60.見覚えのない大量の荷物
砦の一室で、届いた荷物を開封する。木箱に詰まった服や装飾品、たぶん日用雑貨も入っているだろう。デジレが工具で
コレットはこまめに釘を回収していく。落ちたままにして、開封した荷物に紛れると危険だものね。開いた箱を覗けば、私の夏服が入っていた。半袖だったり、薄い生地の五分袖だったり。半袖の際に使用する上掛けも入っていた。
軽やかな生地で明るい色を中心に、様々な服が出てくる。一枚ずつ丁寧に確認するクロエの手が止まった。
「これは……新しい服でしょうか」
「私も見覚えがないわ」
さり気なく混ぜてあるけれど、袖を通した記憶がない。鮮やかなオレンジ色のワンピースだった。ドレスと呼ぶには裾丈が足りない。普段着に近いワンピースの下から、またもや見覚えのない服が……。
「クロエ、知っている服と見覚えがない服を分けてくれる?」
「承知しました」
知ってる、知らない、覚えている、覚えていない。二人で分類していく側から、セリアが丁寧に吊るした。多少シワがあっても、吊るしておけば直るのよね。箱の底まで確認し、次の箱に取り掛かった。
コレットとデジレが協力して箱を開ける作業に、扉の前に立つ騎士から声がかかった。力仕事は任せてほしいと言うので、箱の開封作業だけお願いする。中身は見ないよう注意しながら、すべての箱の釘を抜いてもらった。
下着のある箱もあるから、気をつけないと。荷物はすべて袋に入れてから箱に詰められたけれど、万が一があったら恥ずかしいわ。終わった騎士にお礼を言うと、彼らは一礼して扉の外へ戻った。
「デジレ、彼らに冷たいお茶をお願い」
「承知いたしました」
遠慮されないよう、全員分を用意したデジレはえらいわ。私達も水分補給して、再び荷物に取り掛かった。木の蓋をずらし、中身を確認していく。二つ目が下着、三つ目は宝飾品や化粧道具も入っていた。四個目は冬服、五個目になると疲れてしまう。
「今日はここまでにしましょう」
「そうですね。残りは半分ですし」
クロエが苦笑いし、明日以降に作業することに同意した。下着や化粧道具などにも、見覚えのない品が混じっている。私が荷造りした後で、足したみたいね。
過保護すぎる両親と兄姉を思い浮かべ、私は苦笑した。やっぱり、全部確認してからお礼の手紙を書くべきだわ。
お昼を片手間で済ませたため、その話を執事から聞いたエル様に叱られてしまった。育ち盛りなのに、食事をおろそかにするのはダメだと。なぜかしら、叱るエル様のお顔が輝いてみえて見惚れる。叱られるのも嬉しいなんて、私、おかしいのかも。
夕食はいつもより品数も量も多くて、勧められるまま苦しくなるまで食べた。グラタンもスープもサラダも、メインの肉料理も美味しい。香辛料たっぷりの揚げ魚は、絶品だった。
お昼の罰だと言われ、膝の上で「あーん」をしてもらって食べる。真剣なエル様には悪いけれど、これは罰じゃなくてご褒美だわ。お陰で食べ過ぎて、お腹をさすりながら眠ることになった。
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