第11話 持ち帰ったイエロースライム

 ダンジョンを出ると、一旦街へ戻り、お城にいる王女様へバフォメットの事を報告する事に。


「……という訳なんだ」

「そんな……せっかく魔王を倒したというのに、他の魔王が揃って攻めて来るなんて」

「とはいえ、魔王自体が攻めてくる事はないだろう。我々が倒した魔王も、強い力を持つ反面、魔王城から動けないようだったしな」


 カレンさんと王女様曰く、魔物側の都合はわかりようもないが、どういう訳か魔王が城から出て来る事はなく、その手下しか攻めて来る事はなかったらしい。


「魔王でばなければ、私が負ける道理はないし、きっと大丈夫だろう」

「カレンさんが凄いのはもちろん認めていますが……でも、魔王を倒した後から、一度も本気で戦えていませんよね?」

「まぁそれはそうなんだけど、そこはほら、アルス君がいるから大丈夫だよ」


 そう言って、カレンさんがポンっと僕の肩に手を置く。

 うぅ……物凄いプレッシャーなんだけど。

 これって逆に言うと、僕がカレンさんの満足する枕を作る事が出来なければ、他の大陸の魔物に攻められるって事だよね!?

 ……いや、だけどやるしかない!

 僕はカレンさんや王女様みたいに魔物と戦ったりする事が出来ないんだから、僕の出来る事で貢献しないと!


「さて、とはいえ先程のバフォメットという、魔王軍の幹部級の魔物は私一人だと大変だな」

「そうですね。一体ならともかく、五つの大陸からそれぞれ来るとなると……けど、あの二人はそれぞれの国へ帰っちゃったのよね」

「再び呼べないだろうか?」

「一応、使いは出してみるけど、すぐにって訳にはいかないかも。実は二人とも、貴族だしね」


 カレンさんたちが話しているのは、一緒に魔王を討伐した魔法使いの女性とエルフの弓使いの事らしい。

 王女様も、立場的にもう一度お城を離れるというのは、すぐに出来ないのだとか。


「ひとまず、すぐに動けそうな者を手配しておきますね」

「わかった。あと、どうやら魔物の生息域にも影響が出始めているみたいだから、騎士団や冒険者ギルドなどへの注意喚起もお願い」

「えぇ、任せて。では、また何か動きがあったら連絡するわね」


 という訳で、王女様への報告を終えると、次は僕のお店へ。

 一刻も早く枕を作らなければ……という事で、持ち帰ったイエロースライムを早速枕の材料にしてみようと思っていたんだけど、これはダメかも。


「うーん。体内に酸を含んでいるからですかね。弾力的には良さそうだったんですけど……」

「そうだね。流石に私もこれに頭を乗せたくないかな」


 イエロースライムを持ち帰る為に入れていた袋が、少し溶けていた。

 うん。これは枕以前の問題だね。


「……待てよ。このイエロースライムをグリーンスライムやブルースライムで包み込んだら……」

「なるほど。それは良いかもしれないね」

「ちょっと待っていてください」


 グリーンスライムを伸ばし、イエロースライムを包み込むように……あ、ダメだ。

 グリーンスライムと混ざっちゃう。


「うぅ、良い案だと思ったのに」

「まぁまぁ。そう悪くはないと思うんだ。他のスライムで試せば良いよ」

「他にもスライムがいるんですか?」

「もちろん。毒を持っているパープルスライムに、スライムなのにやたらと硬いメタリックスライム。治癒魔法を使ってくるヒールスライムに、大きなクイーンスライムなんてのもいるぞ」

「へぇー、スライムってそんなに沢山の種類が……あ、ヒールスライムなんて良さそうですね。寝ている間に癒されるかも」


 寝ているだけで治癒効果のある枕なんて最高ではないだろうか。

 カレンさんの枕でなくても、普通に商品として売り出したいくらいだ。


「うーん。ヒールスライムは、このイエロースライムみたいに体内に酸を持っている訳ではなく、治癒魔法を使うだけだからね。倒してしまったら、魔法は使えないと思うよ」

「あっ、そっか……残念です」


 うぅ……良い案だと思ったのに。

 けど今の話だと、パープルスライムっていうのも体内に毒があるみたいだし、使えないか。

 メタリックスライムは弾力って感じではないらしいので、大きなクイーンスライムが次のターゲットなのかな?


「ひとまず、もう夕方だし食事にしようか」

「そうですね。では、準備してきます」

「えっ!? まさかアルス君が作ってくれるのかい!?」

「はい……あっ! ダメ……ですか?」

「いや、とんでもない! 是非お願いしたい! 何なら私も手伝うよ」


 せっかくお店……というか自宅にいるし、最近はカレンさんと外で食べる事が多くて食材が痛んでも困るので、カレンさんと一緒に夕食を作る事にした。

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