春の通勤事情

白雪れもん

第1話 存在意義

人類と宇宙人が共同で生活し始めてから5年が過ぎた頃の一人の通勤風景をお見せしよう。


 もう町中に腕が複数ある男や目が複数ある女などがいるのも違和感を感じなくなっていた。

 だが俺はこの街に溶け込んだとは思っていない。俺はまだ宇宙人のことを信用していない。

 恐らくそんなものはない口にしないだけでゴロゴロいるであろう


「ギュイーン!ギュイーン!緊急地震速報です。強い揺れに警戒してください。」


 警報が鳴り始めたいつ聞いてもこの音は不安になるもんだ

 でもこんな時代、警報が鳴るだけで建物がガタガタ揺れるなんて漫画の表現くらいしかない

「大丈夫だろ、会社行くか。」

 俺は音に不安を感じはしたが、通勤などには全く不安は感じていない

 早く会社について自分の机で勤務時間までに絵をかいたり小説よ読んだりして待っていようか。

 ザワザワ――― 朝の駅前がこんなに落ち着かないと知ったのは始めて会社の面接に行く、朝九時の時だ。

 落ち着かなく、騒がしく、小説なんか読む気にならない、やはり安パイは新聞だな

 ん、また近所の小学生が通学途中で俺の顔を見てクスクス笑っている。

 まぁ慣れてはいるが、いつ笑われても嫌なもんだな。

 自分の顔にはあまり自信がないからそう自己暗示しとけば少しはマシと感じるようになった。

 ガタンガタン――― 電車が走る音が耳に聞こえてくる。

 こんなザワザワしているのに耳にはっきり聞こえるのはなぜだろう。

 おっと、急いで並ばなければ乗り遅れて小説を読む時間が無くなってしまう。

 後たった十ページクライマックス真っ最中で社長が出勤した。

 気になって気になって仕方がない。家に持って帰ってくればよかったと何度思っただろう。

 ファ―――ン 電車がホームにやってきた

 あぁ早く小説が読みたい、足が自然とカタカタと揺れ始め、隣に立っている人

 が苛立っているかもしれないが足が止まらないのだから仕方だないであろう。


 キキキキキキィ―――――!!!


 電車とレールが擦れ削れてる音が聞こえる。

 あぁ、こんな世界に生まれてこなければよかった。これだから宇宙人………


 人間と関わりたくなかったんだ。


 二十分後、病院に運ばれて死亡が確認された。

 事故が起き、頭を打ち血が流れていたその遺体は、少し笑っていたという


 自分はもう目覚めることが無いであろうが、もし目覚めることができるのであれば、もっといい世界に生まれ変わりたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

春の通勤事情 白雪れもん @tokiwa7799yanwenri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る