たまにはスキンヘッドさんもやりますわ。

「バーンズはやや落ちるボールに手が出てしまうバッターですが、そのすぐ上のところが彼の1番得意なゾーンですからね。そのゾーンで誘いつつ、空振りを奪えるコントロールを見せられるかですね」



「ステゴリエスは落差のある大きなカーブがウイニングショットとしてありますが、ここはそのボールがしっかりコントロール出来るでしょうか。セットポジションからバーンズに1球目です。


……投げました。……打ちます!軽打、ピッチャー返しだ!ライナー!弾いた弾いた!打球はサードの前に転がっている!!


追いかけて1塁に投げますがこれもセーフだ!またまた内野安打!平柳、新井、バーンズの3者連続の内野安打でシャーロットもノーアウト満塁のチャンスを作りました!」



ピッチャーの咄嗟に出したグラブを叩くようにしたボールがちょうどサードとピッチャーの間に転がった。



爆発的なスピードであっという間に1塁を駆け抜けたバーンズがよしよしと頷きながらフットガードに手を伸ばす。



まさか初球から合わせるようなスイングに出るとは。しかも低めのカーブをしっかりと引き付けて。



なかなかやりますわね。



そしてクリスタンテ。



シーズン44本塁打は、バーンズに次いでチーム2位。勝負を避けられることも多い彼の後ろを打つ4番バッター。



満塁とはいえ、全部内野安打。開き直ったような強気のインコース攻めに詰まらされてショート後方へのフライ。




チームの軸でもあるレギュラーショートの離脱で出番の回ってきた若手の選手が帽子を振り落としながら後ろ向きのままこれを掴んだ。



もちろんこの打球では、ランナーは動けず。外したヘルメットを膝で蹴り上げるようにして悔しがるクリスタンテ。



1アウトになりアンドリュースがバッターボックスへ。左対左の勝負。初球、ワンバウンドするようなカーブにバットが回り、2球目のファストボールをファウル。



またワンバンするカーブを今度は見極めた後に、インハイの98マイルだった。



ブオンッ!!



バシィ!!



「空振り三振!最後は高めのフォーシームストレート!バットが出てしまいました!」


「変化球の後。空振りを奪うには最高のコースになりましたね。このボールを投げられるんですから、いいコントロールしてますよ」



「ビッグチャンスも内野フライと三振でたちまちのうちに2アウト。バッターは指名打者のブラッドリーです」



「ボストンバッテリーとしてはこのバッターは要注意ですね。クリスタンテ、アンドリュースはポイントが近いバッターです。


しかし、この選手はどんどん踏み込んで前で捌けますから、安易にカーブをストライクゾーンに投げるのは危険ですよ」



「なるほど。ブラッドリーは思い切りのいいバッターです。こういう場面でもどんどん振ってきます。………初球、外してきたカーブだ!これを打ちました!」




初球から何でそんなボール球振んねん!



多くのシャーロットファンが一瞬そう思ったがクラッカーマンの打球はセンターの左へ。



低めのカーブを無理ぐり打ちにいったが、バットの先。勢いを無くした打球が地面に迫る。



センターの選手が果敢にダイビングも、ショートバウンドの形になった打球がグラブからこぼれたようだった。



2塁ランナーのわたくしはとにかく走る。ホームベースの向こう側で、平柳がノースラノースラと腕を広げ、そのまま俺を抱き締めようとするのが非常に気持ち悪かった。



「センター前に落としました!先制点はシャーロット!2アウト満塁でブラッドリーの2点タイムリー!難しい低めのカーブを拾っていきました!」



「こういうタイプのバッターはこれがあるんですよね。もう見逃したらワンバウンドするようなボールでしたけど、迷いなくスイングされましたね」



クリスタンテ、アンドリュースと立て続けに点にならない打ち取られ方をして、いやんな感じになっていましたから、この2点はデカイ。


相手がノーアウト満塁のチャンスを生かせなかったことも含めて。



そういうわけで2点先取してもらったウェブの調子だが、それほど良いというわけでもなかった。



初めてのポストシーズン先発。中10日。



いつもとは違う状況ではあったが、良くないなりのピッチングでもハイレベルでまとめられるのがウェブのいいところである。




フォーシームやツーシームでなかなか思うようにいかないとなれば、シンカーを多めに使いつつ、スライダーを効果的に決める。



変化量のあるボールではないが、高さやコースを間違えないように丁寧な配球。



真ん中のコースでもしっかり低めに、真ん中の高さでも、外か内のギリギリに向かってボールを動かしていた印象だった。



時折クリーンヒットは浴びてしまう。



しかし、バッターのツボを突くようなピッチングが逆にバッターを焦らせた。




3回1アウト1、2塁。バッタードミンゲス。



1ー1というカウントから、膝元のシンカー。



「詰まらせた!サードの正面!ヒックスがベースを踏んで1塁へ送球!……ダブルプレーになりました!」




4回ノーアウト1、2塁。



バッターは左のスタイン。



「内側、スライダー!詰まらせました!ファーストの前、アンドリュースは2塁へ送った!!1塁には投げられません!1アウト1、3塁と変わります!」






カァンッ!!



「低め!速いボールを打ち上げてライトに上がりました。風はほとんどありません。ほぼ定位置……クリスタンテが捕る!ランナースタートを切った!!


さあ、どうだ!?ノーバウンドで返ってきて、余裕のタッチアウトです!これはクリスタンテの強肩!射程圏内でした!ボストン、得点奪えません!!」



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