何のネタですの?(困惑)

「引っ張った!!ライト後方だ!!打球が伸びる!!フェンスを超えていきましたっ!!平柳の、平柳ユウタの2戦連発となる初回先頭打者ホームランです!!」



またやん。



またライトポール際を巻いていくようなプルプルホームラン。昨日はギリギリの飛距離だったが、今度は中段の奥の方まで届く文句無しの1発だ。



「へへッ、昨日の再現といきましょうや、アニキ」



平柳君はそんな言葉を残し、白い歯を光らせてベンチへと戻っていく。



彼が口走ったアニキという言葉を聞いて思い出した。



ビデオを撮らないといけないことを。



ディビジョンシリーズ4戦目。うちの先発は左のフレッグリン君。今日も俺があげた梅ガムを噛みながらマウンドに上がる。



シーズン途中にメジャー昇格した彼だが、ノーヒットノーランを含む12勝2敗。防御率1、92という素晴らしい成績。



彼を影のMVPとするファンも多いくらいだ。



その彼の特徴はテンポとコントロールの良さ、そしてチェンジアップとスライダーのコンビネーション。



中でもやはりチェンジアップ。



ノースカロライナ地方には、各家庭ごとにパイとチェンジアップのレシピがあるという言葉があるみたい。


フレッグリン君のチェンジアップは落差があるタイプなんですよね。




もちろん、投げた瞬間はストレートに見えて、そこからブレーキがかかる具合もチェンジアップなのだが、そこからすっと落ちるタイプ。



いわゆる落ちチェン。



日本でも投げる人は少なくなったが、パームボールみたいな感覚なのかもしれない。



ファストボールは92、3マイルなんですが、チェンジアップが効いているからみんな速いボールにタイミングが遅れ気味。



それでカウントを稼いで、低めギリギリからボールゾーンへチェンジアップを投げると、だいたいのバッターは腰砕けのスイングになり、打ち上げてしまう。



特に今日は、そんな打球がレフトの方へよく飛んできます。



4イニングで6個も。



俺がフライを取る度に、バーンズとクリスタンテが爆笑してる。



そんないいテンポでシャーロットはザム君から始まる攻撃。



ピッチャーは100マイルを越えるボールを投げることもある本格派。そんなピッチャーから粘りを見せフルカウントから投げさせたスライダーを引き付けてショートオーバーのヒットで出塁した。



トップに返って平柳君。こちらは初球。長くセットポジションでボールを持ったり、速い牽制球を入れたりとした後の1球目。



キャッチャーとしては様子見のアウトハイだったのだが、それが真ん中高めに入った。




高めのボールに対し、最短距離で出したバットで上から叩く。打球は鋭い速さで1、2塁間の真ん中を破っていくヒットになった。



ノーアウト1、2塁。



わたくし。



ここはお隣さんに続いてファーストストライクを狙っていきたいが、ベンチからのサインは盗塁を狙ってみよというご命令だった。


絶対に走れ!というサインではないが、ピッチャーのクイックや牽制周りの技術はそこまでではないという分析結果があり、ミーティングで散々話した。


特にザム君とヒラヤナギ君は、3盗も狙うチャンスもあるぞという雰囲気だったので、その後のバッターは協力してくれという塩梅。


すなわち、初球のインコースの速いボールと2球目の外に外れた変化球を俺は見送った。



3球目。



セットに入り、2度2塁ベースに視線を送ったピッチャーがホームを向いて一拍置いたタイミングでザム君がスタートした。



ボールはインコースギリギリ。ハーフスイングもどきでアシストした。



キャッチャーのスローイングは完璧。


しかし、それ以上にザム君の走りが完璧だった。


捕ったらもうタッチしたことになるような抜群のコースにボールが送られたが、それより一瞬早くザム君のスパイクが入り込み、エキサイティングなセーフ。





またもや9、1番のコンビでダブルスチール成功。



追加点が欲しいシャーロットに絶好のチャンス到来というところで……。



ビシュッ!!



ギュルルル!



ボコオッ!!



お尻に激痛走る。



俺は痛みを和らげようと、3塁に向かって激走した。



「ああっと!!ヒットバイピッチ!!新井自慢のチャームポイントに投球が当たってしまいました。デッドボールということになりましたが。


……何故か場内からは笑い声が起きています。さらに何故だか新井は3塁への方へと走っていき、ザム選手にお尻を撫でてもらっています。そして、それを悔しそうに見つめる平柳の表情をご覧下さい」



「フォーシームがコントロール出来ませんでしたね。まだお尻だったのでよかったと言うべきでしょうか」



「ただ、新井のお尻となると、日本の野球ファンからすれば宝物ですから。当然シャーロットファンからブーイングも起こります」



ザム君と3塁コーチに撫でてもらった甲斐もあり、俺は無事にプレー再開出来る流れになった。



それより何より、ノーアウト満塁でバーンズですから。攻撃面に置いてこれ以上の形はありません。





カンッ!!



「ショート正面!!捕球して、セカンド、ファーストと渡ってダブルプレー!!この間に3塁ランナーがホームイン!!シャーロットが追加点を挙げました」



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