めのボールを果敢に狙っていったが、打球はまたショートの守備範囲へ。



さっきと違うのは、少しバウンドが小さいゴロだったこと。



そのボールをショートのロウが大きく弾いてしまったことだ。


若干イレギュラーもあったのか、グラブの土手というよりかは、思いっきり手首に当たった打球がセカンドベースの後方へ大きく跳ねる。



回れ、回れの連呼。




ザム君に続いて平柳君も一気にホームイン。俺も3塁へ到達し、打ったバーンズもギリギリのタイミングで2塁ベースに滑り込んでいった。



4番クリスタンテ。



スカァンッ!!



「打った!!右中間に上がってしまった!左寄りにいたセンターが下がっていきますが……越されました!!またランナーが2人帰ってきます!!打ったクリスタンテは悠々2塁へ!」



ボストンパークの大きく膨らんだ右中間に打球が落ち、ワンバウンドでフェンスに到達。おバーンズが最後は歩きながらホームインし、クリスタンテもゆっくりと2塁ベースを踏んだ。



これで6ー0。



代走にマクドナルドが送られ、アンドリュース見逃し三振の後に、ブラッドリー。



「引っ張った!!レフト後方、高い弾道になった。……グリーンモンスターを………越えましたー。ボストンがさらに失点。0ー8です」



ブー、ブーと不甲斐ない贔負チームの所業に、不満が隠しきれないボストンファン。


中にはまあまあの人数が席から立ち上がってしまい、無念の交代となってしまったピッチャーも、ベンチの壁にグラブを叩きつけながらグラウンドから姿を消していった。



シャーロットの得点はここまでということになったが、フレッグリン君の安定ぶりが凄まじい。



打ち早るボストン打線のことごとく裏をかくような徹底した変化球攻め。低めに外にと曲げられたボールを打ち返すも、ため息混じりの打球に力はない。



フレッグリンは7回を99球を被安打3、4奪三振、1四死球という成績で投げきり、勝ちパターンも温存の継投へ。



最後にボストンに意地を見せられる形にはなったが、8ー2で試合を制してシリーズ3勝目で次のステージへ進んだ。



リーグチャンピオンシップの相手は、同じく3勝1敗で進出を決めたニューヨークだ。





「なに!?ワールドシリーズを見に来るだとぉ!?」



「そりゃそうでしょうよ。最愛の息子が出場するんだからさぁ!だからなんとかニューヨークを倒して私達をワールドシリーズに連れってってね!」



もう、うちの両親はテンションが上がっちゃっているみたいで。



親父も今年の有給休暇をすべて使いきる勢いで、今抱えている仕事を寝泊まり覚悟で追い込んでおり、母親もパートのシフトを相談中。


親戚にきゃらめるを預ける算段もつき、もちろん妹のななちゃんも保育園をお休みして連れていく予定。



しかも事前にみのりんとやりとりし、ホテルなどは使わず、うちのマンションに滞在するつもりらしい。



ワールドシリーズが行われる期間。移動日込みで最終戦までもつれ込むとマックスで9日間ですから、ガッツリ10日間の休暇を取るつもりらしい。



既に、パスポートや荷物の準備は済んでいて、後はシャーロットがニューヨークを倒すのを待つだけ。



無論、費用は全て息子持ちである。



「おとう、おとう!おばあちゃん達来るの!?」



「ああ。シャーロットがワールドシリーズまで進んだら飛行機に乗るんだとさ」



「パパ、ななちゃんは?」



「もちろん、ななちゃんも来るよ。到着したらおっきい車で迎えに行こうな」



「うん!おとう、絶対タテジマを倒してね!」



「ああ、まかせい!」


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