第7挑☆深夜のバトル! 銀色の輝き襲来 後

 銀色の輝きが消えたときには、裏銀の姿もなくなっていた。

 ふと自分の両腕を見ると、元に戻っている。


「チョーさん!」


 俺のもとに、カイソン、ポワロン、モコが集まって来た。


「チョーさん、すごいっす! めっちゃかっこよかったっすよ」


「そうか?」


 カイソンは目をキラキラさせている。なんだよ、照れるじゃねえか。


「モコの能力、すごいでしょ!」


 ポワロンが胸を張った。


「ああ、すげえ。モコ、お前のおかげで勝てたぜ。ありがとな」


 俺はモコの頭をなでた。こいつの能力、確かに使える。ちょっとは大事にしてやらねえとなんねえな。しかし、やっぱり、目がないな。


「それにしても、どうして裏銀と戦うことになったの? あなたたち、酒場に行っただけじゃなかったの?」


 ポワロンに訊ねられて、俺は酒場でシロに声をかけたことや、稲妻と会ったこと、裏銀がシロたちを追いかけようとしていたことなど、一連の経緯を説明した。


「……ふうん。シロと稲妻が、アゲハ陣営がゲットしようとしていたものを盗んだってことかしらね。そんな危険を冒してまで盗むとしたら、レア度の高いバタフライの情報に関わるものかしら」


「レア度の高いバタフライって、最上級レジェンドバタフライとかか?」


「その可能性もあり得るわね」


「シロたち、大丈夫っすかね」


 カイソンが言うと、ポワロンは「なんの心配もいらないと思うわよ」と答えた。


「だって、稲妻はレベル256の上級者だし、シロもレベル200あるわよ」


「256と200だって!? え、ちょっと待て、俺さっき裏銀に勝ったぞ。レベル上がってねえのか?」


「チョーは、レベル7になったわよ」


「レベル7……!」


 あんなガキよりずっとレベル低いなんて。

 俺がショックを受けている隣で、カイソンがポワロンに詰め寄った。


「俺は!? 俺も、一応弾を避けたりしたんだけど!」


「カイソンも一緒にいたから、レベル7になってるわよ」


「おしっ」


「何がおしっ、だよ! お前もモコの能力使って戦えよっ」


 俺がカイソンに突っ込むと、ポワロンが首を横に振った。


「無理よ。モコはチョーの専属ペットだから」


「ええ?」


「カイソンのペットは、次に会うバタフライよ。プレイヤーの登録順が、チョーが先で、カイソンが後だったから」


「なんじゃそりゃ! え~、モコの能力強そうなのに……」


 カイソンは落ち込んでいる。俺はふっと笑って、


「まあまあ、モコの名付け親は俺だし?」


「う〇ことか言ってたじゃないっすか」


「だって似てるじゃん」


 ビシィッ! すかさずモコの触手が飛んできた。


「痛ぇな、こいつ!」


 俺はモコに怒ったが、モコも触手をうねうねさせて怒りを表現している。


「まあまあ、もしかしたらモコよりレア度の高いバタフライに会えるかもしれないしね?」


 カイソンはポワロンになだめられて、「っす」と返事をした。


「じゃあ、明日はカイソンのバタフライ探しに出発だな」


「それなんっすけど、シロたちを追いかけて行ったらレア度の高いバタフライに会える可能性が高いんじゃないっすかね? なんか情報つかんだっぽいんでしょ?」


「おお、名案だな」


「同じ陣営のプレイヤー同士なら、私たちコスモス美人族を通じて連絡を取り合うことができるわ。さっそく、連絡してみましょうか」


 ポワロンが杖を頭の上にかざすと、四角い光が現れた。小型ノートパソコンの画面くらいの大きさだ。光はそのまま、半透明なスクリーンに変わり、森の中の景色が映し出された。

 次にスクリーンに映ったのは、ポワロンそっくりな女の子。ポワロンは茶髪のポニーテールだが、スクリーンの子は黒髪ボブの女の子だ。衣装はポワロンとほぼほぼ同じ、ピンクのドレス。


「……何?」


 おお、めっちゃ不愛想だな。


「スフレ、稲妻とシロと話したいんだけど」


「……こっちは何も話すことはないそうよ。じゃ」


 ぷつっとスクリーンが消えた。俺とカイソンが唖然としていると、ポワロンが激怒した。


「あいつーーーー! 相変わらず冷たいわね! チョー、カイソン、シロたちが向かった方向はわかるのよね!?」


「あ、ああ、なんとなく……」


「じゃあ、明日その方向に進んでみましょう。すれ違う奴全員に聞き込みして、シロたちのあとを追いかけるのよ!」


 おお、なんだかやる気だな。


「で、直接スフレに文句言ってやる。その、人を舐めたような態度取るのをやめなさいってね。コスモス美人族は同じ陣営のプレイヤー間の潤滑油にもならなくちゃいけないのに、あの子は本当に仕事意識が低いというか……」


 何やらぶつぶつ言っているが、あのスフレって妖精とは相性が悪いのか?

 まあ、なんにしたって、行く先が決まったな!


「よし、とにかく今夜は寝るかあ。その前に、小腹が空いたな」


「チョーさん、今金ないっす」


「あああああ、裏銀から金奪るの忘れてた!」


「明日、バトルで稼ぎましょう」


「……はあ。ゲームの世界でもひもじい」


 でも、バトルしていけば、現実世界よりは稼げるのか? 俺はすこーしだけ期待しつつ、カイソンの背中に腕を回してもたれかかりながら、宿に戻った。



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