女50代、一人でルクセンブルグに移住した件

みひろ

第1話 ところで、次は何やりたいの?

忘れもしない2022年3月の上司との会話。

「もう君は何年も同じ仕事してるけど、次は何やりたいの?」


毎年3月には年間査定の一環として聞かれるこの質問。今年もいつもと同じように今の仕事は気に入っているのでこのまま続けたい、と答えるつもりだった。


だが、気づいてみたら、もうこの仕事は飽きた、違う仕事がしたい、日本に住むのはうんざり、何か違う仕事をさせてほしい、と熱く語っていたのだった。こうなると話がとまらない。どこで区切っていいのかタイミングがつかめない。うーん、どうしよう。。。


最低2回は同じような話を繰り返したところで、上司から提示されたのは、新しい仕事。そして新しい勤務地、アメリカ。


仕事内容より勤務地に引っ掛かり、アメリカはちょっと、と渋っていると、ではロンドン、ベルリン、アイルランド、ルクセンブルグのどれかだな、となった。うん、その中だったらルクセンブルグかな、と言ったつもりが、語尾の「かな」が聞こえなかったらしく、その10分程度の会話でルクセンブルグに移住することになってしまった。


あれ、ルクセンブルグって一度しか行ったことがないけど、確か日本からも直行便がない、小さい国ではなかったかしら。公用語は何だったっけ。全然知らない国に行く、ということをいとも簡単に決めてしまった、と気づいたのは電話を切った後だった。


考えたら説明された仕事内容だってよく覚えていない。普通、勤務地より仕事内容の確認が先だろ...と自分にツッコミを入れながらその日は、ルクセンブルグについてググってみた。


ドイツ、フランス、ベルギーに国境を接する小さな国。過去にはフランスやドイツに侵攻された歴史を持ち、文化や言語もこれらの国々の影響を大きく受けている。海外からの勤務者が多い。公用語はフランス語、ドイツ語、ルクセンブルグ語。英語は比較的通じやすい、とのこと。


うーん、仕方がない。どうなるかわからないけど、行ってみるかな。だめだったら帰ってくればいいんだし。前途多難なような、楽しみのような、不思議な感覚でその日はよく眠れなかった。


ということで、このエッセイでは移住のこと、現地での生活のことなど、ご紹介していきます。






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