第5話 いざ王都へ


素敵なものが俺を呼んでる気がする!

王都へいざ出発だ!




と、意気込んだのはいいけども、1つ言いたい。


馬車酔いがきつすぎる!!


今リアムールから馬車で30分程来たところで、ちょうど折り返し地点といったところだ。


これがあと30分も続くのか…

王都に着く頃には生きているかな…?



それから30分後…


魔物にも出くわすことなく、無事に王都に着くことが出来た。


う、うう、やっと着いた…

途中ガタガタの道があってほんとに吐くかと思った。

もうしばらく馬車には乗りたくないな。


「王都に着きましたよ」


「王都だー!」


アリスがはしゃいで馬車から飛び降りる。

それに続いてマリーも俺を抱っこし馬車から降りた。


「へいらっしゃい!ポッコの実はいかが!今なら3つ買ったら1つサービスだよー!」


馬車を降りるや否や、美味しそうな木の実を売ってるおじさんが声をかけてきた。


なんだあの初めて見る果物!

オレンジ色で大きさはみかんくらいだ。

母さんに頼んだら買ってくれないかな?


「母しゃんポッコの実を買ってくださいますか?」


「あら、ポッコの実が食べたいのかしら?」


「うん!」


「じゃあ1つ買ってあげるわね」


マリーはそう言うとお店に行きポッコの実を1つ買ってくれた。


「母しゃんありがと!いただきましゅ!」


俺は口を大きく開けてかじりついた。


「…!?うえ!」


「ああ、皮を剥いて食べないと。父さんに貸してみなさい」


なんだ皮を剥かないといけなかったのか。

あんな美味しそうなものがこんな苦いわけないもんな。


ハリーにポッコの実を渡すと、ハリーは自前の剣で皮を剥いてくれた。


「はい、これで美味しいはずだ」


「父しゃんありがと!」


俺は改めてかじりついた。


「どうだ?美味しいか?」


口の中に広がる程よい酸味。

その酸味とマッチしている甘味。

これは__


「美味しい!」


「はははっ。そうか、なら良かったな」


王都に入った途端にこんな美味しいものに巡り会えるなんて!

王都はこんな美味しいものばかりで溢れているのかな。


王都の大通りには、ポッコの実だけでなく他にもお店が並んでいた。


あのお肉とかあのパンとかすごく美味しそうだなー!


「ルイスちゃん、よだれが垂れてるよ」


「ふぁい?」


おっといけない。

あまりにも美味しそうだからよだれが垂れちゃったよ。


「ふふっ。帰りに買っていきましょうか」


「うん!」


やった!お母さん優しい!


それから俺たち家族は、アリスの誕生日会で着るドレスを買いに服屋の前に来ていた。


「アリスちゃんが好きなのを選んでいいわよ」


「これとこれと、あっ、これもいい!」


「どれか1つだけよー」


「えー、選べないよー」


これはしばらく時間がかかりそうだ。

俺はどこかで時間を潰そうかな。


俺はこっそり店の外に出た。


店を出た後、人の間をくぐり抜けお肉屋さんの前に来た。


お金もないのになんでお店の前にいるのかって?

俺には秘策がある!


「おっ!小さいお客さんだね!何か買っていくのかい?」


「あのね、美味しいお肉がほちいの!」


「そうかいそうかい!1つ300ゴールドだよ!」


「えっとね、今お金もってなくて…でも…」


「いいよいいよ!1欠片だけサービスしてやるよ!どうせ小さくて捨てる予定だったしな」


おお!なんと気前のいいおっちゃんだ。

まさか本当にくれるとは。


「あいよ!おまたせ!次からはちゃんと買ってくれよな」


「ありがとうございましゅ!」


やったね!小さいとはいえお肉ゲットだ!


どこか落ち着いて食べれる場所ないかなー。


俺は辺りを見渡す。


あっ、あそことかいいかも。


俺は服屋の路地にある木箱に座り、先程貰ったお肉を頬張った。


うまい!

これ何の肉なんだろう。牛でも豚でもない。噛めば噛むほど旨みが増す。


俺はどんどん肉を口へ運ぶ。


「あれ?もう無くなっちゃった」


食べるのに集中していて、気づいたらお皿の上は空っぽになっていた。


まだ食べ足りないけどなー。

でも、そろそろアリス姉ちゃんも服を選び終わった頃だし戻ろうかな。


「よいしょっと」


俺は木箱から飛び降り服屋に戻ろうとしたその時__


「そこの坊ちゃんよー。少しだけ着いてきてくれるか?」


路地から坊主でいかつい見た目の男が出てきた。


なんだあのすごく怖そうな人。

もしかしてこれって…誘拐!?


「お前貴族の坊ちゃんだろ?大人しく着いてきてもらおうか」


「いや!」


とにかく今は逃げないと!

こいつらに捕まったら終わりだ!


「そうはさせねぇよ」


俺が大通りに出ようとした瞬間、大通りからもう1人眼帯をした男が出てきた。


2対1!?

子供1人に対して大人2人なんて卑怯だぞ!


「悪いが俺たちのジョブは『盗賊 普通級』だ。ただの子供が逃げれると思うなよ」


盗賊…うん、これは大人しく諦めよう…

大人しくしてたら何もしてこないかもだしね。


「降参しましゅ」


「子供の割に物分りが良くて助かるぜ。おい!早く縛れ!」


眼帯の男が坊主の男に命令する。

俺の手に縄が巻き付けられる。


優しくしてくれよ。


「おらよっ!」


男が強く縄を引く。


いたっ!

抵抗しないからもっと優しくしてよ!


俺は袋の中に入れられどこかに運ばれた。


これ本当に生きて帰れるのかな?

なんでこんなにも運が悪いんだよ!




それからしばらく運ばれ、どこかに着いたようだ。


「ここで大人しくしてろ!」


俺は手を縛られたまま地下室に放り込まれた。


全く、もっと優しく扱えないのかな!?

これでも貴族の子供だからね?

怪我でもしたらどうするんだ…いや、貴族の子供だから誘拐されたのか…


とりあえずここから脱出しないと!

今頃母さんや父さんが探している頃だろう。


俺が状況を整理していると、この部屋にもう1人子供がいることに気がついた。


その子はこちらに近づいてきて口を開く。


「君も誘拐されたの?」

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