第3話

 海苔田「こんばんは。深夜ラジオの時間がやってまいりました。ここで速報をお伝えします。小学校の音楽の学習指導要領が改編となり、縦笛が横笛に変更になるそうです」



山田「それはそれは、難易度が上がって大変なのではないでしょうか」



海苔田「……というのは嘘です。まんまとひっかかりましたね、山田さん」



山田「ええ?! てっきり本当かと」



海苔田「山田さん、あなたはよく騙されやすいと人から言われませんか?」



山田「言われますけど」



海苔田「やっぱり。という訳で、今日は『短歌に親しもう』というテーマでお送りします。ゲストに、歌人の歌山ヒサシさんをお迎えしています」



歌山「よろしくお願いします」



山田「今回は、読者の方から寄せられた短歌を元に、私たちが感想を言い合い、歌山さんに批評していただく形になります」



海苔田「それでは早速一首目の紹介です。ラジオネーム『バナナ虫』さんからの作品です。ちなみに、お食事中の方は食事を終えてからご覧ください」




  




『ひと巻きとふた巻きみ巻き黄土色の芸術点と構成点やいかに』








山田「この黄土色のものというのは、つまりはう○……」



海苔田「山田さん、それ以上言ってはリスナーに先入観を与えることになりかねません。誰もそれとは言っていないのですから」



歌山「ふむ、個人的にみ巻きもあり、太さと色、艶、形がしっかりしていれば、4回転半アクセルと4回転トーループのコンビネーションジャンプを成功させたくらいのポイントを与えてもいいかと思いますね」



海苔田「み巻きに達していないふた巻き半などで、回転不足をとられないように気をつけなければなりませんね」



山田「(短歌関係ねー)それでは次の短歌に参りましょう。ラジオネーム『やまうた』さんから」 








『ぶつかりしあの子にもう一度会いたくて自販機の影で待ち伏せにけり』








海苔田「これは結構気持ち悪い短歌ですね。ストーカー予備軍といったところでしょうか」



歌山「青春のほろ苦さがよく漂っている歌ですね。共感できる人もいるのではないでしょうか」



山田「僕を見ないでください、歌山さん」



海苔田「(ここで少し恋バナなどして場を盛り上げよう)歌山さんは、高校生時代の苦い恋の思い出などありますか?」



歌山「そうですね……。私には同じクラスに好きな子がいました。彼女と私は同じ美術部でしたが、話をしたことはありませんでした」



山田「もしかして、彼女の似顔絵を密かに描いたりとかしてたんですか?」



歌山「いえ、そんなことはしません。私はあくまで正義のヒーローですから。例えば集会の終わりに彼女が階段を上るとき、階段の下から男子たちの誰かに盗撮されることがないよう、私が男子の先頭になって歩きました」



山田「なるほど。他には?」



歌山「朝、登校時間に自販機の影に立ち、彼女がくるのを待ちました。彼女がやってくるとわざと口笛を吹きながら出ていき、こちらに意識を向けるように仕向けました。また、彼女が帰る時間に合わせて学校を出て、同じ帰り道を帰り、家に着くまでに彼女がストーカーに襲われはしないかといつも密かに見張っていました。これも青春のいい思い出というか……」



海苔田「お巡りさん、この人です」





                 おわり

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