格安中古物件には、ご用心!
栗頭羆の海豹さん
物件?
此処は魔国ルシフェリアの首都シンマリアの老舗不動産屋ネコ。
王族御用達でもあるこの店に驚きの人物がやって来ていた。
「店主兼会長をさせてもらっています。ハウスです。いや〜それにしてもかの魔母イスネ様がやって来てくれるとは想像すらした事がありませんでした。」
全魔族が長寿種として有名な魔族の中でも長寿として生涯現役を謳っているこの店主ハウスですら伝説でしか聞いた事のない存在の来店に世界樹並みの度胸を持つ心臓を張り裂けそうになっていた。
「その名はあまり好きじゃないんだ。よしてくれ。それに俺は男だ。母というより父だろうに。」
魔母とはイスネがやって来た伝説から付けられた異名である。
今、この世に生息する魔物の祖先は全てイスネが生んだとも言われている為、魔物の母、つまり
でも、イスネ自身は男である為、伝説でしか知らない者たちが勝手に女性像で書物や像を建てられた経験からこの異名を嫌っていた。
「それは申し訳ございません。では、イスネ様、本日はどの様な物件をお探しでしょうか?」
「ペット可の戸建てが欲しい。今の住所から近いと更に良い。金額はこれくらいだ。」
イスネはドサっと机に金塊や宝石がパンパンに詰まった大袋を置いた。
僅かな隙間からでもその価値のある品々にビックリ仰天していたハウスだったが、それよりも驚いたのはこの大袋を取り出したイスネの持っている袋だった。
「まさかそれはアイテムボックスですか?それもかなりの高性能のものですね。」
ハウスは不動産を専門にしているが、長年の商いの経験から様々な者に対しての審美眼を持っていた。
その自慢の眼がイスネの持っているアイテムボックスは自身が見てきた中でも国宝級すら超える代物だと言っていた。
「良く分かったな。これは昔の友人から貰った物なのだ。頑丈で長持ちしているから、今でも使っているお気に入りだ。」
ハウスはそれを聞いて合点がいった。
自分ですら若造どころか赤ん坊レベルの歳の差があるイスネなら激レアなアイテムボックスの中でも更にレアな高性能ボックスを持っていても不思議ではないが、それが昔の友人からとなれば自ずと予想できた。
「それにしても高性能とはな。建物のデザインや素材が変わっても技術は然程、進歩していないと見れるな。」
イスネは永らく自身の領土から出ていなかった為、不動産屋探しにも苦労していた。
昔の街並みとはかけ離れたデザインと建築素材から自身の物は古く不便な物なのではないのか?と思っていたが、このアイテムボックスが高性能なら技術は然程進歩していないのではと思ったのである。
「ハハハ、お恥ずかしい話ですが、あの戦争で失われた技術が大半でして、アイテムボックスもやっと各国で競う様に開発を進めている状態であります。」
「滅んだ種族も多かったって聞くからね。秘術関係は一緒に消したんだろう。」
ハウスの話を聞いたイスネは納得した。
アイテムボックスなどの当時の便利アイテムは様々な種族の秘術を活用したアイテムが多かった。その為、多くの種族は滅ぶならと秘術も一緒に消したのだろうと予想するのは簡単だった。
力の弱い種族程、特殊な秘術を活かす事で力が強い勢力の加護を得ていた。
なので、その生命線である秘術は書物には残さずに伝聞でしか伝えられていなかった。
「あそこら辺の種族は覚悟が決まっていたからな。勢力が負けたと思ったら敵の糧になるならと種族全体で自害するだろうな。」
「仰る通りです。」
特に魔族の技術を奪おうとしたヒューマンによって失った秘術も多かった。
それによって飢饉や疫病が蔓延した事件が起きた。
だから、長らくヒューマンは他種族から嫌われていた。現在においても嫌っている種族は数多くいるのである。
勇者や聖女など種族を超えて尊敬と信頼を寄せられる人格者も出てくることもある為、個体や国の当たり外れが酷い種族として有名なのである。
「昔話はこの辺りにして俺の求める物件はあるか?」
「そうですね・・・これだけの金額なら何処で行けますが、イスネ様クラスの人となると・・・この物件はどうでしょうか?」
ハウスが物件リストを見ながら探しているとある物件が目に留まった数瞬悩んだが、ある意味最適物件だと思って提案することにした。
「旧首都カースス。うん?その何処だ?」
そこに載っていたのは戦争時に滅んだ都。旧首都カーススだったが、今は誰もいない土地の為ペット達を誰の気を使うことなく散歩も遊びも出来る上に今住んでいる場所とも近い為、良い場所だと思ったが、肝心の物件が書かれていなかった。
「このカースス全域が物件です。」
「・・・は?」
まさか、ペットと住む家を買おうとして都市を勧められるとは思ってもいなかったイスネだった。
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