第26話 傷んだ武具
イバヤ遺跡で出会ったミレイユを救い、彼女はパーティーの一員となり、共に冒険するようになった。
ミレイユが仲間になって約一ヶ月————————。
「ふーっ、これで討伐すべきモンスターは全部片づけられたな!」
「中々厄介でしたけど、一件落着ですね!」
「村長に報告して、ギルドに帰りましょう!」
俺達はDランク向けのクエストである村に迷惑を与え始めている水棲系のモンスターであるレア度Dの“クルドリザード”20体ほどの討伐を終わらせていた。
ティリルから離れた農村で野菜や果物が荒らされている事に頭を悩ましている村長さんからギルドに依頼を発注し、これを引き受ける事を決めた。
“クルドリザード”は体長2メートル近くで鱗そのものは以前に倒した事のある“オーガナイト”と比べれば大分柔らかいものの、鋭い牙や爪を持っており、かなり凶暴である。
相手が爬虫類ならばミレイユの【氷魔法】と相性が良いと判断してクエストに臨んだものの、予想通り作戦がハマった。
「トーマさんの言った通り、ミレイユの【氷魔法】は爬虫類系のモンスターに良く効きますね!」
「うん、予想が当たればと思ってやってみたけど、上手くいって何よりだよ!ありがとうな、ミレイユ!」
「いえ、それほどでも……」
俺がミレイユを褒めると、彼女は少し頬を赤らめた。
セリカやミレイユって、アラサーの俺から見てもかなり美人で可愛らしいんだよな。
俺がいた世界でオシャレな服をパリッと着こなして街を歩けば絶対にスカウトが来そうなくらいだと見ている。
ふと、そう思う俺だった。
「村長さん、“クルドリザード”の討伐を完了しました。もう大丈夫ですよ!」
「ありがとうございます。来ていただいたのがあなた達で本当に助かりました」
俺達は村長さんに討伐を完了した事を報告して安心させた。
それからギルドに戻ってクエスト達成の手続きを済ませて報酬を受け取った。
「「「カンパーイ!」」」
夕暮れなのもあってか、そのままギルド飯を堪能した。
俺とセリカだけの時でも楽しかったが、ミレイユの加入のお陰でパーティー内も一層賑やかになった。
「クエスト終わりの一杯は最高だな~!」
「身体を動かした後のエールと唐揚げのセットやピザはもう定番です!」
「お野菜もちゃんと食べなきゃですけどね!これ野菜スティックですよ~」
「後でデザートも~!」
「あ、それ私も賛成!」
ミレイユが入ってきてからセリカの表情も益々とイキイキするようになった。
セリカにとってミレイユは同じ女性の冒険者で同世代だから自然と馬が合っていた。
前のパーティーにいた頃は冷遇されていたせいで自信を見失っていたミレイユも、今では本来の姿であろう気さくで快活な女性になっていった。
セリカは顔立ちだけではなく、モデルのようにスタイルも整っているのだが、ミレイユも身長だけなら数センチ小さいくらいで負けず劣らずに容姿も良い。
溌剌とした笑顔のミレイユは本当に素敵だ。
「よし、じゃあ俺も締めのデザートでも食べてみるか!」
「トーマさん、甘い物はお好きなんですか?」
「実を言うと好きなんだよね!」
「本当ですか?じゃあ皆で選びましょう!」
セリカとミレイユに腕を組まれながらデザートコーナーに引っ張られた。
俺ももっと女性が好きそうな事について色々と情報を仕入れていかないとな。
そしてセリカの家へと辿り着いた。
「「ん~~~」」
「どうしました?トーマさん?ミレイユも服をジーッと見てて……」
「この剣、リペアフルードで保守は怠らないようにしているんだけど、大分傷んできているように見えるんだよな~」
「私のスペアのローブも何年も前から使い込んできてるけど、ちょっとボロくなって……」
「あ~、これは……」
セリカが見ていると、俺が普段使っている剣やミレイユが着ているローブはもう寿命が来ている事を分からせるには充分に摩耗していた。
いくらリペアフルードで日頃から手入れをしていても、あくまでも寿命を延ばすだけであって無限に使えるわけではない。
“ブルースライム”や“ゴブリンポーン”や“ゴブリンソルジャー”等が相手ならばまだ使えるが、レア度Dのモンスターを相手にし続けるとなれば話は変わってくる。
今のままクエストに挑み続ければ、必ずポッキリ折れて使い物にならなくなってしまい、武器がない状態でやろうとすれば命にもかかわってくる。
「セリカ、これって……」
「やっぱり……」
「……」
俺とミレイユはセリカに目を見やると……。
「武器の新調が必要ですね」
セリカは分かり切った表情で決断した。
冒険者としての知見や心得がしっかりしているセリカが言うならば、それを汲み取ろう。
「そうだよな。明日武器屋とかに行くか!」
「私は前のパーティーからもらった賠償金がまだ残っているのでそれを使おうと思っています!ティリルでも良質なモノが揃っている武器屋があるので、そこに行きましょう!」
「今日稼いだ分を含めてこの一ヶ月で得た報酬分があるので、大丈夫です!」
「じゃあ、明日行こうか」
こうして俺達は武具の新調に踏み切るのだった。
俺達はどんなモノを購入するかを考え直しながら夜を過ごした。
新しい武器か~。ワクワクするな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます