第3話 動画が広まり、性格最悪な男子2人は学校中から無視される

「くそがっ、なんでこんなことになるんだ」


 瑠奈と美緒に縁を切られた日、快児と強太は講義をサボってキャンパス内をウロウロしていた。


 講義を受けていても、瑠奈や美緒が薫にべったりくっついている様子を見てはモヤモヤするだけだったからだ。


「あーイライラする! 快児、腹いせにナンパでもしようぜ」


「へへっ、こうなりゃやけくそだ。手当たり次第に女に声かけてやる」


 完全に自業自得なのだが、彼らは女性陣に縁を切られたストレスを解消するために、大学内の女性たちに手当たり次第に声をかけ始める。


 しかし、徐々におかしいことに気が付き始める。


 どれだけ声をかけても、明らかに避けられている。今まで薫が一緒だった頃は、むしろ女性たちの方から声をかけてくることすらあったのに……。


「なぁ、もしかして今までって薫のヤツがいたから……」


「おい、んなわけねぇだろ。変なこと言うなよ」


「……そうだよな」


 彼らは徐々に自分たちには一切魅力がなく、今まで女性たちが寄ってきていたのは薫がいたからだという事実を感じ始めるが、それを認めたくないのだろう。


「てか、それにしてもおかしくないか?」


「あぁ、なんか明らかに避けられてるっつーか。変な目で見られてるような……」


 彼らが抱いている違和感は間違いではない。


 なぜなら、彼らが薫を理不尽に追い出した動画は学校中に出回っており、快児と強太は悪人としての噂が大学中に広まり始めているのだ。


 そんな様子を見ていたひとりの女性、薫の中学時代の同級生であり、動画を録画して噂を広めた人物でもある西倉 眞澄は満足そうに笑みを浮かべた。


(薫くんに酷いことをした罰だよ。地獄を見ればいい)


 眞澄は中学時代、クラス中から壮絶ないじめを受けていた。物理的にも、精神的にも攻撃を受ける毎日。周りの生徒も教師も見て見ぬふりだった。


 しかしそんな中、身を挺して彼女を助けてくれたのが藤堂 薫だった。その結果、今度は薫がいじめの標的にされ、クラスだけでなく学校中から目の敵にされてしまった。


 クラスが変わり、眞澄はいじめを受けることはなくなったが、薫へのいじめはなくならず、彼はやがて転校という形で学校から姿を消した。


 眞澄はずっと、自分を助けてくれた薫に何もしてあげられなかったことを悔やんでいたのだ。そんな彼女は大学で薫の姿を見つける。


 しかし薫は同じ学部の生徒とグループで仲良くしていることを知り、眞澄は満足した。彼が楽しく大学生活を送っているなら、自分が接触する必要はない。


 しかし先日、たまたま入ったカフェで薫と同じグループの男子2人を発見した。そして彼らが薫の悪口を言い合い、グループから追い出す計画をしている様子を見たとき、彼女は動き出した。


(こいつら、絶対に許さない)


 理不尽に薫を傷つけた大熊 快児と蜂羽 強太。この2人を地獄に叩き落とすと決めたのだ。


 

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