転生の宇宙  普通の男子高校生が銀河の英雄に!?

咲良喜玖

デルタアングル宙域戦争

第1話 空は青かったはず

 俺の名前は坂巻さかまき あらた

 ごく普通の平凡な高校生だ。

 運動。勉強。顔。身長。座高に靴のサイズ。

 何から何まで平均値の俺の自慢は友達だった。


 「よお。新! 例の新作買った?」


 登校中、陽気な親友の亮は俺の肩に腕を置いた。

 イケメンでスポーツ万能でバスケ部、女の子にモテモテの要素しかない。

 さらに頭脳明晰で、学年でも何度か一位を取るくらいの化け物だ。

 そんで、めちゃくちゃいい奴。

 俺みたいなヒエラルキー最下層の陰キャオタクにもフレンドリーな奴なんだ。

 正直、なんで俺みたいなのをこいつが気に入っているのかが分からない。


 「新作? なんの話だ?」

 「なに言ってんだよ。先月俺たちで遊ぼって言ったじゃん。二人でやろうってさ」

 「先月・・・ああ、わかった。わかった。あれか。乱世創造かぁ。忘れてたわ」

 「そうそう。それ! 思い出したか。俺たち、あれをすげえ楽しみにしてたじゃん。最新のRTSだぜ。RTSとボードゲームはさ。お前の瞬間的な発想力と戦略が絶対に必要なんだよ。俺一人じゃつまんねえしさ。それにお前は俺の右腕。俺たちで最強の国を作ろうって約束してたじゃん」

 「ああ。そうだったわ。一緒にやろうってお前言ってたな・・・・ん。右腕?」

 「おう。お前は俺のゲームの時に絶対に頼りになる男だ。だから俺の右腕だろ。半身って言ってもいいぜ。頭脳でもいい」

 「なんだよそれ・・・つうか、いつ発売日だっけ」

 「昨日だよ。昨日。もしかして、買ってねえのか?」

 「やっば!? 忘れてたわ」

 「んだよ。今日帰ったらすぐに遊ぼうと思ったのによ。早く買えよな。買ったら連絡してくれ。すぐやろうぜ」

 「悪い悪い。帰ったら買うからさ。ダウンロードしておくわ」

 「ああ。はやくしろよな! 楽しみにしてんだからさ」


 言葉は肯定的でも、亮の口は尖ってた。

 めちゃくちゃ拗ねてたんだ。

 パーフェクトヒューマンの亮は、俺にだけ意外な面を見せる。

 それは我儘になるんだよ。

 皆の前では、いい格好の男に見られようと取り繕ってるんだろうなって俺は最近思ってる。


 「きゃあああああああああああああ」

  

 俺たちの後ろから女性の悲鳴が聞こえた。

 ナイフを持った男が通学路を真っ直ぐ走っていた。 

 路上での無差別殺人。

 その言葉が浮かんだ直後、俺たちの方にまで男は迫ってきた。

 俺の体の反応がひとつ遅れる。

 怖くて足が動かなかったんだ。

 すると、俺の前に亮が出て来た。


 「この野郎。何してんだ」


 亮は俺や周りの人たちの為に、相手に立ち向かっていった。

 誰よりも勇気があった。

 でも運動神経のいいはずの亮の動きが悪かった。

 たぶん緊張や不安が、亮の体の動きを鈍らせていたんだ。

 このままだと俺の親友が死ぬ。

 と思った時には俺の体が勝手に動いていた。


 「お! おい。新! 馬鹿野郎」


 親友を横に投げ飛ばして、俺はナイフ男のナイフを受け止めた。

 胸で。


 「ごふっ・・・・んのやろ・・・」

 「てめえ。新に何してんだ。このやろぉおおおおおおお」


 結局、犯人を捕まえたのは亮だった。

 これで無事、事件は解決。

 でも俺の事態は解決されなかった。

 

 「おい。おい。新。死ぬんじゃねえぞ。おい今、救急車が来るからさ」

 「ごふ・・・やべ・・・声が・・・聞きにくい・・わ。亮の声が聞きにくい・・・」

 「おい。お前がいねえと俺、つまんねえじゃんかよ。生きろよ。新」

 「おう・・・そうだな・・・俺もだぜ・・・けど。やべ、俺、死ぬかもしれねえ。さ、最後に聞いてくれ」


 最後の力を振り絞って亮の手を握った。


 「・・・な、なんだよ! 最後だなんて言うなよ。新」

 「俺のエロ本。もらっておいてくれ。隠し場所はわかってるだろ」

 「は?」

 「とりあえず、姉ちゃんとかにバレたくねえ・・・からよ・・・もらっておいてくれや・・じゃあ・・・た・・・の・・・むぜ」

 「おいいいいいいいい。最後のセリフ。それかよ。親友!!!!」


 とまあ、俺の最後のセリフは、バッチリ親友に刺さったっぽい。

 もらっておいてくれ、俺の秘蔵のコレクション。

 めっちゃいいからさ。って知ってるか。一緒に見たんだもんな・・・。


 俺の目には最後、雲一つない青空が広がっていた。

 

 

 ◇


 目が覚めた。

 何故だ・・・。

 胸にナイフがクリティカルヒットしたはずの俺がだ。

 痛みがなく肉体を動かせるのはどうしてだ。

 そんなたくさんの疑問が湧いて来る俺の目の前には黒い世界が広がっていた。

 暗黒にも近い真っ暗な中に、綺麗な輝く点が無数にある。

 これってもしかして・・・・。


 「星・・・か。え。ここ、宇宙なの!?」


 次第にこの暗闇に目が慣れてくる。

 俺がいる場所は・・・・宇宙船の中だった。

 まるでSF映画の中に入ったような空間。

 そこで俺は変な軍服を着て立っていた。

 カッコつけているみたいで、中二病みたいだ。

 部屋の脇にずらりと並ぶモニターの前では、同じような軍服を着ている人が仕事をしている。

 

 「敵機接近。敵機接近。レーダーに反応があります・・・数は三機」


 彼女のモニター上のランプがついた。

 

 「少佐。ご指示を」

 

 誰かが叫ぶ。


 「少佐!」


 モニターの前にいる人たち全員が俺の方を向いた。


 「お。俺?」


 戸惑う俺は自分を指さすと、皆が頷いた。


 「まさか。俺が少佐って・・・どういうこと・・・・」

 「前方。レーダーに三機。少佐どうしますか」

 「………」


 俺は腕組みをして考える。

 少佐って俺の事なの。

 俺って坂巻新だけど、職業なんてない平凡な高校生だけど。

 まあ、皆さんが自信満々に俺の事を少佐だと思ってくれるなら、仕方ない。

 私が少佐です。

 なんて言ってあげたいところだけど、もしここで俺が少佐じゃなかったら恥ずかしいよ。

 いくらみんなが頷いてくれるからってさ。


 「少佐! ご指示をお願いします。何をブツブツ言っておられるのですか」

 「は、はいぃ?」


 後ろから肩に手を置かれたので、俺は振り向く。

 そしたら、目が痛くなって、さらに頭が混乱した。

 目の前に現れた女性がめちゃくちゃ美人の女性だったからだ。

 人生17年。俺の出会った中で一番の人だ。

 クラスにいるマドンナレベルじゃねえ。

 学校一の美女レベルじゃねえ。

 これはテレビのアイドル・・・以上だぞ。

 アイドルとだって比べてはいかん。

 そんくらいの美人だ。

 

 「・・・ええ・・・え・・・なんでしょう」

 「どうされたんですか。まさか、お具合でも悪いのでしょうか・・・・しかし少佐。我々は指示が欲しいです。何かおっしゃってください」

 「あ。やっぱ俺って少佐なんですね」

 「何を言ってるんですか。当り前ですよ。あなたは少佐です。この艦の艦長さんですよ」

 

 艦長・・・・マジで・・・・。 

 何言ってんのこの人。


 「少佐。あと三分で接敵します。戦闘前にビームで撃ち落としますか。先制攻撃をしますか!」

 

 モニターの前にいる女性が焦って俺に向かって叫んできた。


 「ええええっと・・・先制攻撃だって???」


 今がどういう状況かはわからない。

 攻撃してもいい状況かもわからない。

 そして今の俺は何なんでしょうか。

 だから、とりあえず時間が欲しいので。


 「回れ右でお願いします。戻ります」


 どこに?

 自分で言っててなんだが、とにかく回れ右ならば、来た方向の逆であるはずだと思った。


 「了解です。回頭します。180度転進します」

  

 モニター前の女性が言った後。


 「アイアイサー」


 船の舵の様なハンドルを握る女性が返事をした。

 グルグルグルっと右にハンドルを回す。

 その手際は素晴らしいが、しかし、この女性。

 目がガンギマリで怖いのである。

 

 「敵機視認! メインモニターに映します」

 「は?」


 反転する前。

 敵機は正面にいたんじゃないの。

 部屋の上部の大きなモニターに敵影が映った。

 新たに発見した敵機は、なんかめちゃくちゃカッコいい戦闘機のような艦だった。


 「この機体……レーダーに反応がありません。ステルス機です。攻撃を開始します」

 「え? 攻撃!? マジで!? なんで?」


 俺の意見を求めずに、モニターの女性が攻撃指示。

 今乗っている戦闘艦から、白光のビームが二本飛び出た。

 敵の戦闘艦がこちらのビームで大爆発すると、とても綺麗な光をばらまいて宇宙の藻屑となった。  

 

 「少佐! さすがです」

 「へ?」

 「さすがは少佐。ステルス機が後ろにいることを見破っていたから反転したんですね」

 「やはり俺たちの少佐は英雄なんだ。さすが伝説の英雄様だ。俺たちには英雄がついてるんだぞ」 

 「ええ、すごいです。少佐、尊敬します」

 

 っと大絶賛の嵐がモニター前の各地で巻き起こる。

 そして最後に。


 「「「 しょ・う・さ。しょ・う・さ 」」」


 少佐コールが鳴りやまなかった。


 「ちょ・・・ちょ・・ちょっと」


 ちょっとやめて~~~。

 何にもしてないのに、なにこの大絶賛の嵐。

 お願いだからやめてください。

 恥ずかしすぎて、俺。この場にいられません!

 誰かその拍手やめろよ。

 一人が辞めたらみんな辞めるだろ!!! 

 おいいいいいい。

 ああ、どうしよう。

 なんか知らない場所に来て、なんか知らない人たちに褒められてるんですけど・・・。

 つうか。

 これ。

 なに? 転生????

 異世界転生って奴ですか。神様!

 

 ・・・・・・。


 うん。返事がない。神様いないね。ってかさ。

 ちょっと、ファンタジーどっか行ったの?

 普通、異世界転生って言ったら、ファンタジーが定番でしょ。

 ここ、絶対にファンタジーな世界観じゃないよね。

 SFだよね。宇宙だよね。周りの環境、鉄の塊だよ。

 それに軍服着てるから、たぶん戦争してんの?

 攻撃するって言ってるしさ。

 これってハードボイルドじゃね?

 ちょっと、魔法は……スキルは……ハーレムはどこいった?!

 神様。

 転生先をお間違いになられたのではないでしょうか。

 つうかさ。

 俺、神様に会ってねえよ。

 神様どこいんだ。おい。こら!

 なんか説明しろよ。せめて世界観だけでも教えろよ

 おい神! 

 出てこいや~~~~。



 こうして俺の第二の人生は始まったのであった。

 無事に生きていけるように……神に祈る?

 ふざけんな。

 どうして、こんなところにいるのかだけでも教えろや!!!

 とまあ、心の中で文句を言い続けたのだった。







―――あとがき―――


転生の宇宙そらと言います。

題名でルビの振り方が分からなくて、こちらに書いておきました。


とりあえず、この物語は主人公のお気持ち強めの物語です。

基本はハイテンションで進んでいきます。

各陣営、彼の事、世界観など。

それらが徐々にわかり始めてからは怒涛の展開でいきますので、お付き合い頂けると作者冥利に尽きます。

この物語は宇宙版の戦記物です。

色々な陣営の人間が複雑に絡み合って戦います。

ハイテンション主人公と共にそこを楽しんでもらったら嬉しい限りであります。

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