三人台本/天使の子供たち(女2:男1)
無呼吸
Episode 1
ルナ♀
主人公の一人。アストラ孤児院の女の子。
好奇心旺盛で心に従う純粋な性格
ソル♂
主人公の一人。アストラ孤児院の男の子。
寮内の中でも成績が良く用心深い性格
シスター♀
アストラ孤児院のシスター。
というのは建前で、実際は派遣された
子供たちの監視員だった
※補足(M=モノローグ)
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一人称、口調変更、アドリブ等、世界観が崩れない程度にご自由に演じて下さい。
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シスター「めでたし、聖寵(セイチョウ)充ち満てる
マリア、主(シュ)爾(ナンジ)と共にまします。
爾は女のうちにて祝(シュク)せられ、
又 胎内の御子(オンコ)イエズスも祝せられ給う。
天主(テンシュ)の御母(オンハハ)聖マリア、
罪人なるわれらのために、
今も臨終(リンジュウ)の時も祈り給え。
アーメン」
ルナ・ソル「めでたし、聖寵充ち満てるマリア、
主 爾と共にまします。
爾は女のうちにて祝せられ、
又 胎内の御子イエズスも祝せられ給う。
天主の御母 聖マリア、
罪人なるわれらのために、
今も臨終の時も祈り給え。アーメン。」
シスター「本当に良い子供達ですね。これなら直ぐにでも新しいご両親も見つかるわ」
ルナ「ふふ」
ソル「(囁かな歓声)」
シスター「さあ、今日も執筆の時間です。
その素晴らしい才能が外の人々に認められる
唯一の機会ですからね。決して手を抜かず、
丁寧に書き進めて下さい」
ルナ・ソル「はーい!」
シスターM:
ここはアストラ孤児院。
生まれながらにして罪人である子供達は
キリストの教えを学び、里親の眼鏡に叶うべく日々創作を続けている。
言葉は人の鏡。
文才に長けていればそれだけに秀逸な人間
であると誇示する事が出来るのだ。
シスター「そこまで。前から順にここに提出
して下さい」
ルナ「全然書けなかった...」
シスター「焦らないでルナ、時間はたくさん
あるわ」
ルナ「そう言ってるうちにまた他の子が
貰われちゃう」
シスター「大丈夫よ。貴方は可愛らしい女の子
だもの」
ルナ「そ、そうかなあ」
シスター「ええ、貴方の書く読み物もとっても
素敵よ」
ルナ「ありがとう、シスター大好き」
シスター「私もよ。ルナも、この寮の皆
愛してるわ。さあ、中庭で遊んでおいで」
ルナ「うん!ソル、行こう」
ソル「あっ、うん」
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ルナ「素敵って言われちゃった」
ソル「良かったね」
ルナ「今日も図書館?」
ソル「そうだね」
ルナ「えー」
ソル「仕方ないよ。
まだ回復してないんだから」
ルナ「祝福の前から引きこもりだった癖に」
ソル「あはは、それにほら、勉強しないと
良い本が書けないだろ?」
ルナ「そんな事ないよ、ソルの書く言葉たち私大好きだもん。これ以上素敵になっちゃったらソルにも先を越されちゃう」
ソル「やっぱり、早くここを出たい...?」
ルナ「そりゃそうだよ。
あったかい家族に貰われて、
海に連れてって貰うんだ。ソルは違うの?」
ソル「僕は...君といれるなら、別にこのまま
でも(小声)」
ルナ「なに?」
ソル「なんでもない」
ルナ「ソルはさ、なんか夢とかないの」
ソル「夢かあ...強いて言うなら音楽を聞いてみたい」
ルナ「音楽かあ」
ソル「ほら、見て」
ルナ「何これ?」
ソル「歌詞カードって言うらしい」
ルナ「かし?」
ソル「うん。音楽には楽器だけで演奏するものやそこに歌が加わったものがあるらしくて」
ルナ「それくらい知ってるよ」
ソル「(失笑)その歌に宛てられる詩が、
歌詞って言うんだ」
ルナ「へええ、凄い見たこともない文法だ」
ソル「そうだろ?」
ルナ「だから最近ソルは詩を書くようになったんだね」
ソル「当たり」
ルナ「...まあ、どんなに頑張っても生きてる
うちに親が見つかるかは分からないけどね」
ソル「...」
ルナ「...」
ソル「怖い?」
ルナ「な、何が?」
ソル「次の祝福」
ルナ「怖くないよ」
ソル「ルナ、お告げがあってからずっと
変だよ」
ルナ「ソルこそ、どうして平気そうなの。
今だって辛いはず...」
ソル「僕にはルナが居るからね」
ルナ「でも」
ソル「それだけじゃ不十分かな」
ルナ「...次の祝福、右目だって」
ソル「そっか」
ルナ「寝てる間に終わるとは言ってもね。
もし左目も祝福を受ける事になったら、夢だった海も、ソルの事も、もう見られなくなる」
ソル「...もしそうなっても、僕がついてる。
ずっと君の隣に居るよ」
ルナ「うん(泣き出す)...ありがとう」
ソル「泣かないで、神様はきっと僕らを見捨てたりなんかしない」
ルナ「うん」
ソル「大丈夫だよ、ルナ」
ソルM:
ああ、もっと...。
もっと君に触れて抱きしめてあげられたら。
頭を撫でて、たくさん言葉をかけてやれたら...
シスターM:
ここでは男女が必要以上に接触する事は
禁止されている。勤勉で慈悲深く、
穢れの無い姿で居ることこそが贖罪であり救いであると教えられているのだ。
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シスター「さあ、皆集まって。
これからこの孤児院の運営を支える
偉い人たちが、皆が元気に過ごしているか
見にいらっしゃいます。」
ルナ「外の人達...?」
ソル「しー!」
シスター「勝手に話しかけてはいけません。
もしあちらから話しかけて下さった時は
お行儀良く答えること。それ以外はいつも通り過ごして下さい。良いわね?」
ルナ・ソル「はーい」
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ソル「外の人なんて珍しいね」
ルナ「どんな人なんだろう」
ソル「あれじゃない?」
ルナ「はっ来た!」
ソル「声が大きいよ」
ルナ「親子みたいだね、いいなあ。
そうだ、もっと近くに見に行こうよ」
ソル「あっ、ちょっとルナ」
(ルナが走り出す)
ソル「も〜〜。ルナ、あんまり近付いちゃ駄目だよ。いつも通りにしないと、ねえ、聞いてるの?って...」(ルナが急に立ち止まる)
ルナ「ぁ...」
ソル「もう、なんなんだよ急に」
ルナ「あ、あの子」(子供を指さす)
ソル「っ、」
ルナ「ソルにそっくり...」
ソル「そっくりと言うより、あれは...僕...?」
ルナ「双子とか?」
ソル「そうだとしても似すぎてる。背格好や顔つきだけじゃなくて、ホクロの位置まで。
あれは...僕そのものの様に見える」
ルナ「そんなまさか」
ソル「他人の空似という次元では無いよね」
ルナ「でも、あの子には私達みたいに腕に番号が振られてない。お父さん?の方は服で分からないけど...」
ソル「番号が与えられていない人もいるってことか」
ルナ「それじゃ名前が無いのと同じじゃない」
ソル「外の世界では個人を識別する他の手段があるとか?」
ルナ「あっ、いっちゃう」
(追いかけようとする)
シスター「どうかしましたか?」
ルナ・ソル「!!」
ルナ「し、シスター」
シスター「こんな所で何をしているんです」
ルナ「それは...」
シスター「いつも通り過ごすようにと言ったでしょう」
ルナ「...ごめんなさ」(ソルが遮る)
ソル「僕が誘ったんです。今日は天気が良いし
体調も回復してきた所だから散歩に出かけようって」
シスター「(間)それはいい事ですね。
いつも図書館に居るものだから、珍しいと
思って声を掛けてしまいました。勤勉なのは
素晴らしい事ですが、こんな日には散歩するも
良いかも知れませんね」
ルナ「...」
ソル「ありがとうございます」
シスター「くれぐれも、いつも通りに」
ルナ・ソル「はい、シスター!」
シスター「それじゃ、遊歩を楽しんで」
ルナ「あはは...(作り笑顔で手を振る)」
ソル「...」
ルナ「っ(走り出す)」
ソル「ルナ!(引き止める)どこ行く気」
ルナ「決まってるでしょ、後を追うんだよ」
ソル「正気か?シスターにたった今忠告
されたばかりなのに」
ルナ「じゃあ、ソルはそこに居たらいい」
ソル「なんでそうなるんだよ」
ルナ「せっかく外のことを知れるチャンスなのに、ただ眺めるなんて出来ないよ。それに、
ソルだって気になるでしょ?あの子のこと」
ソル「それは...」
ルナ「行くよ」(走り出す)
ソル「あっ、ルナ!」
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ルナ「こんな所に建物があったの、
知らなかった」
ソル「どこまで追う気...?この場所は
シスターが立ち入り禁止にしてたはず、
見たでしょあの標識」
ルナ「まだそんなこと言ってるの」
ソル「あのね、僕は君が心配でこんな所まで
付いてきたって言うのに」
ルナ「付いてきてなんて頼んでない。
私は行くからね」(歩き出す)
ソル「も〜〜。分かったから、ここからは僕が先に行く。危なっかしくて見てられない」
ルナ「むぅ」
ソル「ルナは後方の警戒、頼むよ」
ルナ「...分かった」
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ルナ「誰もいない?」
ソル「ひとっこひとり」
ルナ「まさか見失ったの」
ソル「君みたいにズケズケ踏み込んでったら直ぐに見つかってお終いだったんだからな」
ルナ「そんなの分からないじゃない」
ソル「分かるよ。こういうのは慎重過ぎる
くらいに行かないと」
ルナ「それで見失ったら元も子もないじゃ」
ソル「しっ」
ルナ「っ...」
ソル「...あっちだ」
(二人はまた歩き出す)
ルナ「...本当にここ?」
ソル「確かにこっちから声がしたんだ」
ルナ「でも行き止まりだよ」
ソル「これは、扉?」
ルナ「これが?ドアノブも見当たらないけど」
ソル「本で読んだことがあるんだ。外の世界
には力を加えずに開閉出来る扉があるって」
ルナ「...魔法ってこと?」
ソル「いや...僕にもどういう理屈かは
分からないが」
ルナ「そんなこと言ったって押しても、引いてもっ(色々試しながら)...ってうわあ!(ドアが開く)...開いた」
ソル「どうやったの?」
ルナ「分かんない、色々試してたら」
ソル「しっ!」
ルナ「今度は何」
ソル「誰か来る。行こう」(歩き出す)
ルナ「...あの人たちはどこに行ったの」
ソル「分からない」
ルナ「いよいよ本当に見失っちゃった
ってこと?」
ソル「すまない」
ルナ「そっかあ。まあ、ここまで来れただけ
でも上出来でしょ」
ソル「引き返す?」
ルナ「まさか。あの子の事は分からない
けど色々調べる価値はありそうだし(辺りを
見回す)少し見て回ろうよ」
ソル「うーん...」
ルナ「ね」
ソル「はー(溜息)分かった。
だけど、危ないと思ったら直ぐ引き返すよ。
寮に戻るまで僕の言うことは絶対、良いね」
ルナ「もちろん。頼りになるね隊長」
ソル「こういう時ばっかり」
ルナ「早く行こう」
ソル「僕が先導するからルナは後方の」
ルナ「後方の警戒ね(食い気味)
分かってるって」
ソル「全く...」(また歩き出す)
ソルM:後から分かったことだが、僕らの行く先々に姿を現したあの奇怪な扉の正体は
自動ドアと言うらしく手を近付けるだけで
扉が開閉する代物らしい。
ルナ「なんだろこの部屋、見た事もない物
ばっかり。それにこの臭い...鼻が曲がりそう」
ソル「医療器具、かな」
ルナ「あ、これは見覚えがあるよ。
前に祝福を受けた時、意識が朦朧としてる中で見た不思議な物たちに似てる。夢かと思ってたけど本当だったんだ」
ソル「祝福...」
ルナ「どうしたの」
ソル「いや、ちょっとね。捜索を続けよう」
ルナ「ねえ、これもあの扉じゃない?
...開けていい?」
ソル「待って(耳を付けて音を確認する)
うん、いいだろう」
ルナ「ふふ(自動ドアに喜んで開ける)え...」
ソル「どうした、何があ...」
(ホルマリン漬けにされた身体の部位が
並べられている)
ルナ「...」
ソル「...」
ルナ「なに、これ...本物?」
ソル「腕に足...眼球まで。
はっ(あるものを見つけて息を飲む)」
ルナ「この目、私のと同じ色だ」
ソル「(独り言)そんなまさか」
ルナ「うう、気持ち悪くなってきた」
ソル「ルナ、直ぐに戻るからそこに隠れてて」
ルナ「え」
ソル「僕がいいって言うまで動いちゃ
駄目だからね」(一人で行ってしまう)
ルナ「なんなの急に...こんな薄気味悪い所にいたいけな女の子を置き去りにして何かあったらどうするのさ。一人で行くことないじゃない。
戻ってきたら問い詰めてやるんだから。あ、
おかえり」
ソル「帰ろう」
ルナ「ソル?どうしたの」
ソル「いいから」
ルナ「わあっ(手を引かれる)」
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
(二人は全力疾走している)
ルナ「ねえ、何があったの」
(ソルは無視して走り続ける)
ルナ「ねえ、ねえってば。
っ(ソルの腕を振り払う)」
ソル「!」
ルナ「ちゃんと説明して!!」
(二人は乱れた呼吸を整える)
ソル「ルナ。ここから二人で逃げよう」
ルナ「え...?」
ソル「この孤児院から、二人で抜け出すんだ」
ルナ「ど、どうしたのソル」
ソル「あの瓶に入った眼球。ルナも見ただろ」
ルナ「それがどうかしたの」
ソル「あれは恐らく、ルナの物だ」
ルナ「...へ...?」
ソル「僕が君を置いて向かった部屋、
あれは遺体の安置室だった」
ルナ「遺体...」
ソル「いいか、落ち着いて聞いてくれ。
そこに先日寮を卒業したテラの死体があった」
ルナ「!!!」
ソル「間違いない。顔までは見れなかったが
腕の番号がテラの物と全く同じだった」
ルナ「そんな...だってテラは
里親が見つかったって」
ソル「落ち着いて、僕が嘘を言ってると
思うか」
ルナ「そんな...そんなあ(泣き出す)」
ソル「ここアストラ孤児院の正体は、恐らく
人身売買か人体実験の施設だ」
ルナ「じゃあ、シスターは...」
ソル「僕たちの管理を任されているんだろう」
ルナ「嘘...だってシスターはいつも優しくて
皆のことを思ってくれて」
ソル「目を覚ませ、ルナ!」
ルナ「っ!ぅう、うわあああん」
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