第3話 4月1日 実況と解説ー3

 「現在、時刻は14時を回ったところです。

 ゲーム開始から1時間ほどですので、まだ、各精鋭に目立った動きはありません。

 各精鋭の状況を見て参りましょう。

 ……。

 河上は相変わらずオフィス街を動いていません。降り立った場所に座り込んでいますね。動く気配は今のところ無いようです。

 ……。

 相川は中学校周辺を散策しているようです。潜伏場所でも探しているのかもしれません。

 ……。次は、渡辺ですね。

 渡辺も森から微動だにしていません。

 ……。

 加藤は住宅街を散策しているようです。周囲をキョロキョロと確認するような動きをしていますので、周辺状況を確認しているようですね。こちらも潜伏先を探しているのかもしれません。

 次は……、酒井ですね。

 酒井は高校のグラウンドから一歩も動いていませんね。

 井上も同じく小学校から一歩も動いていません。

 ……。

 田之上は工場地帯の建物の中に入ったようです。

 建物の中に入っても24時間は潜伏できますからね。時間を潰すつもりかもしれません。

 さぁ、最後に清川はどこにいますでしょうか?

 ……。

 清川を追っている八咫烏カメラがしきりに警察署の建物を写していますが……。

 カメラのレンズは何を捉えているのでしょうか……。

 カメラのレンズをズームにしてもらえますか。

 ……。

 ……。

 あっ……。清川ですね……。

 警察署の中に清川がいるようです。

 警察署内の玄関ロビーのベンチに清川が座っています。

 あっ……、制服姿の男性警察官が清川に話しかけていますね。

 清川が立ち上がって、襷掛けにしたショルダーバックの中に右手を差し込んでいます。

 今、何かを取り出し警察官に渡していますね。

 何を渡しているのでしょうか……?

 カメラで清川の手元をズームできますか?

 ……。

 これは……、IDでしょうか……。

 もしかして、清川……。職務質問されてますか?

 奪衣婆様!!清川は、職質を受けているように見えますが……」


 「そうですね……。職質ですか……。しかし、裏若き17歳の少女を職質する警察官がいますでしょうか?何か、清川の企みかもしれませんよ。最近の若い人は突拍子もない事を考えつく事も多いので……」


 「そうですね……。確かに、高校生が補導されている姿はたまに都会の夜の帳の中で見かける事はありますが、職質は……、なかなか見ませんね……。

 あっ……、誰かが二人に近づいてきますよ……。

 今、誰かが清川と警察官の間に入りましたね。

 白杖を持っています。男性でしょうか。少し細身の男性ですね。

 目にはサングラスをかけて、白杖を持っているところを見ると、視覚障害者のようです。

 清川と警察官と3人で何やら話しています。

 ……。

 警察官が立ち去りましたね。

 視覚障害者と清川が何やら話しています。

 ……。

 視覚障害の方が立ち去りました。

 清川は、ロビーの椅子に座り直しましたね。キョロキョロと辺りを見回しています。

 ……。

 あっ……、こちらと目が合いましたね。

 清川は八咫烏カメラの位置を確認しているようです。

 チラチラとカメラに目線を配ってきますね……。しかし、特に動こうとはしません。

 あ…、今度は制服姿の婦人警官が近寄ってきました。

 清川に何かを渡しています……。

 何を渡しているのでしょうか?

 これは……、紙コップですか……?

 お茶……でしょうか……?

 ……。

 清川、警察署でお茶をいただいているようです。

 奪衣婆様!!清川は警察署でゆっくりお茶をいただいているようですよ!!」


 「うーん。肝の座った17歳といったところでしょうか……。マイペースですね……」


 「しかし、奪衣婆様。先ほどの視覚障害者が何故、清川と警察官の間に入ったのか気になるところですが……、あの清川のゆっくりした様子を見るからに……、あまり気にしなくてもいいのかもしれませんね」


 「そうですね。ただ、道を尋ねにきた方なだけかもしれません。幻夢の町は現世の理と同じように動いていますからね。特に気にする必要はないかもしれません」


 「通りすがりの方でしょうかね……。

 さて、今の所、特に精鋭たちに大きな変化はありません。引き続き、状況を見守ってまいりましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る