第3話 やめたほうが、いいんじゃね?
結局、いまだに自分でも理解できないような不思議な部署の担当として、見知らぬ国ルクセンブルグに移住することになった私。
そうだ、まだ誰にも話してないじゃん。あれ、こんな重要なこと、だれにも相談しないで決めちゃった??
そう、決めちゃったのです。
はぁ...もう少し慎重にいけばよかったかな。いったい何を考えていたんだ、私は。でも自分で決めたんだから、家族や友人に連絡しなきゃ。
日ごろから家族との付き合いが希薄な私は、まず最初に思いついたのがいわゆる「アワ友」。時々一緒にシャンパンやスパークリングワインを飲みながらおしゃべりする友人。そうだ。まずは彼女に伝えよう。
アワを楽しみながら、一通りおしゃべりしたところで、「そういえば私、今度転勤するんだ。ルクセンブルグ」と切り出した。
その時の彼女の反応ったら。「はぁ??何それ。これから一緒に飲めなくなっちゃうじゃん!」、ってそこですか??
ここまで生きてきて、教訓として知っているのになかなか実践できないこと。それは、「重要な話はお酒を飲みながらすべきではない」ということ。
とはいえこの日はまだ酔いが回っておらず、その後は普通にまじめな話ができた。少なくとも3杯目くらいまでは。
「言っちゃ悪いけどさ、もうそれなりの年でさ、いつまで健康かだってわからないじゃん。無理しなくったっていいんじゃない、っていうかやめたほうがいいんじゃね?」
これだから親友はありがたい。グサッと来ることを直球で言ってくれる。うん。言ってることはよくわかるよ。おっしゃる通りだ。
とはいえ、もう決めちゃったんだよね...。
よし。これで他の人の大体の反応は予想ができた。ここからは次々と古くからの友人、お世話になった人、そして家族に報告していった。そう。お酒抜きで。
みんなの反応は同じような感じ。「もう年だ」、「女一人で心配だ」、「いまさら何を」「っていうか、ルクセンブルグって何、どこ?どうせならアメリカとかにすればよかったのに」などなど。
まぁみんなネガティブですな。
唯一、家族の反応は「へーそうなんだ」といたってニュートラル。これはこれで思うところがあるものの、まぁ関係が希薄だから仕方ないか。
よし、みんなの反応はわかったよ。さぁ、準備に入ろう、と切り替えが早い私だった。
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