第41話 兵は詭道なり
がしゃらん……………………
「ぶへっ! ぺっぺっ!」
瓦礫の山の中から康隆が現れた!
「おい大丈夫か!」
「大丈夫だ! 実はずっと隠れて様子見てたんだよ!」
「何やってんだお前!」
いい加減な康隆の行動に呆れる蒙波だが、康隆は冷静だ。
「まあまあ、月婆からもきつく言われてたんだよ。『勝てない相手とは戦うな。やり過ごせ』ってね」
「あの婆さんはろくなこと教えねぇな……」
あきれ顔になる蒙波だがあることに気づいた。
「と言うことは……」
「あんな化け物だが、やりようはあるんだよ!」
そう言って康隆は大声を上げた。
「慎之介さん! 慎之介さん! どこですか!」
「ここだ!」
ザシュッ!
目の前に居た砂糖男を切り捨てて、慎之介が近寄ってくる!
「どうした!?」
「千穂はどこですか!」
「ここよ!」
慎之介の後ろからひょこっと出てくる千穂。
すると……
ガキィン!
「おっと!」
「蒙波! こいつを頼む!」
「わかった!」
そう言って相手を入れ替える二人。
康隆は千穂に向かって言った。
「利平治の死霊に経を唱えてくれ!」
「でも! さっきから死霊成仏経が効かなくて!」
「違う!」
康隆はにやりと笑った。
「法力消失経だ!」
「えっ? でも……」
「良いからさっさとやれ!」
「わかったわよ!」
言われて慌てて経を唱える千穂。
「法力消失発願!」
そう叫ぶと同時に利平治の死霊に光の珠が飛んでいき……
パシュン……
あっさりと消えた!
「「なぁっ!」」
あまりのことに驚く鬼平とその他大勢!
それを見て大声で叫ぶ康隆!
「ありゃ死霊じゃない! ただの幻影だったんだよ!」
「なぁにぃ!」
鬼平がわなわなと手を震わせる!
単純と言えば単純な罠である。
だが、これほどの戦いのど真ん中では間違えるのも致し方ない。
隠れて様子をうかがっていた康隆だからこそ冷静に考えられて分かったことである。
続いて康隆は上に飛んでいる加奈に向かって叫んだ!
「てめぇ! よくも騙してくれたな! 男の純情返せ!」
「あんたみたいな芋侍に夢見せてあげただけ感謝して欲しいね! こいつをくれてやるよぉ!」
ぼわぁん!
そう叫んで炎の法術を康隆に打ち込んでくる加奈!
だが……
ひょひょい♪
あっさりと避ける康隆。
「どうした? この程度かぁ? 大したことねぇな」
それを聞いて加奈が少しだけ柳眉を上げて再び法術を打ち込む!
「「「「「これならどうだい!」」」」」
ボビキカァン!
雷、炎、水、氷、風、土の法術が生まれ、康隆に殺到する!
だが……
ひょひょひょい♪
ボゴゴガキィン!
法術は何もない大地に当たって終わる。
その様子を見て、周りの武士たちがきょとんとする。
「「「「何で?」」」」
加奈の法術は六属性……雷、炎、氷、風、水、土の属性の魔法を同時に放ってくる。
なのにそのすべてを康隆は避けてみせているのだ。
ぼそっと近くに居た蒙波に呟く康隆。
「今の間に妖怪たちを退治して……アイツが邪魔さえしなければ倒せるから……」
そう蒙波に聞こえる声で呟いてすぐに「もっと撃って来いよ!」と大声で挑発する康隆。
蒙波は慌ててこそっと鬼平に言った。
「あいつが加奈を引き付けるそうです! 今のうちに!」
「わかった!」
そう言って鬼平が改めて妖怪退治に参加する!
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