僕が小説を書き始めた理由
@sawaso
第1話 僕が小説を書き始めた理由
これは、数少ないおれの、記憶の塊。
おれは、今、ここにいて。
それで。
大学の頃、たくさんの経験をした。
そのほとんどは、ふわふわとしていたから。
だから、おれは。
なんとなく、断片的に、寝る前とか、夢の中とか、朝起きたときに、思い出すのだ。
大学生時代の、儚くも美しい、思い出たちを。
でも、だからこそ、書き記したい。
ここに。
おれは、この大学に入るために、たっくさん、勉強をしてきた。
というのも、この大学は、外国語学部を有する国公立大学という、国内でも有数の大学であるから、レベルが高かったのだ。
模試では、ずっとE判定かD判定ばかりだった。
それでも、おれは。
この大学に行きたかった。
なぜなら。
自分には、やりたいことが、なかったからだ。
やりたいことがあるなら、何か手に職をつけるために大学に行くと思う。
しかし。
やりたいことがないなら。
文系で就職に強いのは、今の時代はやはり語学だろうと思い立った。
語学を学んでおけば、TOEICでもいい点数が取れるし、それを履歴書に書ける。
その中で、おれの中で、一つのネックになったのが、「留学」だ。
外国語学部は、私立の大学を目指すと、きりがない。
しかし。
私立は、学費が国公立の倍はかかるのだ。
国公立の大学に行けば、学費が浮いた分で、留学に行ける。
留学に行けば、語学を身に着けることができる。
そうしておれは、留学に行けてなおかつTOEICでもいい点数が取れる可能性のある、国公立の外国語学部、英米学科へと進んだ。
そこは、家からドアtoドアで二時間かかるほどの距離だった。
それでも、通いたいと思えるほどに、その大学への想いが強かった。
今日は、入学式。
この大学に来るには、約5回目だろう。
受験の日に一回、なかよし会で一回、パソコン教室で一回……。
今日で、四回目か。
おれは、親に送ってもらった。
それで、式の前に親と一緒に、学校名の札が立っているところで写真を撮った。
そのあとに、式が開催される。
これから始まる大学生活に、胸を震わせている。
「おれ、達也っていうんだ、よろしく」
隣の席の男が、話しかけてきた。
「おう、よろしく」
「お前は、名前、なんていうの」
そんなやりとりが続き、入学式も終わり、おれは家に帰った。
別に、大学に入ったからといって、何かが変わったわけではない。
知らない人がたくさん増えただけ。
でも。
最初の履修登録は、結構大変だった。
どんな授業を取ればいいのか、わからなかったから。
そんな時に、達也に助けてもらった。
それで、おれは。
たくさんの授業をとることになった。
月曜日は、一般教養の授業と、中国語の授業。
専攻言語は英語なんだけど、中国語とかもやらないといけないらしいから仕方なく取ったんだけど、発音と単語と意味を同時に覚えないといけないから、これがなかなか難しくって、うまくいかないと思うことが多かった。
そんな中で、サークル見学も、順調に進めていった。
おれがまず見学をしたのは、フットサルサークル。
小学校の頃にサッカーをやっていたことがあって、大学でも久々にやってみようと思ったという些細なきっかけだ。
でも、フットサルサークルには、入らなかった。
中高でやっていた剣道の方に、結局流れた。
剣道部に行くと、そこにいるのは男子四人。
文系大学で女子が多く、肩身の狭い思いをしていたから、そこはおれにとってのオアシスだと思った。
次の週には体験もした。
面を付けて、剣道をした。
近距離で繰り出していく攻撃は、結構奥が深く、面白い。
それで、剣道サークルに入るわけなんだけど。
最初に新入生がそろったタイミングで、男子と女子が半々だった。
女子の中に、一人、目がぱっちりしていて、ポニーテールの人に、おれは心を射抜かれた。気がした。その子の名前は、菜月、だった。
それで、一人ずつ自己紹介をしながら、みんながみんなで場を盛り上げた。
そのメンバーで、飲み会に行った。
飲み会では、先輩がじゃんけんで負けた人が飲むみたいなことをやっていて、面白かった。
好きなアーティストを言っていったりする中で、菜月とおれの好きなアーティストが被ったために、菜月が、一緒にライブに行きたい、と言い出した。
おれは、それをあほみたいに本気にした。
菜月とおれは、帰り道も一緒だったために、一緒に帰った。
それで、その好きなアーティストの話でたくさん盛り上がった。
「じゃあね、透。」
「じゃあね、菜月。また、ライブに行こうね。」
「うん。」
浮かれながら、おれは電車を乗り換えた。
電車を乗り換えた先で、高校時代の塾のチューターに会った。
「いま、就活で山梨に行ってて。」
「山梨ですか。就活も大変なんですね。」
「そう。全然決まらなくてね、なかなか大変なんだよ。透君は?」
「僕は、いま、サークルで仲良くなった女の子と一緒に帰ってたんですよ。」
「あー、そうなんだ。いいねえ、一番いい時期じゃん。一年の、5月。」
「そう、かもしれないですね。」
大学への往復4時間は、結構過酷で。
動画を見たり、漫画を読んだり、小説を読んだりして、時間をつぶすことになるんだけど。
でも、それが案外よかったりして。
で、おれはその菜月って人のことを簡単に気になり始めるわけなんだけど、いかんせん高校の頃の恋愛の失敗があるから、なかなか一歩が踏み出せない。
高校の頃好きな人がいて、その子をA子ちゃんとでも名付けようか、A子ちゃんに近づこうと色々な手を尽くしたわけなんだけども全部失敗に終わって、結局告白をするんだけどダメで元々だからダメだったみたいな感じで終わってしまって、だからこれからは受験に集中しようとか思って受験に集中をするはいいもののA子ちゃんとすれ違うとめっちゃ気まずかったりした思い出があるから。
だから、人を好きになるのはなかなか怖かったりとかして、だから、菜月さんになかなかアプローチできずにいる。
大学生になったからかな、高校の恋愛話とかめっちゃ聞かされて、それで成功している奴らを見ていると、何で自分は高校の時にあんなうまくいかなかったんだろうみたいな後悔の念に打ちひしがれるんだけど、別にそんな心に打ちひしがれたところで何が変わるわけでもないから、恋バナはぼーっと聞いている男子っていうのがおれ。
でも、結局高校の頃に彼女がいたやつは勝ち組みたいに扱われるようなそんな大学の中での文化はそんなに好きではないから、大学でいざ彼女を作ってやろうって思うわけなんだけど、じゃあ誰にアプローチするのっていったら結局菜月さんになってしまうわけで、菜月さんはそこまでおれのことが興味があるのかないのかよくわからないような感じだから、余計に全然どうすればいいのかわからないでいる。
一年生のうちは、塾でバイトを始めたりとか、基礎的な授業、例えば一般教養とかをたくさん取って、なんとかかんとかって過ごした。結構楽しい思い出もたくさんあって、例えばみんなで行った合宿。学科のみんなで行った合宿は、なかなかいい思い出になった。学科の中でもなんかタイプの子はいて、その子をB子と名付けたとして、B子はタイプだったけど、こっちには全く興味なさげだったから、結局は菜月さんのことを思い続けることになるわけで。
でも、剣道は結構楽しくて、本当に格ゲーやってるみたいな感じするし、相手が次どんな技を出すかなんてことまで考えるから、一本取った時にはすごい爽快感とかもあるし。
で、二年になるわけだけど、二年になったら結局サッカーが忘れられずに、おれはサッカーサークルに入ることになる。サッカーサークルでは、すごくたくさんの人がいて、そのなかでも友達は結構できて、でも自分にはブランクがあるからあんまりうまくはいかなくて、何がうまくいかないっていうのはプレーのことなんだけど、うまくいかなかったから、よく注意されたりとかもしたんだけど,まあ何やかんややってはいけたから、よかったなぁとは思ったりもする。
そんな中で、学科でおれに思いを寄せてくれている人がいて、一緒に花火大会とか行ったんだけど、結局菜月さんのことが忘れらずに、告白をしなかった。
それで、三年生になって、サークルはいつも月曜日だったんだけど、時々土曜日のサークルにも参加をしていて、土曜日のサークルは社会人との合同練習だったりして、そこに混ぜてもらったりしていた。その帰りに、先輩に、今好きな人がいるんですけど、どうすればいいんですかなんていう質問を投げかけた。先輩は、告白をすればいいんじゃないって勧めてくれた。おれは、空き教室に菜月さんを呼び出して、告白をした。3日待ってと言われて、3日待ったんだけど、返事はLINEでごめんなさいだった。おれは、悲しみに打ちひしがれて、でもそのときは、就活も迫っていたから、それからおれは就活に専念するわけなんだけど、往復四時間の通学時間で小説,漫画、ドラマ、アニメ、映画、ドラマ、たくさんの媒体に触れたから、おれは、原作を映像化する仕事に就きたいと考えた。でも、その考えに至ったのは、就活解禁直前だった。おれは、急いで出版社にエントリーシートを出しては落ちて、一社は受け入れてくれたんだけど、でも、その後すぐに落とされた。おれは、テレビ局のアニメ局に志望変更をして、四年の後期に、3年の新卒として応募することにした。それからは、卒論と就活の戦いで、睡眠時間を相当削って戦った。それでも、うまくいかなかった。おれは、内定をもらっている全く別の業界への入社が決まった。
夜のストリートフットサル。
先輩に、小説家を目指してますって、初めて宣言した。
彼女ができた。
彼女と、DVD屋さんに行って、DVDを選びながら、おれは、この作品いいよ!この作品も!って、言い続けた。
それで、おれは、こんな、難しい業界を受けるなんて、バカに思うよな、的なことを口走ってしまったんだ。
でも、その彼女は、こういった。
「やりたいことが見つかるのは,当たり前のことだよ。だって、あんなに作品について詳しいんだもん。だから、大丈夫だよ。」
おれは、彼女に、漫画を描いて、一ヶ月記念のプレゼントをした。
彼女は、泣いて喜んでくれた。
3月31日締め切りの、新人賞に応募しようと決意したのは、卒論を出し終えてからだった。
出版社やテレビ局を受けていた時に、どうすれば物語を盛り上げることができるのか、的なことをずーっと考えていたから、それをしようという考えに至ったのだと思う。
それからは、うつ感情と闘いながら、毎日カフェに通って、書いていた。
おれは、その新人賞に作品を提出し、次の日に、入社式を迎えた。
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