ベルガモットの踊り場
森音藍斗
10
「最近、どう?」
社会人になって四年が経った四月末。一年目のころから私をよく見ていてくれる生村さんの、その曖昧な問いでも、何を聞かれているかはすぐにわかった。
「そうですね……。一回席替えしちゃうと、もう痕跡がないみたいで寂しいですね」
「あー、だよねえ」
生村さんが咥えた煙草からベルガモットの香りが漂い、そしてすぐに風に流されて消える。
「飯でも行きたいって言ってたよ」
主語のないその言葉に、私の心臓がきゅっと鳴る。
「どうする?」
……どうするって――
私は迷い迷い、口を開く。
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