第7話 おかしいのは周知の事実
「なぁ、バトムス。そろそろモンスターと戦ってみるか?」
「……良いんですか?」
訓練時に相手をしてもらっている騎士から、そろそろモンスターという魔獣を相手に戦ってみるかと提案されたバトムス。
そんな騎士に対して、色んな意味で「良いんですか?」と返したバトムス。
第一にモンスターという魔獣を相手と戦うということに関しては、強い興味を持っていた。
そもそも、いずれはモンスターと戦ってみたいからこそ、必死で訓練を積み重ねてきたまである。
故に、騎士からの提案は非常に嬉しい。
しかし……バトムスはしっかりと自分が五歳の子供であることを自覚している。
身体強化というスキルを会得しており、最近では魔力という力を引き出せるようになった。
アブルシオ辺境伯家に仕えている魔術師曰く、将来的には魔法系のスキルを会得出来る可能性が十分にある。
それを聞いたバトムスは小躍りしたくなり、人伝にその話を聞いたルチアはバトムスに対して更に対抗心を燃やすことになった。
「スライムとかゴブリンとかなら十分にいけると思うぜ。俺とかが一緒に付いて行けば、万が一が起こることもねぇしな」
バトムスにモンスターとの戦闘を提案してきた騎士は、若手騎士の中でも有望株の騎士。
モンスターには下からF、E、D、C、B、A、Sと強さ順にランク別けされており、男は戦闘者として一流レベルでなければ倒せないBランクのモンスターを単独で倒せる戦闘力を有している。
「それに、金持ってるんだから良いマジックアイテムを買えるだろ。身に付ければ、マジでスライムとかゴブリンなら倒せるぜ」
「………………分かりました。では、準備が出来たら声を掛けても良いですか」
「おぅ、楽しみに待ってんぜ」
騎士との会話を終えてから就寝するまで、バトムスはずっと騎士と話した内容について考えていた。
そして翌日……覚悟が決まったバトムスは丁度休日で暇そうにしていた正式に従者として働いている男を捕まえ、昼飯を奢るからと交渉し……外出。
「バトムス、昼飯を奢ってくれるのは嬉しいが、何を買いに行くつもりなんだ?」
バトムスという少年が色々とおかしいと解っている彼は、まだ五歳という少年に飯を奢ってもらうことに、全く恥を感じていなかった。
「ちょっとマジックアイテムを購入しようと思って」
「なるほどね。また新しい料理を作るのに、特殊なマジックアイテムが必要になったのか?」
「いえ。今日は、実戦で使える強化系のマジックアイテムを購入しようと思って」
「実戦で使える、マジックアイテムねぇ…………ん? 実戦???」
現役執事の男は、自分の聞き間違えかと疑ってしまう。
「待て、待て待て待て。バトムス、ただ強化系のマジックアイテムを買うだけじゃないのか?」
「はい。今度実戦で使います。というか、実戦を行うからこそ、強化系のマジックアイテムを買いたいんです」
「い、いや。それはそうかもしれないが……」
バトムスが言いたい事は解る。
解るのだが、男もしっかりとバトムスがまだ五歳の子供であることは忘れていない。
「勿論、騎士の人に護衛を付いてもらいます」
「……因みに、その護衛は誰なんだ」
「ジーニスさんです」
「ジーニス、か…………そうだな。あいつの強さなら……」
男は戦闘も出来る執事であり、体が鈍らない様に時折騎士の訓練に参加している。
(若手の中でも、飛び抜けて強いあいつが護衛として同行するなら……いやしかし、バトムスはまだ五歳……)
若手騎士の中でも、頭一つか二つ抜けている存在であることは理解しているが、それでもバトムスがまだ五歳という点に関して不安が残る。
そんな事を考えている間に、マジックアイテムが売っている店に到着。
外装も内装も立派な店。
金を持ってなさそうな者が入る店ではないが……現役執事の男はパリッとした清潔かつ男らしい容姿を持っている。
バトムスに関しては当然、まだ外見はザ・子供ではあるものの、従者一家であるディアラ家は……基本的に自由婚ではあるが、多少なりとも条件がある。
その為、貴族程ではないが多少なりとも遺伝子的な意味で強化が行われており、バトムスも子供ながら、それなりに整った顔を持っている。
(さてさて、どれにしようかな~~~)
うきうき気分でショーケースに入れられているマジックアイテムを観察。
そんなバトムスに向けて、従者の男は今更購入するのを……そもそもモンスターと戦うのを止めとけとは言わなかった。
だが、一つだけアドバイスを送った。
「バトムス、選ぶならそこまで効果が高くない物にしておいた方が良いぞ。効果が高い物ほど、慣れるまで時間が掛かる」
「……みたいですね」
変わらずうきうき気分ではあるものの、完全に浮かれてはいない。
懐事情を考えれば、アホみたいに高いマジックアイテムも購入出来るが、バトムスは最終的に二つのマジックアイテムを購入。
貴族の子供が購入するのであれば、と考えればそこまで珍しくはなく、従業員や他の客たちに怪しまれることなく、二人は無事買い物を終えることが出来た。
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