第11話 無職
「神よ神託を下したまえ!
ルイストリア・フールの職は___」
ついに職が授けられる。
俺は剣の道に進みたい。
父さんよりも強く、家族や村のみんなを守れるほど勇敢な剣士になりたい。
俺は『剣帝 幻想級』になりたい!
神父は握り合わせた手を緩め、一息ついてから口を開いた。
「___『無職 無能級』である」
は?え?
今なんて言った?
無職?
俺はチートを持ってるはずじゃ…
「すいません、本当に僕の職は『無職 無能級』なんですか?」
「え、ええ、私もこんな職初めて見たので戸惑っているのですが、ルイストリア様は『無職 無能級』で間違いないです」
「そんはずは___」
「神の意思は絶対です。
それ以上は言わない方がよろしいかと」
俺は絶望した。
今まで味わったことの無いほどの倦怠感を覚えた。
俺は、神様からチートを貰ったはずじゃないのかよ…
俺は『剣帝 幻想級』になれるんじゃないのかよ…
祈ればその道の職が手に入るんじゃないのかよ…
なんか答えてくれよ神とやらよ!
どうせ見てるんだろ!
才能を持って生まれたと自信をつけさせといて、こんな惨めな姿にして何が楽しい!
だったら最初から何も与えるなよ…
目の前がぼやける。
くそっ!何泣いてんだ俺は…
俺は必死に涙を拭った。
「結果は変わりません。お母様に報告をしましょう」
母さんになんて言えばいいんだよ。
母さんだって期待してたはずだ。
いい職が貰えるって信じてくれた。
こんなの裏切りじゃないか…
俺は神父に背中をさすられながら外へと導かれた。
教会の大きな扉を開けた先には母さんが待っていた。
「ルイスちゃん!どうだった?」
「お母様、ルイス様の職は___」
神父がマリーにルイスの職を告げようとする。
やめろ…言わないでくれ!
こんな情けない息子…母さんが知ったらがっかりするだろうな…
俺がそう思っていても、神父の口は止まらず職をマリーに告げる。
「___『無職 無能級』です」
「っ!?」
それを聞いた瞬間マリーの顔が引きつった。
絶望を目の当たりにしたような表情だ。
「そんなっ…」
マリーは膝から崩れ落ち、涙を流した。
少し経った後、マリーは俺の手を取って帰路に着いた。
俺は母さんに連れられるがまま、黙々と歩いた。
すぐ着くはずなのに、帰り道がいつもより長く感じられた。
その間俺はもちろん、母さんでさえ口を開くことは無かった。
やっとのことで家に着いたが、母さんはずっと静かなままだった。
「マリー、ルイスの職はどうだったんだ?」
「きっと『剣帝 幻想級』よね!」
ハリーとアリスがはしゃぐようにマリーを囲む。
「みんな静かにして」
母さんは元気がないように見えた。
「ルイスちゃんの職は…『無職 無能級』よ」
「「っ!?」」
ハリーとアリスは息を詰まらせる。
父さんとアリス姉さんは、俺によっぽど期待してたのかありえないとでも言いたげな顔をしている。
「これは紛れもない事実よ」
「そんな…」
「あの剣の腕で無能級だなんて…」
父さんもアリス姉さんも相当ショックを受けている様子だった。
父さんたちの顔を見ていると胸が痛む。
俺はその場にいてもいいのか分からなくなってしまった。
「外に出てきます…」
「待ちなさい」
俺はその場に居づらくなり外に出ようとしたが、父さんに呼び止められた。
「ルイス、たとえお前が無能級の職だろうと父さん達は味方だ。
それに無職なんて職は初めて聞いた。もしかしたらすごい職なのかもしれない」
父さんは俺を必死に励まそうとしてくれている。
しかし、どう足掻いたって無職ということは変わらない。
「おい無能職!この村から出ていけ!」
家の外から突然叫び声が聞こえた。
「無能職はこの村にいらない!」
「「「出ていけ!」」」
俺はすぐに気づいた。
この村は俺を必要としていない。
追い出そうとしているんだ。
「父さん…俺は出ていくよ」
「待てルイス!
俺たちは家族だ。お前を1人にはしない」
ハリーはにっこりと笑う。
「父さん…」
俺は思わず涙を流してしまった。
「みんなが家族でよかった…!」
「さっ、旅の準備をしなくちゃね!」
馬車に荷物を積み、旅の支度を済ませた俺たち家族は村を出た。
「これからどこへ行こうかしら」
「この国にいる限りあいつらとは関わることになるしな。
行くとするなら隣国、アスタリスト王国だろうな」
「いいわね!」
俺だっていつまでも落ち込んでなんか居られない。
職が無くたって件の才能があるんだ。
前を向くぞ!
アスタリスト王国…
旅の目的地はアスタリスト王国だ!
と、意気込んだはいいものの…
ザーザーザー
大粒の雨が地面を叩きつける。
出発して早々、俺たちは大雨に悩まされていた。
「どうしましょう」
「暫くは待機だな。雨が止むまで…しっ!なにか来る…」
俺たちは場所の中で待機することにしたのだが、父さんが何かを感じた。
「人だ、かなり多い。恐らく盗賊だろう」
「あなた大丈夫なの?」
「上級剣士と中級剣士、それにルイスがいるじゃないか」
「そうね、気をつけるのよ」
「ルイス、お前には後で渡そうと思っていたんだが、これを受け取れ」
父さんの手には美しく頑丈な剣があった。
「これはお前の剣だ」
俺の剣…
そうだ、俺は職がなくたって剣士なんだ!
「父さん、ありがとうございます!」
「俺とルイスは外に出る。アリスはマリーとテレスを守ってくれ」
「任せて!」
盗賊を迎え撃つべく、俺とハリーは外に出た。
「ルイス、遠慮はいらない。相手は『盗賊 普通級』だ。『中級剣士 有能級』より弱い。
つまり、お前でも勝てるってことだ」
「はい!」
「くるぞ!」
草むらが揺れる。
そして、草むらから出てきたのは盗賊と、他のものとはオーラが違う巨体な大男だった。
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